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北海道新幹線の並行在来線

開業目前となった北海道新幹線。その陰で消える夜行列車については以前の連載記事で記しました。無料メルマガ「客車隊報」の発行者であり、「海峡同盟」で代表を務める中尾一樹さんは「並行在来線」について詳しく説明しています。

並行在来線についてのディープなお話

そもそも「並行在来線」という言葉をご存じない方のほうが多いと思われますが、1997年の北陸新幹線(当時は長野新幹線と呼ばれてました)開業以降に出来た新幹線は、その路線と並行して走る在来線を(JRとしては)廃止することを条件に建設が進められました。

これは特急列車の収入で維持していた在来線を、新幹線開業後はローカル輸送だけで維持せねばならなくなるため、トータルでは赤字となることを恐れた当時のJR各社が新幹線の建設に同意しなかったという経緯があり、その「同意」を取り付けるための手段として当時の与党(自民党)合意で決められたもので、在来線を廃止または地元の第三セクター鉄道会社に譲渡し、JRは新幹線だけを経営するというものです。

この結果、多くの在来線、それもローカル線ではなく幹線が廃止や転換されるという事態が発生

現在では下記の路線がJRから分離されており、これらの路線では原則として「青春18きっぷ」も使えなくなっています。

・江差線:五稜郭~木古内間 → 道南いさりび鉄道に転換予定


・東北本線:目時~青森間 → 青い森鉄道に転換


・東北本線:盛岡~目時間 → IGRいわて銀河鉄道に転換


・信越本線:横川~軽井沢間 → 廃止(バス転換)


・信越本線:軽井沢~篠ノ井間 → しなの鉄道に転換


・信越本線:長野~妙高高原間 → しなの鉄道に転換


・信越本線:妙高高原~直江津間 → えちごトキめき鉄道に転換


・北陸本線:市振~直江津間 → えちごトキめき鉄道に転換


・北陸本線:倶利伽羅~市振間 → あいの風とやま鉄道に転換


・北陸本線:金沢~倶利伽羅間 → IRいしかわ鉄道に転換


・鹿児島本線:八代~出水間 → 肥薩おれんじ鉄道に転換

木古内にて撮影。道南いさりび鉄道になる予定の「キハ40型」(奥)と、新幹線と引き換えになくなる白鳥号(手前)。撮影:中尾一樹

それは青函トンネルでは貨物列車と線路を共有するため、共有区間(新中小国信号場~木古内間)については並行在来線として分離されず、JR北海道がそのまま保有しています。

一方で完全に別の線路となる本州側の青森~新中小国信号場間と、北海道内の木古内~五稜郭間では対応が異なります。

北海道側は従来と同様に分離されて第三セクター鉄道に転換されますが、本州側はなんとJR東日本がそのまま経営します…。

JR東日本??

北海道新幹線ってJR北海道じゃなかったっけ

そう思ったアナタ、実に鋭いです。

今回の北海道新幹線では並行在来線と新幹線の経営主体が異なる区間があるため、本州側の津軽線は並行在来線ではないという解釈がなされ、引き続きJR東日本が経営することになりました

これにより津軽線(青森~三厩間)は青春18きっぷで乗車することが可能となり、前回記事のような楽しみ方(竜飛岬へ行くなど)が可能です。

明暗をわけたのは北海道側で、木古内~五稜郭間は第三セクターの道南いさりび鉄道に転換されてしまいます。

当然ながら青春18きっぷでは乗れませんが、連載初回の記事にも書いたように「オプション券」を購入すれば「通過」することは可能です。

「通過」とはたとえば北海道新幹線を降りて木古内から道南いさりび鉄道に乗る場合、そのまま五稜郭まで乗り通すことを通過」といいます。

もし途中の上磯とかで列車を降りてしまった場合は「通過」とはならず、木古内~上磯までの運賃が別に必要となりますからご注意下さい。

またこれが可能なのは「青春18きっぷ」と「オプション券の両方を持っている場合だけで、それ以外(青春18きっぷ「だけ」持っている、北海道東日本パスを持っているなど)の場合は道南いさりび鉄道の運賃(=きっぷ)が別に必要となります。

このように大変ややこしい事態となってしまった北海道新幹線開業ですが、果たして今後どうなってしまうのか…。

筆者のみならず、この記事を読んて頂いた「みんなで」注視して行きましょう。

Image by: 中尾一樹

Source by: 客車隊報

 

客車隊報

著者/中尾一樹(海峡同盟 代表)
青春18きっぷやクルーズ列車等の情報を中心としたメルマガを配信中。旅行サークル「海峡同盟」では青春18きっぷで北海道に行けなくなる可能性が発生したことをきっかけに2001年に結成。最近は海峡特例を守ることを目的として、国土交通省・運輸審議会が主催する公聴会に参加し公述人として意見するなど活動を行っている。

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