MAG2 NEWS MENU

なぜ日本人ジャーナリスト常岡氏はイラクで拘束されたのか?

日本人ジャーナリストの常岡浩介氏が、イラク北部のモスル周辺でクルド人が自治するクルディスタン地域政府(KRG)に拘束されたというニュースが報道されました。メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の著者で、イスラム世界の情勢にも精通する作家の冷泉彰彦さんは「なぜ今回、常岡氏が拘束されたのか?」を考察し、イラクやアメリカまたは日本から「手が回った」可能性を指摘。常岡氏が今回取材していた、イラク軍がモスルの街をISISから奪還する「モスル奪還作戦」について、多角的な報道ができないことは日本にとってマイナスだと持論を展開しています。

イラク北部での日本人ジャーナリスト拘束

報道によれば、常岡浩介氏と見られる日本人ジャーナリストが、イラク北部でクルディスタン地域政府に拘束されたようです。情報が限られる中ですが、この問題の周辺にある論点を指摘しておきたいと思います。

仮にこれが常岡氏であるのであれば、モスル奪還作戦に関して周辺地域での取材を行っていたようです。このモスル奪還作戦に関しては、大統領選の争点にもなっており、今後の中東、そして国際情勢に影響を与える重要な作戦です。ですから、日本人による現地に近い地点からの生の情報が少なくなるのは困ります。

常岡氏に関しては、ISISに人脈があるというのは周知の事実ですが、そのためにイラク当局(もしくはアメリカ)に睨まれての拘束、あるいは日本の当局が「面倒を起こしてもらっては困る」という動機からイラクに依頼した結果の拘束という可能性があるわけです。

そのような理解を受ける背景には、「ISIS志願者を紹介しようとした」的な言動が過去にあったことがあるわけで、以降そのような理解をされないために、自分はISISとハッキリ手を切るということを以前にも増してハッキリ声明するほうが良いと思います。

とにかく、安倍政権は2015年初頭に中東を訪問して、シリアやISISに関連して発生する難民支援に関しては、国策として尽力するということを内外に発表しているわけです。その国策がどのようなニーズを持っているのか、また困難に直面しているのかということを見極めるためには、このモスル奪還作戦をめぐる諸相の多角的な報道が何としても必要です。

今回の拘束の背景に何があるのかは分かりませんが、これだけ国際的に重要で、また日本にとっても重要な問題に関して「日本人による状況報告」ができにくい状況を作るのは良くないと思います。

安倍首相の難民支援政策は、イスラエルで発表したのは効果を減じたと思いますが、基本的に悪いことではないのですから、それを活かすためにも、この地域の動静に関して必要な報道を通じて関心を喚起していくことは必要と思います。

image by: 常岡浩介氏Twitter

 

冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋

著者/冷泉彰彦

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。

<<無料サンプルはこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け