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まさにお先真っ暗。北朝鮮国民の7割が電気を使えない驚愕の電力事情

ニュースで頻繁に貧しい国内事情が報道される北朝鮮ですが、その内状は本当に悲惨なもののようです。北朝鮮近現代文化や市井の人々の暮らしに詳しい元山梨学院大学教授で宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄先生が、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』で、北朝鮮の驚きの電力事情を解説してくれています。

北朝鮮の電力事情とは?

Question

北朝鮮が自慢する高層アパートに高級幹部は住みたがらない、ということには 驚きましたが、その理由が北朝鮮の「電力事情」にあるとのこと。そこで、北朝鮮の電力事情について教えてください。暑い時期を迎えて、北朝鮮の人民も エアコンを利用しているのでしょうね。

宮塚利雄先生の回答

2014年2月下旬、アメリカ航空宇宙局(NASA)が朝鮮半島の夜の景色を映した画像を公開しています。

これを見ると(付設資料室の壁に貼ってある)、光に溢れる日本や韓国、中国の海岸部の都市とは対照的に、北朝鮮は暗闇に包まれています。中国や韓国は「光の塊」となっている都市部とそれをつなぐ道路まで見えているのに対し、北朝鮮はそこに存在しないかのように暗闇となっています。

ただこの暗闇の中で平壌だけがかすかに小さな点で見えるだけで、韓国の地方都市ほどの明るさでしかありません。 北朝鮮には平壌だけでなく、多くの地方都市や村などが存在するが、これら一帯はまさに「暗闇の地帯」です。統計によると、北朝鮮の農村地域の年間電気使用量は約30kwhで、これは韓国の家庭の2~3日分の使用量に過ぎないとされます。都市付近では大部分の住民たちがバッテリーを充填し使用してい ますが、それ以外の農村地域ではいまだにローソクを使用している所もあります。

国連開発計画(UNDP)の『アジア太平洋地域人間開発報告書』によると、 北朝鮮の電力事情は、「2009年の時点で全人口の26%の家庭でしか電気を使っていない」という報告もあるなど、この状況は今も変わっていないのではないでしょうか。平壌の夜空に煌々と照る高層アパートから漏れる電光とはまったく別の世界なのです。

電気は国家を運営することにおいて必需の基幹設備としてもっとも重要な要素であり、特に北朝鮮の立場からは極めて不足な電気による経済開発が不可能だということを知っており、金正恩は「国家経済開発5か年戦略」を提示しなが ら電力難の解消を政策の上位目標に設定したのは当然の事でしょう。

1990年を起点に北朝鮮の電力事情は毎年のように悪化してきています。水力と火力の比重が「6対4」からなっており、さらに、北朝鮮の発電設備の平均利用率は2014年には34%水準で極めて低い状況です。また、北朝鮮は国内の各地で生産される石炭と水資源を利用して発電をしており、原油の輸入は資金事情によって極めて制限的であり、北朝鮮で生産される石炭は品質が劣っているために効率が悪く、水資源は干ばつと山林の荒廃により、さらには電力生産設備の老朽化が深刻な状況にあります。

工場の操業も、電力不足と電圧が不安定なために、まともに操業できないこと もしばしばで、工業地帯のトンネル内では送電量不足によって、電気機関車が立ち往生することもある」と脱北者は言っていました。

北朝鮮では「電力は1にも2にも軍需工場や軍部隊などに優先的に供給されるもの」で、民生用の電力供給は後回しにされるのです。つまり、北朝鮮のショウウインドー都市であ る平壌には優先的に電力が供給され、地方都市や農村、山間地域などには潤沢で良質の電力は供給されないのです。

宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄

image by: Shutterstock

 

宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』より一部抜粋

著者/宮塚利雄
元山梨学院大学教授、現宮塚コリア研究所代表。テレビなどのメディアでは決して話せない北朝鮮やアジアに関するマル秘情報、長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。
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