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【熊本地震】割れたマンションの“壊れて問題ない説”に専門家が反論

絶え間なく報じられる熊本地震に関するニュース。倒壊した建物の映像が、その被害の甚大さを物語っています。中でも特に注目されたのがTwitterに住人が投稿した「割れたマンション」の画像。専門家は問題ないと言いますが、実際のところはどうなのでしょうか。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者で、マンション管理士と一級建築士の資格を持つ廣田信子さんにお聞きしました。

エキスパンションの破損は被害とは言えない?

こんにちは! 廣田信子です。

熊本地震から1週間が経過しました。その後に発生した地震が実は本震だったということで、被害が拡大し、胸が痛みます。被災者の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。寄付ぐらいしかできない私ですが…。

実は、今週、のんきに地震以外のことを書いている場合? と思いつつ、いざとなると、何も言葉が出ませんでした。テレビをつけると流れている被害の状況に、何とも言えない気持ちになり、東日本大震災直後の感覚が蘇りました。

戸建住宅が無残につぶれている映像からは、直下地震の怖さをまざまざと見せつけられました。古い耐震性のない家で暮らす高齢の方が犠牲になっています。介護が必要な家族を抱え、避難所に行けなかった人もいます。

マンションでも、1階ピロティの駐車場がぐちゃっとつぶれている映像はショックで、阪神淡路大震災を思い出させられました。座屈した柱をみると、本当に華奢で、帯筋も少なく、真っ先に耐震改修が必要な構造のマンションだったように思います。

通路のエキスパンションがすべて破断しているマンションも見た目のインパクトが大きいので、いろいろなメディアで取り上てられていました。この建物と建物のつなぎ目は、力がぶつかりやすく、大きく破断しますが、そこで力を吸収するようにできているので、ある程度は仕方がないことなんですが…。

この壊れ方は、ちょっとその域を超えていて、住民はさぞ、恐い思いをしたことでしょう。主要構造部の損傷ではないから大丈夫といって、余震が続く中、このマンションの住民の方々は、自宅に留まっていられるでしょうか。

これに対して、一部の専門家が、「エキスパンションは壊れて当然で、設計通り壊れただけ。マスコミはわかっていない」というコメントをしています。こういう専門家の、壊れても当然発言は、マンション住民にかなりショックを与えるもので東日本大震災のときもありました。

これに対して、仙台のマンション管理士さんが、きちんと発言されています。

エキスパンションの損壊は、本来その可動域で揺れを吸収するもので、渡り廊下や接合部もろとも壊れて、エキスパンシヨン金属、接合部のコンクリート塊、渡り廊下のコンクリート塊がもろともに落下して当然というものではないだろう。

 

東日本大震災でもエキスパンションがかなり損壊したが、そのときエキスパンションと大量のコンクリート塊が落下し、極めて危険だった。

 

また、補修費用もそれなりにかかるし、複数棟のうちの1棟にしかエレベーターがない場合には、暮らしにも支障がある。

その通りです。エキスパンションにつながる躯体や非耐力壁の大きな破損に対して住民は、かなりショックと恐怖を覚えます。そういう状態で、余震が来るたび、ボロボロとコンクリートがこぼれ落ちるのですから。

危険度判定に来た専門家は、「これは壊れても大丈夫」と言うのですが、そう言われても、とても怖くて住めないという方がたくさんいました。たとえ、建物が崩壊する心配はなくてもとても怖くて暮らせないということがあるのです。しかもコンクリートの塊の落下はかなり危険です。危険で生活できないという意味では、まちがいなく大きな被害なのです。

それを伝えたマスコミがそんなにおかしい訳じゃないのです。

 

 

まんしょんオタクのマンションこぼれ話
マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。
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