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劉邦からジョブズまで。トップリーダーに共通する「引き出す力」

マネジメントの基本や戦略を分かりやすく解説してくれるメルマガ『戦略経営の「よもやま話」』。最新号では“無敵な経営資源”というテーマで、歴史的人物や近現代の名経営者たちを例に挙げ、成功者が共通して備える“素質”について考察しています。

経営者という経営資源

社会の一般常識として一頃よく言われ今も言われ続けていることに、大企業はお金を持っているから強いのは当たり前だというものがあります。

ところで資金さえあれば無敵なのかどうかということですが、全くの検討違いのように思われます。資金は、間違って使用すれば確実になくなってしまします。なくなるものを当てにしていては、「滅び」はすぐそこにあらわれます。

今を盛りに伸びている会社と、行きづまっている会社を比較します。そして、それらの会社の経営者の言動をピックアップします。伸びている会社の経営者には、独特の言葉遣いがあります。そうでない経営者の言動では、分かりやすく常識的であるものの説得力もなくヒラメキもありません

よく知られている松下幸之助さんを引き合いに出しますと、「私の会社は人をつくっています」と言われ、最大の経営資源たる「人」を尊重し重視しています。独特の言い回しで伝えようとしていますが、従業員が持つ知恵と知識とその熱意があれば、企業は伸びていかないはずはないと考えられています。

お金の話に戻します。お金はどうしたら集まるか

日本の昨年度の長者番付のトップと2位は柳井さんと孫さんです。面白いのは、どちらもちょっとした成功者のご子息です。最初から、資金調達の道があったからだという面はありそうです。そこでは、変に納得させられますが。

ところで、最初から金のないのでは「なんぼあがいても所詮それまで」なのでしょうか。そんなことは全くなくて、全く無から資金を創りだした経営者がいます。ご存知の松下幸之助さんしかり、本田宗一郎さんもしかりです。

成功者のパターンをひも解いてみますと、最初の経営資金はやはり自分のなけなしの蓄えから始めています。そしてそのなけなしの資金を、時代が求める事業に投資しています。松下さんの場合は「電気」、本田さんの場合は「自動車(最初は2輪)」です。

成功できるとお金が集まり始めます。自己資金を始末して始末して蓄えます。信用が付くと金融機関の融資が期待できます。さらに成功すると株式公開が可能になります。

中堅企業になったすべての企業の共通パターンは、時代が求める未知であった事業にわくわくしながら夢をかけたことです。ユニクロがそうですし、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、セブンイレブン、古くは日立、東芝、三菱、三井、住友、あげれば皆そうです。

成功の鍵となるのは、経営者の考え方とその熱意です。その意味では人が最大の経営資源ですが、その中でも「最大の経営資源」は経営者自身と言うことになります。

>>次ページ 何が成功をもたらすか

何が成功をもたらすか

経営者が最大の経営資源ですが、その経営者の何が成功をもたらす要因なのか、そこが分からなればやり様がありせん。

経営者には技術能力は必要なのかを考えてみます。本田宗一郎さんや井深大さんのような高い傑出した技術をもった創業者もいます。しかし、経営者にとっての必要な専門能力は経営能力です。本田さんには藤沢武夫、井深さんには盛田昭夫、さらにいうと松下さんには高橋荒太郎というパートナーがいます。本田さんに至っては、藤沢さんに実印を預けぱっなしで技術開発に専念しています。

稲盛さんは仕事の成功について「仕事の結果=考え方×熱意×能力」という方程式をあげています。そのなかで特に重視しているのは「考え方」で、考え方についてはプラスからマイナスまであり、そのあり方によって全く違った結果になると主張されています。

大企業の創業者には、共通した2つ基本的な考え方があります。それは「社会に新たな価値をもたらす」という考え方と「人材を大切にする」という考え方です。

中国の歴史にも、とんでもないスケールの創業的人物が登場します。前漢を興した「高祖劉邦」は代表的な人物です。

劉邦は、見た目は立派だが無学でその性格は粗野で強欲なやくざの親分のような男でした。しかし、その反面で桁違いの資質がありました。それは、どんな人間の諌言でも聞き入れる度量と配下への並外れた信頼です。そのため、綺羅星のごとく英才や英傑がこぞってその陣営にはせ参じました。これは経営能力を超えた人間力と言えます。

