だまされずに水墨画を手にするテクニックとは?

2016.08.01
by gyouza(まぐまぐ編集部)
写真左より:狩野玄也「破墨山水図」双幅、意精「山水図」、元賀「葡萄栗鼠図」写真左より:狩野玄也「破墨山水図」双幅、意精「山水図」、元賀「葡萄栗鼠図」
 

※サムネール画像:写真左より:狩野玄也「破墨山水図」双幅、意精「山水図」、元賀「葡萄栗鼠図」

日本美術の名宝をより身近に、より深く鑑賞するための本格派美術講座東京美術倶楽部の主催により、年間事業として開催されています。今回6月25日に開催された「だまされずに水墨画を手にする 」(講師:河合正朝 千葉市美術館館長)について、エバンジェリストの柳井がお伝えします。

倶楽部外観

東京美術倶楽部へは、初めての訪問。建物自体の存在感もすごいです。

 

講座の名前からすると、「お勉強!」といった感じで参加したが、なにしろ公開講座の講座名が「だまされずに水墨画を手にする」という、個人的にはコレクターの“ハシクレ“として、興味津々な講座名。

どんな内容か非常に気になっていました。

講座風景1

講義風景。実物とスライドでわかりやすかったです。

 

会場に入ると、今回のテーマが水墨画という事もあり、ご年配の方が多い印象。もっと、若い人も参加すべきと感じますが、それは置いておきましょう。

静まり返った会場では河合正朝さん(千葉市美術館館長)の、経験談を中心に講座は進んでいきます。本物の水墨画もあり、出てくる話は歴史的に有名な方の名前ばかり。前半は経済学者ピーター・ドラッカーと彼の水墨画コレクションに師として影響を与えた美術史家 田中一松との交流について、後半は言わずと知れた水墨画の巨匠 雪舟について、その鑑定についても話を聞くことができました。

水墨画解説

実際の水墨画を使用した解説。熱気がすごいです。

 

普段サラリーマンをしている、私としては、マネージメントの父・ドラッカーが水墨画のコレクターだったとは驚きました!勉強不足を痛感するとともに、アートとビジネスをどこかで切り分けていた自分がちょっと恥ずかしくなる気持ちでした。 

さて、本題の講座名「だまされずに水墨画を手にする」については、要するに「何を買うか」だけでなく、「誰から買うか?」というのが重要とのこと。河合さん曰く、「掘り出し物なんて無い。優れた、信頼の置ける美術商とだけ付き合う。「優れた美術商」は、コレクターが何を欲しいかが分かる」のだそうです。 

これは、古美術・骨董だけでなく、「現代美術」においても同じことが言えると思います。私も今振り返ると、作品購入の際はもちろん「作品+作家+ギャラリー(ディーラー)」に対して、条件がそろわないと購入までは至っていないなと、思います。

これは、難しいようですが特別なことではなく、「作品を所有する」ことは、投資という側面もありながら、「自分自身の、その時点での美に対する姿勢の証明」を買っているという意識があるからでしょう。言葉にすると難しいですね。

アートだけではなく、家や車・衣服など同じことが言えると思います。作られたもの、取り巻く環境・人・すべてが作品ということにもなりえます。

今回の講座では、人や時代は違っても「コレクション」という概念は不変であると強く感じました。

今後も、東京美術倶楽部の色々な公開講座が開かれるようです。今回の講座に参加してみて、美術作品に触れる中では普段自分では意識していないことを、確信というか実感に変えていく事ができるのではないか?と感じるような経験でした。

一見、少し敷居の高そうな公開講座。しかし、参加した後には皆さんも感じるものがあることでしょう。

次回は、漆のお話だそうです。

日時:2016年9月17日(土)15:00~16:30
講師:池田巖(漆芸作家)
参考:公開講座について

ぜひ、参加してみてはいかがでしょうか。

文:柳井和城

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