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社員の同業他社への転職を、企業が阻止することなどできるのか?

春は出会いと別れの季節、皆さんがお勤めの会社でも退職された方がいたのではないでしょうか。この退職時によくあるのが、同業他社への転職を防ぐために課される「競業避止義務」。企業にとって守りたい機密情報や、人材を守るためにも必要な処置ですが、どうやらこれを無条件に課すことはできないようです。現役社労士が配信する無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、競業避止義務を課すための条件を紹介しています。あなたの会社は大丈夫ですか?

注意! 競業避止義務を課すには条件があります

競業避止義務という言葉をご存知ですか? 御社で働く従業員が、御社と同業の他の会社へ転職したり、兼業したり、自ら会社を起こしたりすることを禁止するものです。あるいは、同業他社のために、御社の従業員を引き抜き、顧客を紹介し、御社の企業秘密を漏らすようなことも競業行為となり、これを禁止するものです。

そりゃぁ、御社に在職中は、同業他社のために働くことを禁止するのは当然です。在職中の従業員に対して、競業避止義務を課すのは、問題ありません。就業規則等に、そのような定めがあれば勿論、たとえ定めがなくても、信義則上の義務として、競業避止義務が認められます。

ただし、「退職後については、原則として、競業避止義務を課すことはできません。なぜなら、憲法で職業選択の自由が保証されていますし、退職した従業員の生計の途を奪い、生存すら脅かす可能性がある行為だからです。

ただ、御社にも、同業他社に絶対に知られたくない営業秘密や技術的秘密があるでしょう。あるいは、従業員の大量引き抜きをされたら、御社の経営は立ち行かなくなってしまうでしょう。

ですから、一定の要件を満たした場合には、「退職後の従業員にも競業避止義務を課すことができます。

・条件1:就業規則に、競業避止義務が明確に定められていること。
・条件2:守るべき企業の利益や秘密があること。

さらに、(条件3)~(条件6)を総合的に評価して判断します。

・条件3)制限期間
競業行為の禁止期間が短期6ヶ月程度)であれば問題ありません。ただし、1年や2年の禁止期間では、他の条件をクリアしているかによって、有効だったり無効だったりします。それ以上長期の禁止期間を設けても、無効となる可能性が大きい。

・条件4:秘密性の程度・禁止対象者の範囲
全従業員を対象にした競業避止義務は無効となります。「機密性の高い情報に係わるもの」と「役員だけを対象としなくてはなりません。一般従業員に対して競業避止義務を課すのは、ちょっと無理があるかな…。

・条件5:代償措置の有無
当然、代償措置があったほうが有効とされやすいし、従業員の納得も得やすいでしょう。代償措置としては、退職金の上乗せや在職中に高給で優遇することなどが考えられます。

・条件6:職種・地域限定の有無
地域の限定を行うべきです。御社の営業範囲と同程度の範囲に地域限定して、就業制限を行うべきです。裁判では、「地域限定なし・職種限定なしの競業避止義務が無効とされています。

以上、(条件3)~(条件6)を総合的に評価して判断します。もし、競業避止義務に関する誓約書にサインをしていても上記要件を満たさなければその誓約書自体が無効となります。

また、顧客を奪う行為、従業員の大量引き抜き行為、秘密情報の盗用行為等を行った従業員に対して、会社は損害賠償請求することができます。これらの行為は、たとえ就業規則に定めがなくても、「社会的相当性の著しい逸脱として不法行為となります。

以上を踏まえて、あらためて忠告します。

「注意! 競業避止義務を課すには条件があります。」

image by: Shutterstock

 

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