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中国が迎えた王朝崩壊期。権力闘争本格化で追い詰められた習近平

先日明らかになった、習近平氏の側近の失脚。来年秋の党大会に向けてさらなる権力集中を目論む習氏にとっては大きな痛手であることは間違いありません。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、激化する中国政界の権力闘争を「つねに中華王朝の末期、崩壊前夜に見られた現象」とし、「中国が今後没落する宿命は避けられない」と言い切っています。

【中国】元側近の失脚と人民の嘲笑で末期的状況な習近平王朝

非主流派が習近平氏一派の粛清統治に「反撃」開始か

習近平の側近として知られる天津市のトップ黄興国が「重大な規律違反」の疑いによって党の取り調べを受けていることがわかりました。事実上の失脚です。

習近平が反腐敗運動を進めてきたことは周知のことですが、これまで元党中央常務委員だった周永康や軍人トップの郭伯雄ら江沢民派、そして胡錦濤の側近だった令計画などを汚職の罪で失脚させ、江沢民派や共産党青年団団派といったライバルを牽制し、権力を自らの手に集中させようとしてきました。

ところがその司直の手が自らの陣営にも伸びてきたということですが、これについて、江沢民派や団派の逆襲説などさまざまな憶測が飛び交っています。失脚した黄興国は2015年8月に起きた天津での大爆発事故当時も天津のトップでしたが、責任を負わされることもなく、2017年の共産党大会で中央政治局入りが有力視されていました。

失脚した黄興国の後釜として、江沢民派の李鴻忠湖北省党委書記を充てる人事が発表され、江沢民派の巻き返しという説は、ますます有力視されています。

天津市トップに江派の人物、習派摘発の後任に

台湾でもこのニュースは大きく報じられていますが、ところが論調はかなり異なります。聯合報によれば、消息筋の話として、黄興国の徹底的な調査を紀律検査委員会の王岐山に求めたのは習近平だったとしています。

最近、幹部に対して自らへの絶対忠誠を強く要求している習近平は、自らの出身母体である浙江閥の重用についての疑惑を払拭し、かつての仲間に対しても「調子にのるな」と警告して、党の全体に「誰も安全な者はいないということを認知させようとしている、とのことです。

天津市代書記黄興國下台 巨爆秋後算帳?

とはいえ、これもどこまで本当のことかわかりません。もともと派閥もなく、味方の少ない習近平にとって、自らの身を削るようなことをすれば、タコが自分の足を食べるようなもので、権力基盤が弱体化することは避けられません。むしろかつての仲間すらも追及するということになれば、習近平への反発はますます大きくなります。

しかも、目下、習近平は来年秋の党大会のために党派結成に躍起となっています。太子党は党派性が希薄であるため当てにならないからです。

今年3月の全国政治協商会議の開幕式では、式典終了後に最高指導部のメンバーが退場する際に、王岐山が前を歩く習近平に後ろから手をかけて呼び止め、話しかけるということがありましたが、これは王岐山が習近平の権威を貶めるものであり、王岐山が自ら習近平よりも権力を持っていることを示したものだと言われました。

習近平氏よりも格上の実力者が浮上してきた 頓挫した「独裁者」への道

となれば今回の黄の失脚も、王岐山が習近平を裏切り、習の側近を切り崩そうとしている動きだとも考えられます。江沢民派、団派もこれに協力し、習近平から権力を削ごうとしている可能性もあります。

最近、南シナ海をはじめとして習近平の外交は次々と失敗しており、経済も停滞すればその責任は逃れられません。長老や党のライバルにとって、こうした失政は習近平に押し付けたほうが好都合です。いま習近平にとって代わったところで、中国混乱の責任を取らされるだけだからです。

問題は、来年秋の党大会で、習近平が人事の主導権を握れるかどうかにかかっています。現在の政治局常務委員は、その多くが江沢民派によって占められていますが、来年の党大会でその多くが引退、それに代わって胡錦濤率いる団派の勢力が増すと思われています。

これに対して習近平派は栗戦書くらいしか入ることができず、党内のパワーバランスが団派優位に変化すると見込まれています。習近平としてはこれを静観できないでしょう。だから団派の李克強首相から経済の決定権を奪い自らが決定するシステムを作り上げてきたわけです。

李克強首相が今年の全人代で何度も読み違えをしたり、習近平主席とまったく目を合わせないといった態度にも、両者の対決姿勢が出ていました。とはいえ、中国の権力闘争はいつ何があるのかまったく先の読めないドラマのようです。敵と味方がいつの間にか変わってしまうこともよくあり、騙し合い、化かし合いの世界です。

習近平については、中国人はかなり前から草包」(バカと呼んでおり、原稿がないとスピーチもできず、しかも読み違いが多いことで有名です。前回のメルマガでも、G20での読み違えが中国国内で嘲笑されたことはお伝えしました。

国内外で笑いものに。中国がG20サミットで大恥をかいた3つの事件

一方で、胡錦濤は心臓が悪いため体力不足、江沢民は高齢のうえに膀胱がんを患っているとされていて、いつどうなるかわかりません。

仮に権力闘争の行方がどうであろうと、中国が今後没落する宿命は避けられません。そのため国富を私富に変えて、中国から脱走する「裸官」の活動はますます活発になっていくでしょう。かつて蒋介石を頭とする4大家族も、国共内戦後に大陸から北米やラテンアメリカへと大金を持ち逃げしました。

これは中国人の「さだめ」であり、中国共産党だけが悪いといった話ではありません。「無官不貪」(汚職しない役人はいない)というのは中国5,000年の伝統文化であり、そのために王朝崩壊と易姓革命を繰り返してきました。

習政権、今度は中国全人代、代表45人の資格を剥奪 買収を認定し「当選無効」 極めて異例な事態に

習近平政権は9月13日、国会議員に相当する遼寧省選出の代表45人を、選挙で金品による買収を行ったとして当選を無効とする決定を下しました。遼寧省は李克強がかつてトップだった省であり、団派への圧力とも報じられています。

権力闘争の激化と相次ぐ汚職摘発は、すでに中国が王朝崩壊期に入ったことを意味しています。「皇帝」習近平に対する民衆の嘲笑と、宮廷内での権力争い、汚職摘発と粛清の乱発というのは、つねに中華王朝の末期崩壊前夜に見られた現象なのです。

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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