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暴発する中華帝国、なぜ彼らは世界で「強欲化」しているのか?

「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」とは言うまでもなく孫子の兵法の一節ですが、その兵法を用いて「日本は中国とどう対峙すべきか」を分析するのはメルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さん。「習近平になったつもりで中国にとってベストの戦略を考えた上で、それに対して日本はどうするべきか対策を練る」という手法で導かれた答えは説得力が違います。

中国4.0の行方

奥山真司さんが訳されたルトワックの『中国4.0 暴発する中華帝国』を読んで、中国の今後の動きを私が習近平国家主席ならどうするかを考えた。このため、ルトワック氏が推奨する中国の行動とは違うことになる。

中国の行動

日本の戦略を立てるときには、中国のリーダーになったつもりで、中国にとってベストな戦略を考え、その戦略で日本はどのような影響を受けるかを見て、それに対する戦略を作ることが求められている。まず、現在までの中国の行動を見る。

『中国4.0』の内容は、文春新書を読んでもらうとして、中国は2008年までは国際的な規則に従っていたのですが、2009年から、特に習近平が国家主席になった2012年からは、中国の復活を目指して、攻撃的になり国際条約を破り始めた。しかし、2015年から、周辺諸国からの反発が強くなり、選択的に少し攻撃的な外交を控えている。

今後の中国の行動がどうなるか。もし、私が現時点で習近平になったら、中国の復活を述べて攻撃的な外交をした事実があり、それにより中国国民は愛国心を燃やしたので、その攻撃的な外交を突然止めることはできない

このため、中国は「一帯一路」という軍事的な面より経済的な側面を強調した外交にシフトした。このソフトな進出に対して、欧州が乗ってきた。しかし、軍事的な側面を出さないと、今後は国民が納得しない。

私なら、中国の経済援助+軍事基地借用で、まず世界的な海軍ネットワークを作る。現時点でパキスタン、スリランカ、ジプチなどに海軍軍事基地を作れる状態であり、この拠点を増やすことである。

中国の海軍の問題は、寄港できる友好国の港が少なく、中国人労働者や中国企業を守れていない。常時、進出国の周辺で企業や労働者を守るという名目で、海軍基地を作り、そこに常備兵を多数置いておくことが必要である。中国拡大戦略である。

テリトリーの確保

中国はGDPが大きくなり、自国資源だけでは産業が回らないし、まだ付加価値産業での雇用は少なく、まだ重化学工業を維持することが必要である。このためには、その売り先確保と資源確保の両面で、中国の拡大は避けて通れない。

しかし、拡大するにしても日米欧との摩擦を起こすと経済制裁などになるので、この諸国とは摩擦を起こさない地域へ進出することになる。そうすると、中東アフリカであり、資源も豊富であり、中国の経済的な需要とマッチしている。今までは、企業や労働者だけで行動していたが、保護の名目で軍も一緒に付けて行く。

そして、徐々に米国の領域と中国の領域を分けていく。太平洋での行動は、日米との摩擦を生むので避けてインド洋を中心に行動する。そして、先に中東とアフリカを押さえる。また、鉄道網の整備で中央アジアも押さえる。ロシアとの摩擦は考慮しない。ロシアへの経済援助等で黙らせる

そして、東南アジアのタイ、カンボジア、シンガポール、マレーシアなどを味方にする。インド洋に出る航路を確保することである。

基軸通貨を人民元に

その地域を人民元を基軸にする地域にして、徐々にドル通貨基軸体制を崩壊させる。特に石油資源国の人民元化を進める。とすると、サウジアラビアを中国人民元圏に取り込むことが重要である。

サウジは、今米国のドルと自国通貨をリンクしているが、人民元にして、石油主要国のリンクをドルから人民元にすることで、ドル基軸通貨制度は世界的に崩壊することになる。

このためには、サウジの安全保障を中国が担保することで、サウジはイランに対して優位な位置になる。米国は中立を維持するので、サウジの安全保障上では、頼りにならない。

また、パキスタンと中国は現時点でも最重要な同盟国であり、同じスンニ派国であるパキスタンとサウジも重要な同盟国であり、核兵器を必要な時にはパキスタンはサウジに提供することになっている。このため、中国がサウジと同盟国化するのは、見た目より簡単である。

中国はスンニ派諸国の守り神になる。対して、シーア派の守り神はロシアとなる。ロシアの南下政策と中国の一帯一路がぶつかる事になる。ここでもロシアに経済援助をして、ロシアを黙らせることである。中東では欧米諸国は中立を守り、イラク戦争からの一連の失敗で出てこない。この地域はロシアと中国が仕切るしかない。ロシアがシーア派につき、中国がスンニ派について、利害調整をすることである。

世界覇権の確保

中国人民元が世界的な基軸通貨になると、欧州などは中国との同盟関係を望み、中国の独裁体制をあまり問題視しない可能性がある。中国の独裁体制を問題視するのは、日米とフィリピン、ベトナム、インド、オーストラリアなど紛争を抱えた国だけになる。それ以外の国は中国になびく事になる。

このように民主化を問題にする国が世界的にも少数になったら、その時点から世界制覇が始まる。国際的な機関のトップの多くを中国が占めて、中国の欲しい条約を作ることである。これで世界の中心になることができたことになる。

米国はどうなるのか?

米国の引きこもりは始まる可能性が高い。クリントンが大統領になっても、米国の保護主義は強まる。米国の安全保障に関わる太平洋や大西洋に中国が出てくると警戒するが、インド洋では、米国の安全保障には、あまり影響がない。中東の石油確保にも興味がないので、中国の行動を規制しようとはしないはず。

ということで、中東やアフリカで中国が行動しても、米国は無関心な状態が続くことになる。

日本はどうするのか?

中国の国力は、米国の半分、将来的には同等になる可能性が有り、日本だけでは対抗できない。日本はロシアを含めて中国封じ込めをしないと無理である。

米国も中国が太平洋に出てくると、それは安全保障上問題であり、日米同盟は機能することになる。中国拡大戦略は止めることはできないが、中国が進出する国に対しては、中国の独善的な行動を忠告はできる。

しかし、中国進出国のインフラは整備されるので、日本企業も行動しやすくなるので、平和的な進出をすることである。

日本は、中国が太平洋に出てこないなら、中国との互恵関係は続けていくことであるが、尖閣諸島への攻撃には反撃しないといけないので、中国が、そのような行動をとらないように日本自体の防衛能力を上げておくことが必要である。

さあ、どうなりますか?

image by: Wikimedia Commons

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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