あの人は感じがいい、あの人は取っ付きにくい…など、相手に対して抱いた第一印象と、実際に深く付き合ってみてからのそれが180度といっていい程変わることって、そう珍しくありませんよね。無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』では、まだよく知らない人を「こういう人間だ」と決めつけるのではなく一呼吸置いてみるという「エポケー」という手法が紹介されています。こうすることで相手を「正しく」理解する度合いが全く違ってくるそうですよ。
ちょっと待ってみる
最近のテレビニュースや新聞報道などを見ていて感じるのですが、以前に比べて、誰かの発言の一言だけをことさらに取り上げて大騒ぎになっていることが多いように思います。
ところが、後で前後の文脈を踏まえて発言要旨をしっかり捉え直すと、全く正反対の印象を受けることがあったり、問題になるようなことがなかったりします。後で思うわけです。あの大騒ぎは何だったのだろう…と。
センセーショナルな話題、事件であればあるほど、最初の印象、第一報の段階で私達はかなり強烈なイメージを受けてしまいます。これはテレビや新聞などメディアからの受信だけではなく、日常生活の人と人との付き合いの中でも同様です。
よく見知った仲の間であれば、少々言葉足らずであっても、前後の関係を阿吽の呼吸で読み取って、誤解なく分かり合えることもあります。しかし、まだよく知らない相手との対話の場合、ちょっとした言葉の行き違いで「なんだこの人は?」と思ってしまうこともあります。
その時に、すぐに「この人とは合わない」と判断してしまうのではなく、ちょっと待ってみる。ちょっと待って、判断のタイミングを先延ばしにしてみるのが一つのあり方です。
こういう態度をエポケーと言います。判断保留、判断停止などと訳がつけられることもあります。もともとは現象学の分野でフッサールが「括弧に入れる」という意味で使ったものですが、異文化交流の現場でしばしば使われます。
つまり異文化を背景に持つ人との交流では、突拍子もないことや、すぐには理解できないことがよく起こります。その時に、即座に「あぁ、もう受け入れられない」「仲良くなんてできないな」と決めてしまわずに、ちょっと待つ。その判断は停止。もう少し様子を見て、なぜそんなことが起こるのか、なぜそんな考えをもっているのか、その背景は何だろうか…ということを、落ち着いて考えてみる姿勢を持ちましょう…ということです。
これは異文化交流の現場だけでなく、日常生活でも、あるいは最初に挙げた、報道などで得られた情報についても、同様の姿勢が結構有効ではないかと感じます。
すぐに「けしからん!」と思ってプリプリ怒ってしまうと、何だか怒り損です。まず「なんでそんなことが起こったんだ?」「なぜそんなひどい発言が出たのだ? どんな文脈で? どんなやり取りの中で?」とさらなる情報を求める。
エポケーは、相手をよく理解するための姿勢でもあると同時に、うかつに相手の印象操作に惑わされずに、正しく相手の意図を理解するためにも有効な姿勢だと思います。
カッ! となる前に、ちょっと待ってみてはいかがでしょうか。
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