Windows95の設計にも携わった世界的エンジニアでメルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者である中島聡さんが、メルマガ読者の方から届いた質問に回答するQ&Aコーナー。今回は「優秀なエンジニアほど管理職になってしまい、開発に専念できない」「その原因は日本の雇用規制にあるのでは?」とし、「グーグルやアマゾンのような世界的なIT企業の日本支社はどうなっているのか?」という質問。かつてマイクロソフトの日本法人に勤務していた中島さんからの回答は?
優秀なエンジニアが管理職にされる日本の雇用規制を逃れる方法はありますか?
Question
日本のソフトウェア産業で優秀な人材が管理職になりエンジニアが活躍できない、ということについて質問です。
このような体質が辞められないひとつの大きな理由が日本の雇用規制にある、というのはとても納得できました。しかし、そうすると日本の雇用規制下の企業は例外なくこの構造から逃れられないということになると思います。GoogleやAmazonなどのイケてると言われるIT会社やベンチャー企業であっても、日本法人ではこのゼネコン構造から逃れられていないのでしょうか?
それとも、やはりイケてると言われる会社はこの雇用規制下でも優秀なエンジニアがバリバリ活躍できるようになっているのでしょうか? そうだとすると、いったいなにが違うのでしょうか?
中島聡さんからの回答
私もMicrosoftの日本法人にいたことがありますが、外資系の企業は、たとえ日本法人であっても、パフォーマンスの出ない人、不要な人は、適宜解雇しています。
日本の雇用規制はとても曖昧で、結局は監督官庁のさじ加減でどうにでもなるように作られているため、実質的に縛られているのは霞が関との関係を重視する大企業(IT公共投資の入札に参加している企業、経営不振に陥ったら霞が関に救済してもらいたいと考えている企業)だけ、という「大人の事情」があるのです。
裏を返せば、優秀なエンジニアがバリバリ活躍できる環境を作りたければ、逆にそうではない人を解雇する勇気が経営陣に必要だし、IT公共投資の甘い汁を吸おうとしてはいけない、ということです。
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