劉邦からジョブズまで。トップリーダーに共通する「引き出す力」

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欠かせてはいけない素養

学力や技術などの能力は、得手不得手があるものの熱意により一定水準以上までは身につけることは可能です。しかし、経営者としての素養は熱意だけでは身につけることはできません。しかも、その素養がなければ一流になることはできないようです。

そうしたらどうしたらよいのか、松下幸之助さんが「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」と、社員に対する年頭の引き出物として語りかけています。そして、それをどう体得するかについては、「具体的に言えないものである」と言われています。

コツは求めて求めてさらい求めたその揚句に、ある日はっと閃くもののようでしょうか。

少しマニアックになるのですが、戦国時代から江戸初期にかけての剣客に伊東一刀斎がいました。その奥義に、無意識のうちに敵を斬り倒す「夢想剣」という技があります。深く思い至り修練すれば経営のコツである「夢想剣」を体得できるやも知れません。

コツのむずかしさは、腑に落ちるということで、身体に染み込まなければ強い行動へは転換しません。スティーブ・ジョブズは性格はどうであったか知る由もないのですが、アップル社を大成功に導いた立役者です。

ジョブズは若い頃から禅に傾倒した仏教徒であって、しばしばスピーチなどで禅の教えを引用したと言われています。だからなんだということなのですが、禅の考え方のコツを経営にいかしていた趣があります。

少し長いのですがその言葉を並べます。「大衆受けするデザインは非常に困難だ。いつも人というのは何が欲しいか、それを見せられるまでわからないもんなんだ。」「集中とシンプルさの追求は、私の非常に大事な信念の一部だ。シンプルにするのは複雑にするより難しい。シンプルなものを作るには、思考もスッキリさせる大変な努力が必要なんだ。」

ジョブズが目標が求めて行動するとき、それを達成に至る軌跡は独特です。目的達成のためには手段を選ばず、本質だけにのみ集中した活動を行います。マーケティングの神髄を、ガムシャラな挑戦から得られた経験と禅のエッセンスとを組む合わせて紡いでいるようです。

少し飛躍して経営のコツを考えます。大成功を収めるには、顧客すら想像できなかった拍手喝さいの商品やサービスを世の中に現わすこと。そのためには、人が持つ能力を最大限に究極まで引出し、さらに引出し、完璧なモノにまでつくりあげます。

完璧なモノをつくりあげるために、すべての知恵と手段をつくし一切の妥協をしないということになるようです。と言いながら必要であればどんな妥協もして、手段を選ばずかつシンプルに行うことのようです。

ただしシンプルに行うについては、ジョブズは「思考もスッキリさせる大変な努力が必要なんだ。」と語っています。成功をもたらすシンプルな原理は、人の持つ際限のない欲求に対して大度量で飲み込んで究極まで突き詰めることのようです。

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