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「バッティングが嫌いだった」伝説のホームランバッター・中村紀洋が今だから語る裏話

野球好きならば、その名前を知らない人はいないだろう。2000本安打、400本塁打、ゴールデングラブ賞7回(三塁手)と、輝かしい成績を残してきた中村紀洋さん。

数多くの名勝負を繰り広げてきた中村さんは、現在、後進を育てるべく、指導者としての道を歩み始めている。小学校高学年および中学生の少年少女を対象にした野球教室「N’s Method(エヌズ・メソッド)」を兵庫県西宮市に開校し、高校・大学に在学中の野球選手を指導できる学生野球資格回復の適性認定にも合格した。

そして、5月には中村さんは、新たに有料メルマガ「中村紀洋の野球マガジン」を創刊した。(なお、N’s Methodのトップトレーナー陣によるメルマガ「N’s Methodトレーニングマガジン」も現在好評配信中。)今回は、メルマガを初めたいきさつや、指導者としてどんな指導を心がけているのかなど、野球指導者・中村紀洋として話を聞いた。

本塁打王を1度、打点王を2度獲得しながらも、実はバッティングは“嫌い”だった

──「N’s Method(エヌズ・メソッド)」を開校されたと伺っておりますが、具体的にはどういったことを教えているのでしょうか。

中村紀洋さん(以下・中村):体幹トレーニングなど、私がプロの世界で行ってきたトレーニングを、将来プロ野球選手を目指す子どもたちを中心に教えています。

じつは私は、体のバランスを意識したトレーニングはしてきたんですが、マシンを使ったウェイトトレーニングはプロの時もやらなかったんです。ウェイトをしなくても、プロで野球をやってこられたんですよ。当時はまだ体幹トレーニングという言葉も知らずにやっていましたが、今考えるとあれは体幹トレーニングだったんです。そういったプロ野球生活で身につけてきた「生きた知識」を、一般の人にも丁寧に教え、アドバイスしています。

──豪快なホームランを打っていた中村選手が、ウェイトトレーニングをしてこなかったのはちょっと意外ですね。

中村:バッティングや守備などの技術を磨くことに力を入れてやってきたので、ウェイトトレーニングをする余力がなかったんです。周囲からはウェイトもやれと言われてたんですが、その時間は休憩に充てていました(笑)。守備やバッティング練習があったので、力を温存しておかないといけなかったんです。大事なのは打つか守るかの練習だと思っていたので。

ただ、ウェイトトレーニングをしないかわりに、自室でもできることを探した結果、バランスボードの上に乗るといった、何気ないこと、今で言う体幹トレーニングをずっと続けていました。

──技術を追求し、体幹を鍛えた結果が、あのバッティングにつながっていたんですね。

中村:バッティングというよりは守備ですかね。ホントはバッティングは嫌いだったんですよ。報道されるのはバッティングばかりでしたが、守備がずっと好きで、練習していたんですよ。あまり表には出てこなかったですけどね。

──豪快なホームランの印象が強い中村紀洋さんがバッティング嫌いだったとは驚きです。

中村:バッティングは難しいんですよ。相手がいることなので。でも、守備は練習すればするほどうまくなります。守備にはスランプがないのですが、バッティングにはスランプがあって練習すればするほどうまくなるものでもないので。

ただただ楽しかった怪物・松坂大輔との勝負

──バッティングに関してもお伺いしたいのですが、今まで対戦された中で、特に印象に残っている投手を教えていただけますか。

中村:やはり、松坂大輔(現在・福岡ソフトバンクホークス所属)ですね。18.44メートル(投手と打者の距離)を、三振かホームランかという感覚で、2人だけの空間として思い切り楽しめました。三振しても、打てても、ただ楽しいんです。勝負なので勝敗はありますが、そこにこだわらず、1球1球に集中できました。毎日だと身が持たないぐらい集中していましたね。

──それほど松坂選手のボールはすごかったんですね。

中村:他の選手とは違いましたね。「打てるものなら打ってみろ!」という球と、「打たれたら嫌だから、コントロール良く投げよ。フォアボールでもいいや」という球では違いますからね。一球一球への思いが、「ヒットでは駄目だ。ホームランじゃないと納得できない」という気持ちにさせられました。

──松坂選手以外に気になった選手はいらっしゃいましたか。

中村:元・千葉ロッテマリーンズの清水直行ですかね。彼は、打たれたらしょうがない、打たれて当然という感覚でいるんです。僕に「なんで打てないんですか?」と逆に聞いてくるくらいなんですよ(笑)。

僕は、清水に「フォークだけは投げるなよ」って言っておくんです(笑)。そう言っておいても投げてきたんでホームランにしてやりました。「だから、フォークは投げるなって言っただろ」って。そういったやりとりを試合中にやってました(笑)。

──試合中にですか?

