最近は徐々に変わりつつあるとはいえ、ビジネスホテルはシティホテルなどと違い「ただ寝に帰る場所」というイメージが強いですよね。そんな中、独自の強みを活かしたサービスを追求し、今では顧客満足度抜群のホテルとして選ばれるようになったのが共立メンテナンスが運営する「ドーミーイン」です。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、ここまで支持を集めた理由が解説されています。
企業文化に支えられた強み
ちょっとした気配りで人気のホテルを分析します。
● 共立メンテナンス(学生寮・社員寮・ホテル事業)
今回は共立メンテナンスのビジネスホテル「ドーミーイン」にフォーカスをあてます。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):ビジネスホテル
- 競合(お客様の選択肢):東横イン、アパホテル、スーパーホテルなど
- 状況:訪日外国人の増加によりホテルの市場規模は増加傾向にあります。
■強み
1.心も体もリフレッシュ
- 天然温泉の大浴場、露天風呂、サウナなどで癒しを提供しています。
- 温泉旅館に来ているような感覚
2.くつろげる、快適
- 和の布団
- 共有スペースにいける館内着の作務衣(さむえ)を用意
3.おいしい朝食
- 地元食材を使った栄養ある朝食
- 毎日作りたての約50種の料理
⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス
★寮運営ノウハウを生かした気配りの文化
- 約370の学生寮や社員寮を運営している実績
- お客様の「あったらいいな」を日々研究・導入
- コンセプトは「住むホテル」
「わが家で過ごすようなくつろぎを提供する」
→上記のようなコア・コンピタンスがあるからこそ強みを実現できているといえます。
■顧客ターゲット
- お手ごろな価格と、快適な時間を両立したい人
→週末は観光客、平日はビジネスパーソンが中心
◆戦術分析
■売り物
ビジネスホテル
<食事>
- 朝食バイキングには毎日作りたての約50種の料理が並びます。
博多では明太子、北海道は鮭やイカ、仙台は牛タンカレー、名古屋は味噌カツなど地域限定のご当地メニューが用意されています。 - 21時30分に名物「夜鳴きそば(醤油ラーメン)」が無料で提供されます。
<風呂>
- 温泉、大浴場、露天風呂、サウナ
<その他>
- 無料で使える洗濯機、客室に「加湿機能付空気清浄機」を設置、熱いおしぼりをくれる など
■売り値
- シングル:1万円~1万5,000円程度
■売り方
- JCSI(日本版顧客満足度指数)のビジネスホテル部門で顧客満足度1位を獲得
- エクスペディアの「世界ベストホテルランキング」では「ドーミーイン札幌ANNEX」が世界5位を獲得
⇒これらの第三者評価が、ドーミーインを利用する方への安心感につながっています。
■売り場
- 全国約60店舗。立地は駅近く。
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
まとめ(戦略ショートストーリー)
お手ごろな価格と、快適な時間を両立したい人をターゲットに「寮運営で培った気配りの文化」に支えられた「リフレッシュ&くつろげる」という強みで差別化しています。
「充実した食事」や「リフレッシュできる風呂」、「熱いおしぼり」、「夜鳴きそば」など自宅のようにくつろぐための、ちょっとした気配りにより顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
「企業文化に支えられた強み」
多くのビジネスホテルがスタッフの配置を減らすといった接客を省略することで、効率化を図っています。ホテルにおいては、人件費の占める割合が大きいため、価格競争になると、利益を確保するために業務を効率化して、人をいかにして減らすかを考えるのは当たり前ともいえます。
そんな中で、ドーミーインは手作りにこだわった朝食やおしぼりの提供、夜鳴そばの提供など手間をかけてでも、顧客にくつろぎや癒しを提供しています。ドーミーインの強みとなっている、こういったちょっとした気配りのサービスを支えているのが企業文化です。
ドーミーインを運営している共立メンテナンスは、もともと学生寮や社員寮を運営している会社で、現在も寮の運営が経営の一つの柱となっています。学生寮では、館長や寮母が保護者のかわりになるわけですから、館長や寮母は学生一人ひとりの日常生活をそばで見守っています。ですので、寮運営において、学生が自宅と同じように過ごせるようにするための気配りは欠かせない要素のひとつです。学生寮の運営で培った一人ひとりへの気配りの文化が、ドーミーインにおいても、根付いているようです。だからこそ、
- お客様の「あったらいいな」を日々研究・導入
- 「わが家で過ごすようなくつろぎを提供する」
といったことに、手間をかけているわけです。つまり、効率化よりも優先すべきことが明確であるということです。これは戦略がしっかりとスタッフの行動にまで落とし込まれているということでもあります。戦略は現場に理解され、実行されなければ、絵に描いた餅になって しまいますから、これは、非常に重要なポイントです。
また、企業文化に支えられた強みは簡単には真似できません。他社の企業文化を取り入れるということは、非常に難しく、M&A(企業の合併買収)などがうまくいかない要因の一つにもなっています。恐らくドーミーインの独特の企業文化を他社が取り入れることも難しいでしょうから、強みを真似することも簡単ではないでしょう。
今後、ドーミーインが企業文化を維持し、どのように発展させていくのか注目していきたいです。
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