世界最高峰とも言われるホスピタリティを誇るホテル「ザ・リッツ・カールトン」。そのサービスの裏には、他のビジネスにもすぐに応用できる「あるマインド」がありました。無料メルマガ『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』では、ザ・リッツ・カールトン元日本支社長が綴った1冊の本を読み解きつつ、その秘密を明らかにしています。
『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』 高野登・著 かんき出版
今回も、お客さま対応、クレーム対応をおこなううえでどの本が参考にできるのか、書評をお伝えします。ご紹介するのは、『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』です。著者は高野登さん。ちょっと長いですが、略歴です。
1953年、長野県戸隠生まれ。プリンス・ホテル・スクール(現日本ホテルスクール)第1期生。
卒業後、ニューヨークに渡る。ホテルキタノ、NYスタットラー・ヒルトンなどを経て、1982年、目標のNNYプラザホテルに勤務。その後、LAボナベンチャー、SFフェアモントホテルなどでマネジメントを経験し、1990年にザ・リッツ・カールトン・サンフランシスコの開業に携わった後、リッツ・カールトンLAオフィスに転勤。その間、マリナ・デル・レイ、ハンティントン、シドニーの開業をサポートし、同時に日本支社を立ち上げる。
1993年にホノルルオフィスを開設した後、翌94年、日本支社長として転勤。リッツ・カールトンの日本における営業・マーケティング活動をしながら、ザ・リッツ・カールトン大阪の開業準備に参画。
とのことで、一貫してホテル畑を歩み、世界最高峰のサービスと名高い、ザ・リッツ・カールトンの日本支社長にまでのぼりつめた人物です。
その後は、
2009年に退社し、長野市の市長選挙に出馬するも651票差で敗退。2010年、人とホスピタリティ研究所を設立、現在に至る。
とのことですが、上梓された著作は累計で50万部。お江戸百年塾という塾の主宰もされているようですね。
● お江戸百年塾
目次は以下のとおりです。
はじめに
第1章 感謝されながら、成長できる仕事術
第2章 感動を生み出す「クレド」とは
第3章 リッツ・カールトンを支える七つの仕事の基本
第4章 サービスは科学だ
第5章 リッツ・カールトン流「人材の育て方」
第6章 リピーターをつくるリッツ・カールトンのブランド戦略
第7章 いますぐ実践したい“本当のサービス”とは?
最後に
ホテル「リッツ・カールトン」が、世界最高峰といわれるサービスをどのように提供し、どのようにそれを続けているのかが、克明に書かれています。
しかし、この本が、今わたしたちの目の前にある、クレームの対応に、直接役立つかどうかを考えたときに、わたしが出す結論は、「ノー」です。理由は以下のとおりです。
「はじめに」のp3には、著者も驚いた、あることばが書かれています。
何より驚いたのは、リッツ・カールトンでは、従業員も「お客様」として扱われることです。
そして、「ミスティーク」=神秘性と呼ばれる、お客さまの驚きと感動を生み出すことができる、最大の理由が、以下の3つのチカラ(権利)の行使です。
- 上司の判断を仰がずに自分の判断で行動できること
- セクションの壁を越えて仕事を手伝うときは、自分の通常業務を離れること
- 1日2,000ドル(22万円弱)までの決裁権
この本には、事細かに、リッツ・カールトンの、すばらしいサービスや、精神が描かれています。そして、俺もこんなサービスを提供してみたい! と、間違いなく思うんです。でも、
- 会社がお客様として扱ってくれる
- 20万円の決裁権が個人にある
なんて出てきちゃったら、「従業員を信頼し、大事にしているから、世界最高のホスピタリティが実現できるんでしょ?」「俺にももっと権限があったら!」とか、「あー、なんだウチの経営者じゃ無理だわ!」とか、思っちゃいますよね?
しかし、本当に、会社が環境を提供しなければ、お客さまにおもてなしはできないのでしょうか。
p103には、こう書かれています。
パッション=情熱は、周囲の人を巻き込んでいくエネルギーです。その情熱が強ければ強いほど、現場や組織も大きく変わっていくのです。
できない理由を探すのではなく、今、あるものから、何ができるのかを考え、情熱を持って取り組んでいくこと。
この本に書かれている良い点は、「リッツ・カールトンってすごいでしょ!」というこのホテルの秘密よりも、むしろ、
- ブランディングの大切さ
- 仲間やお客さまとのコミュニケーションの方法
- 自己投資の仕方
- 社員教育の仕方
そして、トップ5パーセントの顧客層をメインターゲットにするという「マーケティング戦略」が書かれている点にある、とわたしは思います。そして、読みすすめていくと、
- 自分自身に対する誇り
- 周囲に対する感謝
そしてなにより、
- 「楽しむこと」が大切
という、一番大切な「マインド」に気づくのです。だから、直接クレーム対応に役立つ本というより、自分の仕事のスタンスや、目指すべき方向を知る、自分を高めてくれる本として読むとよいでしょう。
『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』。サービスを提供する側の、経営者層や、ホテル関係者にとっては、必読といえる本です。
最後に、p200に書かれていることばを紹介します。
ホスピタリティとは、お客様に愛情を示すことである
クレームばかりで殺伐とした環境では、感謝や尊敬の心を忘れがちです。情熱を持って、自分から仕事を楽しみ、周囲に笑顔や元気を伝染させることから、世界を変えることができるのかもしれませんね。
image by: Wikimedia Commons
『幸せを呼ぶ! クレーム対応術』
有名企業、10数社のカスタマーセンターで身に着けた、クレーム対応のノウハウを、無料で、惜しみなく教えます。クレームのケーススタディ、クレームで自分を削らない方法、役に立つフレーズ、使ってはいけないことば、などなど、対応で役に立つことはもちろん、時事ネタや知っているようで知らなかった話を、詳しく、できるだけ面白くお伝えします。
<<登録はこちら>>