日本では、豊臣秀吉が抜きんでた人間力を持っています。ただ劉邦よりもはるかに賢くその分スケールは小さいようです。竹中半兵衛や黒田官兵衛の軍師や蜂須賀小六などの人材がより集っています。大将には大将たる技が必要です。また、意識して心がけなければなりません

名経営者と呼ばれる人たちは、その経営力を超えた人を結集させる技に秀でています。資金集めについても名経営者には面白いエピソード付きまといます。

稲盛さんにはその人柄に惚れて自分の財産を注ぎこむ後援者がいたり、出光興産の出光佐三さんに至っては全財産を無償で注ぎこんでくれる人がいたり、孫さんにもその将来を見込んで1億円をポンと出資してくれる親戚がいたり、人間的なスケールと魅力が後援者を引き付けています。

基本にあるのは、人の考え方のあり方です。人は、「壮大に夢を見る人の考え方と行動」に自分の夢を重ね合わせ無償の好意を寄せてくれることがあります。経営者に求められるのは、一言では言えない「夢に賭ける」潔さです。

>>次ページ 欠かせてはいけない素養

欠かせてはいけない素養

学力や技術などの能力は、得手不得手があるものの熱意により一定水準以上までは身につけることは可能です。しかし、経営者としての素養は熱意だけでは身につけることはできません。しかも、その素養がなければ一流になることはできないようです。

そうしたらどうしたらよいのか、松下幸之助さんが「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」と、社員に対する年頭の引き出物として語りかけています。そして、それをどう体得するかについては、「具体的に言えないものである」と言われています。

コツは求めて求めてさらい求めたその揚句に、ある日はっと閃くもののようでしょうか。

少しマニアックになるのですが、戦国時代から江戸初期にかけての剣客に伊東一刀斎がいました。その奥義に、無意識のうちに敵を斬り倒す「夢想剣」という技があります。深く思い至り修練すれば経営のコツである「夢想剣」を体得できるやも知れません。

コツのむずかしさは、腑に落ちるということで、身体に染み込まなければ強い行動へは転換しません。スティーブ・ジョブズは性格はどうであったか知る由もないのですが、アップル社を大成功に導いた立役者です。

ジョブズは若い頃から禅に傾倒した仏教徒であって、しばしばスピーチなどで禅の教えを引用したと言われています。だからなんだということなのですが、禅の考え方のコツを経営にいかしていた趣があります。

少し長いのですがその言葉を並べます。「大衆受けするデザインは非常に困難だ。いつも人というのは何が欲しいか、それを見せられるまでわからないもんなんだ。」「集中とシンプルさの追求は、私の非常に大事な信念の一部だ。シンプルにするのは複雑にするより難しい。シンプルなものを作るには、思考もスッキリさせる大変な努力が必要なんだ。」

ジョブズが目標が求めて行動するとき、それを達成に至る軌跡は独特です。目的達成のためには手段を選ばず、本質だけにのみ集中した活動を行います。マーケティングの神髄を、ガムシャラな挑戦から得られた経験と禅のエッセンスとを組む合わせて紡いでいるようです。

少し飛躍して経営のコツを考えます。大成功を収めるには、顧客すら想像できなかった拍手喝さいの商品やサービスを世の中に現わすこと。そのためには、人が持つ能力を最大限に究極まで引出し、さらに引出し、完璧なモノにまでつくりあげます。

完璧なモノをつくりあげるために、すべての知恵と手段をつくし一切の妥協をしないということになるようです。と言いながら必要であればどんな妥協もして、手段を選ばずかつシンプルに行うことのようです。

ただしシンプルに行うについては、ジョブズは「思考もスッキリさせる大変な努力が必要なんだ。」と語っています。成功をもたらすシンプルな原理は、人の持つ際限のない欲求に対して大度量で飲み込んで究極まで突き詰めることのようです。

『戦略経営の「よもやま話」』
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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