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嘘も方便。「認知症」の家族を傷つけず介護サービスを受けてもらう方法

2025年には700万人を超えるとも言われる認知症患者。もはや他人事ではありません。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では、前回の「家族の「認知症」を見抜く、知っておきたい5つの兆候」に引き続き、認知症の家族をもつ方々への情報が紹介されています。今回はプライドの高い認知症患者さんへの対処法について。時には「嘘も方便」と思うことも大切なようです。

認知症はあの世に戻る準備のための恩恵

こんにちは! 廣田信子です。

認知症ケア指導管理士の久保克裕さんが2人の認知症の伯母さんの件で一番苦労したのが、本人が、自分が認知症だということを受け入れず介護サービスを受けてくれなかったことだといいます。

教師と看護師として自立して生活し、独身だった2人は、同居しており、認知症の症状が出たお姉さんを妹さんがお世話をしていたのですが、その妹さんも認知症になり、いつの間にか認認介護に。地域包括支援センターから、近所から異臭の苦情があると連絡があり、駆けつけてみると、完全に2人の生活は破たんしていたのです。

この場合は姉妹ですが、夫婦でも同じで、認知症の介護をしていた方も認知症になっていた…ということは、充分あり得ることなのです。高齢者の認知症率を思えば、2人暮らしだから安心というようなことにはならないのです。

そのうち、坂道を転げるように症状が進み、銀行や役所に行っても意思の疎通ができず、警察を呼ばれ、久保さんが引き取りに行くことになります。

もう放っておけないと要介護申請しようと思っても、「年寄り」とみなされるのを嫌がり、説得しようとすると暴れ出します。教師をされていた方だから、プライドが許さない気持ちも分かります。「生活調査」とごまかしてようやく認定に漕ぎつけたと。

その後、症状が進んで自宅介護は無理になり、ようやく施設を探して入居させようとしても、絶対にいやだと言って聞きませんから、やはり「病院にいくとうそを言ってようやく施設に連れて行くことができたと言います。今は、とても施設が気に入って穏やかに生活しているみたいで、うそも方便認知症の方には必要です。

で、残った妹さんの方も、元看護婦さんですから手ごわくて、なかなか介護サービスを受け付けません。仕方がないので、「知り合いの便利屋とうそついて訪問介護でゴミ捨てや掃除をしているといいます。本人が拒否しているのですから、費用は、久保さんの持ち出しです。

久保さんは、このお話を、みんなの参考になればと、週間東洋経済(2015.11.21)の取材にも応じ、勉強会でも話して下さいました。自分が面倒みるしかないけど、実の親じゃなかったから、少し距離を置いてクールにできる部分もあったのかもしれない…と。で、介護する者は絶対に100%を目指してはダメだと。そういいながらも、一番大変な時期、ほぼ半年は久保さんはほとんど仕事にもならず、もちろん休む余裕もない生活だったのです。

では、こういう状態がマンション内であったときに周囲はどう支えられるかです。現場の話を聞くと、やはり、認知症を認めない、介護サービスを拒否するというのが一番大変だと。それで、離れて暮らす息子や娘が駆けつけて来ても、結局、お手上げで、何もできないで、そのまま放置して帰ってしまう。そのあと、マンションにいる人間は、危険な状況や迷惑行為を放置もできず、ほんとうに困る…と。

何か手助けしたくても、本人が認知症と思われたくないと思っていたら、気を配ることが、かえって頑な拒否につながるかと思うと、手助けもなかなかむずかしい。その前に、ちょっと怪しいなと思ってもご本人か親族から状況を聞かないかぎり、初期の認知症かどうかをご近所の人間が見分けけるのは難しい…。

やはり、娘、息子が、ご近所の方に、「親に少し認知症の症状があるのでよろしくお願いします」と頼んでおくものも必要…という話になったら、会場から、それも、そう簡単ではないという話が。90歳を超え、認知症の症状があるお母さんのことで、近隣に「何かあったらよろしく」とお願いしていたら、そのお母さんは、「私の悪口を近所にいいふらしていると自分の娘を拒否するようになったと言います。

ほんと、むずかしい。

まだ、高齢の方には、「痴呆症」と呼ばれていた昔の記憶があり、自分の認知症をはずかしいものとしてできるだけ隠そうとする傾向があるのです。そして、親族にも、「はずかしい」という意識がまだまだあるのです。

でも、『家族の「認知症」を見抜く、知っておきたい5つの兆候』で数字をあげたように、長生きしたら認知症になる方が普通なのです。90歳以上の方の6~7割は認知症なのです。

認知症は、はずかしいことでもなんでもない。長生きすれば、みんながなるもの。それは、神様に、少しずついろいろなしがらみを忘れ、執着をなくし、あの世に戻る準備をする機会を与えられたんですよ。という空気を作っていくことが一番大事じゃないかな…と。

自分は…というと、そうなったら、受け入れるかな~。で、できるだけ、どんどんいろいろなことを忘れ、執着を脱ぎ捨て、子供に戻るようなそんな「認知症」でありたいな~。まだまだ難しいかな。魂磨かないと。

image by: Shutterstock

 

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