中村:ファーストを守っていると、相手ピッチャーがイニングの途中でキャッチボールをするため出てくるじゃないですか。その時に、フォークはダメだよって身振り手振りで伝えるんですよ。

──そんなやりとりを試合中にしてたんですね。

でも次の打席でフォークを投げてくるんですよ。ダメだって言ったのに(笑)。

日本の野球とメジャーの野球、中村紀洋が感じた違いとは

──中村紀洋さんというとメジャーリーグにも挑戦されていますが、日本とメジャーの差は感じましたでしょうか?

中村:パワーの差は感じましたが、バットに当てる能力、ゴロを捕る能力は、日本の方が上だと感じました。でも、基本的に骨格も違うので、比べようが無いというのが本当の気持ちです。

ただ、食事に関しては大きな差がありましたね。マイナーリーグは、食べるものがないんですよ。メジャーは、移動はチャーター機、食事もケータリングがあってと豪華ですが、マイナーリーグでは、ハンバーガーとポテトチップスだけ。フライドチキンとバドワイザーがご馳走という食生活になりますね(笑)。

──そこから養われるハングリー精神のようなものがあるのでしょうか?

中村:どうでしょうね。私が話した選手たちは、ハングリーとは違う感じでしたね。「契約で決まっているから、いくら頑張っても今年はメジャーにあがれないんだよ」とか言う選手もいました。競争の世界だと思って行ったんですが、現実は違いましたね。

野球を教える指導者にこそ、メルマガを読んで欲しい

──メルマガでは日本やアメリカで得たプロでの経験が書かれるのでしょうか?

中村:それもありますが、主には「N’s Method(エヌズ・メソッド)」で教えていることを書いていきます。スタジオが遠くて通うことができないプロ野球選手を目指す子どもたちは、もちろんですが、彼らを指導している監督・コーチ、そして週末に草野球を楽しんでいる一般の方にこそ、読んでいただきたい内容です。

指導は野球の「基本」が中心です。これまでも野球教室はけっこう開催してきたんですが、今の少年野球チームで基本を教わっていない子が多いんです。つまり、本当の基本を教えられる指導者がいないんです。

そういう指導を受けた子どもたちからは「肘が痛い、肩が痛い」という声もよく聞いています。しっかりと投げ方の基本を教わっていれば、怪我を防止することもできます。

身体ができていなくて、身体の使い方がわからないままで、必死になって投げると、どうしても肘や肩に余計な負荷がかかり、故障につながってしまいます。基本を覚え、体幹トレーニングをして、身体の使い方をマスターすれば、身体の負担は軽減され、怪我をせずに、思った以上のパフォーマンスを発揮できるようになるんです。

これは野球だけでなく、ほかのスポーツにも通じる考え方なんです。例えばゴルフ。「N’s Method(エヌズ・メソッド)」で体の使い方を理解したことで、飛距離が伸びた、スコアが上がったと言ってくれるゴルファーもいっぱいいます。

──今後、中村紀洋さんはどういった活動を行っていこうと考えていらっしゃいますか。

中村:1人でも多くのプロ野球選手、メジャーリーガーを育てたいと思います。そのためにプロ野球での22年間で会得した技術と理論をしっかりと伝えて行きたいと思っています。

──最後に、メルマガに対する意気込みをお願いいたします。

中村:私の野球人生で蓄積した考え方を多くの方に触れていだき、皆様のお役に少しでも立てるのであれば、とてもうれしいことです。毎月、色々な情報を発信していきますので、楽しんでください。

 

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中村紀洋の野球人生を通して培った、独自の野球理論・技術を余すことなくお伝えいたします。

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