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なぜ、いま? 米国がFIFA汚職の摘発に踏み切った思惑

再選されたばかりのブラッター会長が突然辞任するなど、世界を揺るがせているといっても過言ではないFIFAの汚職問題。以前から「カネ」に関する黒い噂は耐えませんでしたが、なぜこの時期、しかもFBIが動いたのでしょう。そこには米国の思惑が深く関与していると高城剛さんは分析します。

FIFA汚職問題にみる米国の「なんらかの思惑」

今週は、全世界を震撼させていますFIFAの汚職問題につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

長年「贈収賄疑惑」がささやかれ続けてきたFIFA(国際サッカー連盟)に、ついにアメリカとスイスの司法当局による捜査のメスが入りました。これまで行われてきた組織的な違法行為や贈収賄の数々が明らかになり、FIFAの現副会長を含む関係者7人が逮捕される事態にまで発展しました。

まず逮捕されたのは、FIFAのエウヘニオ・フィゲレド副会長とジェフリー・ウェブ副会長、その他の関係者5名の合計7名です。

なかでもジェフリー・ウェブ副会長は以前から「FIFA汚職のマネージメント担当」とささやかれ、それもそのはず、前職は金融オフショアで有名なカリブ海にあるケイマン諸島出身の元銀行マンで、マネーロンダリングを業務としていました。

まず、FIFAのビジネスモデルは、ワールドカップなど連盟主催の大会のスポンサーを募り、放送権を販売することで主な活動資金を得ています。

今回起訴された9名は、特定の企業から賄賂を受け取ることで、不正に大会のスポンサー権や放送権を斡旋してきたとみられています。

なかには、1割のキックバックを露骨に要求する「ミスター10%」と業界内で呼ばれる人物もいました。

現在、起訴されているFIFA9人(逮捕者7名含む)の汚職総額は、わかっているだけでも200億円を超えています。

今回、事態が表面化したのは、米国FBIの捜査によるものです。FBIは米国の州を超えた犯罪を調査する機関ですが、このFIFAをめぐる汚職の相当が、米国内(ウォール街)に本店がある金融機関を通じたものであるからFBIの捜査が及んだとされていますが、一般的な常識では(業界的な常識では)、この手の資金を足がつきやすい米国の金融機関を通すことは極めて稀です。

すなわち、現在「わかっているだけでも200億円」は、米国の金融機関を通じてしまったために発覚した金額だけであり、おそらくその数十倍ものアンダーグランドマネーがFIFAの上級役員の間を飛び交っていた、と見て間違いありません。

また、長年公然と汚職が行われてきたのに、「なぜこの時期に?」と思われる要因が、いくつかあります。

>>次ページ アメリカが突如動いた4つの要因とは?

1つめは、FIFAからイスラエルを追い出そうとしたことにあり(先月もこの件でスイス国内でデモが起きています)、しかし今回の主要幹部逮捕後、この決議案そのものが退けられることになりました。ちなみに今回の幹部逮捕は、その議決日の2日前でした。

2つめは、2018年のワールドカップ開催地であるロシア大会を米国が阻止(邪魔)するためであり、よって今回の汚職が表面化した直後にロシアのプーチン大統領が「これは米国の内政干渉だ」と公然と批判するに至りました。

海外報道では、米国のジョン・マケイン議員とロバート・メンデス議員が、ロシアのワールドカップ開催に異を唱えている、と名指しで報道しています。

3つめは、米国内の人種構成がラテン系とアジア系が急増していることから、米国的スポーツ=アメリカンフットボールとベースボールの人気に影が見えはじめ、米国で人気が出てきたサッカー業界に米国の影響力を強める工作活動の一環である、という観点です。

そして最後は、先月スイスとEUは租税情報の自動交換案に調印しました。これにより、ブラックボックスだったスイスの金融機関情報は、(米国にとって)風通しが良くなると言われています。

スイスの持つ「秘匿性」を、米国が圧力で取り払ったことから、スイスに本部を持つ国際団体のクリーニングがはじまったとの見方もあります。

これらの複合的な理由から、欧州システムに君臨するFIFAを米国利権にしようと考えている可能性が高くあると僕は見ています。

そうすれば(サッカー利権を手中に収めることができれば)、世界的な放送利権や広告利権を米国が手にできるほか、米国民に「人気のスポーツ」を与え、あらゆる形でコントロールすることも可能だからです。

実は、今回FBIと今回合同捜査にあたったIRS(米国国税庁)は、1991年からFIFAの汚職を知っていたことが明らかになっています。

少なくとも2年前には、本件の多くを掴んでいました。このタイミングに米国の「なんらかの思惑」があるのは確かだと見て間違いありません。

余波はもう少し広がるでしょう。

image by: FIFA

『高城未来研究所「Future Report」』第207号より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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