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悪魔の見えざる手。アベノミクスに残された最良の「悪い選択」

政権が様々な手を打つも、日経平均株価は上がらずなかなか明るい兆しが見えない日本経済。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんによれば、匿名ブログ「保育園落ちた、日本死ね!」で明らかになった女性が活躍できない国内保育事情や、自民党の「言論の自由の制限」に失望した外国人投資家らが日本市場から退いていることも1つの原因だとの持論を展開。この現状を打破するには? メルマガでは、津田さんの大胆な景気対策を提案しています。

アベノミクスの終焉から次に

日経平均が上がらない。NYSEでは過去最高額になろうとしているのに、日本は全然上がらないし、金融政策に寄りすぎたアベノミクス失敗論も出ている。今後の経済運営を含めて、検討したい。

状況として

3月26日日経新聞によると、外国人の株売り越し額が6月以降8兆円にもなり、7年ぶりのマイナスで、この原因はアベノミクスへの失望感とのことである。このため、日経平均は上がらない。買っているのは日銀とGPIFぐらいであり、今後の日本経済に内外で悲観論も多く出ている。

そして、消費税増税延期や中止という議論も出ているし、財政出動を行うべきという議論もある。しかし、国債は1,000兆円にもなり金利上昇したら、予算に占める利払い費が大変なことになる。その時、慌てて増税や歳出削減を行うことになり、財政出動+消費税増税中止は、持続可能ではない。

これを防止するためには、日銀が国債を買い続けることであるが、日銀券を大量に出し続けることになり、資産バブルを煽り、バブル崩壊して、金融機関の破綻になる可能性がある。それを助長するマイナス金利まで日銀は導入している。このような金融政策は持続可能ではない。

日本の経済不振は、人口減少問題とAV産業などの敗北の2つがあり、この2つの問題を日本の政治が乗り越えていないことで、長期的に日本が衰退するという議論が起こっている。

アベノミクスでは女性の活躍を中心に対策を打つはずが、「保育園落ちた、日本死ね」で保育事情が明らかになり、安倍首相も自民党も保育は家庭でするものという概念を、保育は社会がするものであり、社会的な義務と捉えていないことが、分かってしまった。要するに、安倍首相など自民党は、保育の概念を変えていないことが明確化して、外人投資家は失望したのである。アダム・ボーゼン氏の講演でも、ウーマノミクスを期待したと言っている。

もう1つが、自民党は言論の自由を制限し始めたと見られている。社会安定性を確保する批判勢力の削減を目指していると見られて、米国の知識人からは、ウルトラライトの安倍首相に疑問符が付いている。

20年以上の財政出動

今度の伊勢志摩サミットで、追加の財政出動を行い、世界に財政出動を訴えるというが、日本は20年以上も財政出動をしている。税収の総額より20兆円から50兆円もの財政出動をして、GDPを500兆円程度に維持してきたが、これは財政出動をしてきたからできたのである。

そろそろ、その財政出動を止めないと、国家予算の突然の破綻を心配になり、増税か支出の削減をすることになったはずである。自民党政権は、それを忘れたのであろうか? プライマリー・バランスは、どうするのであろうか?

3流評論家や政治家の多くも消費税増税延期や中止、または減税というが、それでは、税収と支出の差をどうするのかという議論が必要である。

ここで考えて欲しい。今後の日本は高齢化がますます進み、少子高齢化社会になる。この時期に社会保障費を削減することは難しいし、伸びを抑えて社会保障レベルの低下を国民に我慢してもらう必要があるくらいだ。

このままであると、労働人口も減り、納税者数がどんどん減っていくことになる。税収は大きく落ち込むことが確実である。海外の有能な人を呼び込む施策を打ったが、外国人知識階級の世界的な競争が起きて、日本定住も進んでいない。このままでは、日本は税収も落ちてくることになる。その上に、法人税の税率を低くするというが、それでは、どう税収を確保していくのであろうか?

労働者人口の増加か、税目の一部または全部の増税しかない。今までは、消費税増税で広く国民から集めるとしたが、消費税増税を中止または減税というなら、その対案は、違う税目の増税しかない。

昭和60年以前、小泉内閣以前は、累進課税制度で金持ちから税金を集めていた。これを最大50%にして、消費税を取る方向にしたのである。これを元に戻すことも視野に入れる必要がある。

アダム・ポーゼン氏の見解

「2016年世界経済の今後を読み解く」という題で講演会があった。その中で世界経済は過度な悲観論が横行している。中国の経済減速では債務が積み上がっているが、国内貯蓄があるので、金融危機にはならない。サービス産業が7%程度成長していて、製造業の縮小をカバーしている。中国経済は思っている以上にしっかりしている

米国経済は、債務が積み上がっていないので、少しずつ成長していく。現時点での巡航速度として最適である。

日銀は、マイナス金利ではなく、量的緩和を行うべきある。国際化されていない貯蓄の多い投資の少ない国では、マイナス金利は国民に不安感を与えるので良くない。消費税増税は行うべきであるが、やり方として、毎年0.5%刻みでおこなうのが良い。または名目賃金を上げて、悪いインフレを起こすしかない

日本の状態は悪いので、悪い選択を選ぶ必要があり、より悪くない方を選ぶべきなのである。選択肢を選んでも、良くなるわけではなく、悪くならないか悪さが少ないかである。それほど、日本は悪いということである。

日銀は、国債を買って長期金利を上げないで、インフレを起こして金融抑圧を行いたいのである。円の価値を下げないと、国債の償還ができないレベルであり、正常なことである。

人口減少には、2つしかない。女性に働いてもらうか移民を認めるかである。

ということであり、日本をより悪くしない方法をどうするかを考えることであるというのが、アダム・ポーゼン氏の意見であるが、その感覚は、私も同じである。

もう1つ、私は、イノベーションを起こして、日本が復活することも考えるべきであると思うが、数年前、その意見にはポーゼン氏は反対したので、それが今回は言わなかった。

経済評論家たちの主張

経済評論家は、日本の現時点をより良くしようとしているので、短期視点でしか、モノを考えていない。このため、イエイエドンドンという意見になり、増税は止めて財政出動を10兆円などと威勢の良いことを言っている。

しかし、その積み重ねが日本をより困難な経済状態にしてきたように思う。税収より大きな財政出動を20年以上も続けてきたが、日本が良くなったような気がしないし、短期的な視点でしか見ていない。

自民党の政治家も同様であり、日本の百年の大計を組み立てていないで、短期な視点しかないように思う。長期視野を持った政治家はいないのであろうか?

ボーゼン氏が言うように、現時点は悪い選択しかなく、それを選ぶしかないということを国民に説得することが必要であると思う。野田前首相の消費税増税で、選挙を行う選択は非常に良いことであったし、個人や党の利益より国の利益を見て、選択する感覚を必要なのであろう。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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