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松下幸之助が考え抜いた末に悟った「経営のコツ」とは何か?

パナソニックの松下幸之助さんをはじめ、経営のカリスマと言われる人たちは我々にさまざまな「経営哲学」を残してくれました。そもそも、人間が働く意欲というものはどこからやってきているのでしょうか。そして一から会社を大きくしたカリスマたちは、従業員をどのように育てたのでしょうか。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』の著者・浅井良一さんが、脳科学者・茂木健一郎さんが自著で取り上げているある実験結果を紹介しつつ、わかりやすく解説して下さいました。

ミッションありき

松下幸之助さんは「経営のコツ」を得るために「血の小便が出るまで苦労したのでしょうか」という大阪の「船場」に伝わる言葉をよく言われます。水道哲学というミッションの確信は、松下さんが「日々どうしたら、人は懸命になるのだろうか」を考えて考えて考え抜いた末に、天理教の本部で信者の喜びに満ちた奉仕の姿を目の当たりにして気付かされました。

「産業人の使命は貧乏の克服である。水道の水の如く、物資を無尽蔵にたらしめ、無代に等しい価格で提供する事にある。それによって、人生に幸福を齎し、この世に極楽楽土を建設する事が出来るのである」。この言葉を真の使命としたこの日、真の松下電器が誕生したとしています。松下さんは、価値観を革新的な人のマネジメント」としてもたらしました。

強い経営を実践する企業では、これなくして企業の存続意義はあり得ないとする経営者の執念のミッションがあります。このミッションが全社員に浸透して社会に奉仕できた時、社会は企業への評価として利益をもたらします。これが社員に物質的な糧をもたらすとともに、精神的な喜びをもたらします

茂木健一郎さんは『プロフェッショナル達の脳活用法』のなかで、人の「勤労意欲」の源泉が知られるおもしろい実験例を示しています。子供にいろんな作業をさせて一方のグループには「よくできたね」と褒めて、もう一方にはおもちゃなどの品物を与えました。これらを繰り返していたら、その後に対照的な結果がで出てきました。

結果を言うと、褒められたグループは作業をやろうとするが品物を与えられていたグループは作業をやらなくなってしまったのです。この結果は特殊な事例ではなく「動機付け衛生理論」という心理学の一般理論でもあり、人は金銭報酬なくして働きませんが人をして喜んで「働く意欲をもたらすモノはもっと別のものであると言えます。

人は褒められることが大好きで、社長から上司から仲間からそしてお客様からさらに自分自身からも、この欲求を満たすことが経営のエッセンスです。松下さんが示した「水道哲学」と言うミッションは、お客や社会を幸せにすることで自分の貢献を褒めることができ、それをより良く実現させることで利益がえられ報酬も増えて家族を幸福にできるという好循環を生みます。

これがミッションのあり方ですが、不思議なことに一部の強みを持つ企業以外では褒める仕掛けがありません。もちろん、額に掲げられたミッションや理念や社是を持っている企業は結構ありますが、儲け話があるとどこへでも行き失敗するとまた帰ってきて社内にあるのは不良在庫と社員の無気力だけというケースもよくあります。

よく事例にあげるのですが、京セラがかかげるミッションは少し異形でそこから導き出された組織形態も異形です。まずミッションですが、顧客や社会よりも社員を目的にしています。「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」とあり、社員の生きることを最優先にしています。

京セラの組織は「アメーバ組織」と呼ばれ、社会の欲求を感知した社員のオーナー意欲をもとに自己増殖を行っています。社員の活動は「人間として何が正しいのか」「人間は何のために生きるのか」を基準として稲盛さんの経験をもとに作成されたフィロソフィー行動規範)によって導かれて行きます。京セラの経営方法はパナソニックの事業部制の発展形で、アメリカでは3M社が同様な組織形態を採っており組織だけでなく経営のイノベーションです。

image by: Wikimedia Commons

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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