数年前までは「ゆるキャラ」か「B級グルメ」があれば他に何もなくても観光客がそれ目当てに押し掛けるという状態でしたが、最近は状況が変わってきているようです。無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、「どこの地域もそれらに頼りきりだが、実はもっと他に求められているものがある」と断言しています。
低級を標榜しない
もし私が地域観光のプロジェクトを任されたら、まず、必ずこの2つを考えます。
「ゆるキャラ」
「B級グルメ」
です。この2つを「使わない」ことを考えるのです。ゆるキャラを使う、B級グルメを盛り上げる、のではなくて、ゆるキャラは使わない、B級グルメは注目しない、ということです。
「ブームには乗らないということですか」と思うかもしれませんが、ブームはあまり関係がありません。なぜそこに注力しないのかというと、自分で「ゆるい」「B級」と言っているからです。
ゆるキャラブーム、B級グルメブームは、本来何が良かったのかというと、
「お堅い役所が、ゆるいキャラを認めた」
「有名な名物の裏に、隠れた庶民的な料理がある」
ということでした。その意外性が功を奏して、注目されたわけです。意外性を作るというのは非常に難しいことで、それを切り開いた人はすごい、ということですね。
しかし、ゆるキャラブーム、B級グルメブームが来て、どうなったのかというと、その路線ありきで物を創るようになりました。意外性を作るのではなくて、意外性がなくなった路線に物を乗せているのです。だからどうなるのかというと、「ただゆるい」「ただ低級」になるわけです。そして、無理やりそういうものを作るので、自分から粗悪品を作るようなものです。
これは、例えば「訳あり商品」のようなものです。高級なカニだけれども足が1本折れただけだから、「訳あり商品」として安くで売り出すことで、「あのカニが安くで買えるなんて!」と人気が集まります。最初はいいんですが、その流れに乗っかって、「訳あり商品専門店」を作って、「訳あり商品」を揃えるために、自分で足をポキポキ折ったり傷つけたりしていく。それと同じことです。
今時「ゆるいのを作ろう」「B級なものを作ろう」というのは、そのように自ら粗悪品を作りましたよと標榜するようなものです。だから、何の愛着もないゆるキャラや、地元に全く関係のない無理矢理なB級グルメは、ただただ粗悪品を発表しているだけに過ぎないのです。
そして、これは賛否両論あるかと思いますが、「観光ボランティア」も、私は安易に生み出す必要はないと思います。というのも、私はこれまでいろんな地域に行って、観光ボランティアがありがたかったことがたったの1度もありません。
なぜなら、ボランティアはあくまでボランティアで、地元の人が好き勝手に長々としゃべって、全くプロ意識のない人を相手に時間を食われ、嫌な思いしかしたことがないのです。しかも、そういうのは暇なおじいちゃんばっかりで、目立つように蛍光色のジャンバーなんか来て、そういう人が史跡の前に立っていたりするので、雰囲気がめちゃくちゃ台無しだったりします。自分たちの地域を本気で売り出したいなら、「ボランティア」じゃダメなんじゃないの、と私はものすごく思うわけです。そういうスタッフを用意するならば、私だったら、ばりばりのバトラーやコンシェルジュをめちゃくちゃ金をかけて作ります。
要するに、ゆるキャラやB級グルメ、観光ボランティアのような、自分たちから低級を標榜する地域が多いのですから、これからは高級、一級を目指す方がよっぽど意外性が作れます。
全然ゆるくなくてめちゃくちゃデザイン料をかけたがっちがちのお堅いキャラクター、全然手軽ではなくて思いっきりハードルの高いがっちがちの高級グルメなんかのほうが、今は大きく注目をされる時代です。そして、それは単なる意外性だけではなく、本当に高級なもの、本当に一級品であるものは、品質が本物だからずっと残っていきます。
自分の地域を売り出したい、もっと高めたい、という人たちが、どうしてそういう発想にならないのか、本当に不思議でなりません。
「低級を標榜しない」
というのは、これからの時代を生き抜く、ものすごく大切なキーワードになると思います。
【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)
- 自社の商品を紹介する情報発信物(ウェブサイト、チラシ、カタログなど)から、一流層の人物だったらあまり使いそうにない言葉を抜き出してみる(「お手軽」「安い」など)。
『ビジネス発想源』(無料メルマガ)
<まぐまぐ大賞2015・総合大賞受賞> 連載3,000回を突破した、次世代を切り拓くビジネスパーソン向けの情報メディア。
<<登録はこちら>>