街角でよく見かける路上駐輪のバイク。「邪魔だなぁ、さっさと駐禁しろよ…」なんて思った経験は誰しもあると思います。しかし、そんなバイクが駐禁を切られないのは、どうやら道路交通法上の意外な理由があるようで… 。交通ジャーナリストの「ジャンクハンター吉田」こと吉田武さんは、メルマガ『疑問だらけの道路交通法』で、その驚きの理由を説明しています。
路側帯内駐車駐輪可能の謎を追え
創刊第1号というプレッシャーからか、何を一発目のネタで展開しようか日中、公園へ出向いてぼんやり考えていたところ、駐車監視員の方が2人で駐輪中のバイクをチェックし始めていたので、吉田的にターゲットとなるネタを発見!
で、公園のベンチに座ってユニット(駐車監視員は2人ペアで稼働しているのでそう呼ばれている)がどのような行動を取るかしばらく眺めることに。
バイクは3台駐輪されている。そのうち2台は公園の柵側へ沿って通行人の邪魔にならないよう、極めて内側ギリギリへ駐輪していた。もう1台は柵側へ駐輪せず、公園を囲む路側帯の白線左内側へ駐輪しているではないですか。路側帯に沿って駐輪しているこの
バイクは5分ほど眺めていた感じではあきらかにとても邪魔な様相で、歩行者の通行を妨げていたのも事実。
「3台駐輪されているバイクがあるのならば優先して駐車違反扱いで駐禁ステッカーを貼られるのは通行人の邪魔になっている250ccのバイクに違いない」
そう思いながら暫くユニットウォッチングを続ける。
あれあれあれれ? 公園の柵側へ止めている2台の原付バイクに駐禁ステッカーを貼り始めているではないですか! やはり原付バイクのような弱者から率先して駐禁ステッカー貼られるのは本当に気の毒だなぁって思っていた矢先、ユニット2人は250ccのバイクをノーチェックで素通りしている!
一体どういうこと!? 駐輪している250ccのバイクを無視して自転車へ乗り、別の場所へ移動しようとしているユニット2人を直撃してみた。
吉田「すいませーーん! ユニットのお2人さん!お話を聞きたいんですけどー!」
ユニットA「どのようなご用件でしょうか?」
吉田「僕はそこのベンチで駐禁ステッカー貼る様子を一部始終眺めていたんですけども、どうして250ccのバイクは無視しているんですか? 原付バイク2台を駐車違反にしてあまりにも不公平、というか弱者イジメだと思ったんですよ」
ユニットB「私が説明いたしますね(ユニットAは端末操作にも時間かかっていたので恐らく新人なんだろう)」
吉田「原付バイク2台は通行人の邪魔にならないよう公園の柵側へ隙間なく駐輪しているのに、250ccのバイクは路側帯側へ堂々と駐輪してとても邪魔じゃないですか? それなのに駐禁ステッカーも貼らずに素通りなんて姿を見てしまったら、あなたたちの職務怠慢に感じたんですよ」
ユニット2人は平日昼間から公園でぼんやりしている吉田を無職ニートに感じていたと思う。面倒臭そうな奴に絡まれちゃったなぁって間違いなく抱いていたはず。
ユニットB「細かくご説明しますと話が大変長くなってしまうのですが、簡単にご説明いたしますと250ccのバイクの駐輪は駐車違反に該当しないんです。路側帯内駐車駐輪というのは中々ご説明難しいのですが、少々特殊な道路交通法になってまして、私たち駐車監視員でも困惑して間違えることもあったりします。
路側帯もいくつか種類がありまして、こちらのように白線が続いている路側帯が最も普及されているんですが、路側帯の内側へ
止める時は壁やそこの柵のような場所左側を0.75メートルスペース空けていただければ駐車違反にならないのです」
吉田「えーーーー!?!?!?! 意味がわからないですよ。だって、バイクを止めて75cm左側を空ける必然性が全く理解できません。左端へピッタリ止めるほうが通行人の邪魔にならないはずですよ。75cmのスペース空けて駐輪したら路側帯のセンターにバイクを止めることになるじゃないですか。バカバカしい道路交通法ですってば!」
ユニットB「0.75メートル(75cm)左側を空けるのは道路交通法で定められていますので仕方がないのです。路側帯を用いての駐車というのは変則的でして、私たち駐車監視員たちの間でも正直釈然としないまま駐車違反扱いするしかないのです」
このユニットBさんはもしかしたら本音で話してくれるかもしれないと察したのでグイグイと疑問点を攻める。
吉田「じゃあ、ここの公園脇の路側帯内でバイクが30台ほど仮に75cm左側を空けて駐輪するとします。すると通行人たちは路側帯内を歩くのに路側帯の真ん中にバイクが30台もずらっと駐輪されているので通行を妨げていると警察へ通報するとします。それでもこれらのバイクは駐車違反として取り締まりはできないという判断でいいんですねよ?」
ユニットB「厳密には道路交通法で定められていますから0.75メートル以上左側が空いていましたら大丈夫です。正直おかしな話ですけどね。でもそれが現行の道路交通法なんです……」
吉田「その75cm左側空けるっていう数字は何で75cmとして定められているんですか?」
ユニットB「0.75メートルというのは成人男性の肩幅の長さを平均して定めたそうですよ。結局のところ、駐車している右側を歩かせるのは危険だからという発想らしいですが……幅の狭い路側帯だと真ん中にバイクを止める形になりますから確かにおかしい道交法だと私も思います」
吉田「つまり、250ccのバイクは路側帯内に駐輪して75cm以上左側にスペースを作れば駐車違反にならないっていう道路交通法を知った状態で駐輪しているわけですね」
ユニットB「そうですね。こちらのバイクの運転手さんは毎日ここへ駐輪されていますので、恐らく会社が近くに
あって、通勤でバイクを使い、こちらの公園脇の路側帯内へ道路交通法を守って駐輪していることになります。18時過ぎるとこちらのバイクは置かれてませんので、恐らく就業時間も終わり自宅へ帰っているのでしょうね(笑)」
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