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【書評】高城剛が提言、カジノ・IRで日本の未来はどう変わるのか?

連日報道される「カジノ法案」「IR推進法案」に関するニュース。日本にカジノを含む統合リゾート施設が誕生する日もそう遠くないようです。無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』では、各国のIR・カジノ事情に精通する高城剛氏の著書を紹介、どうすれば日本は世界の富裕層のマネーを獲得できるのか、そのヒントを探ります。

カジノとIR。日本の未来を決めるのはどっちだっ!?
高城剛・著 集英社

こんにちは、土井英司です。

本日ご紹介する一冊は、最近話題の「カジノIR=統合型リゾート」に関する一冊。

ラスベガスの「ザ・ミラージュ」が定宿のいわゆる「ハイローラー」(カジノで大きな金額を落とす人)だったという高城剛さんが、日本の観光ビジネスの未来を担う「カジノ」と「IR」について、その違いを述べ、世界の最先端事例をまとめています。

短期間で観光収入を3倍にシンガポールの事例に始まり、「マニラ急成長の秘密と、マカオ衰退の理由」、「世界一のカジノ国フランス」、「近年のニューヨーク州のラスベガス化戦略」といったテーマで議論が展開され、最後は日本への提言で締められています。

「21世紀最大の産業は観光産業である」というのは、随分前から言われていることですが、訪日客数が2,000万人を超えて、いよいよその意味が、理解され始めてきたと思います。

外国人観光客の増加は、一時的とは言え人口増と実質的には同じ。ただ、需要は永住する日本人とは著しく異なります。

どうすれば、訪日外国人を顧客に変えられるのか。IRの開発が本格化すると、どんなチャンスがあり得るのか。

そんなことを考えながら読むと、ヒントが見つかると思います。

さっそく、チェックしてみましょう。

世界中の国家が観光収入を大きな財源と見るようになったこの十数年、各国で様々なカジノやIRが展開されているが、ジリ貧の衰退に向かっているのがカジノであり、国の経済を支えるほどに成長しているのがIRなのである

アデルソンによる「カジノ」と違う新しいアイデアは、のちに「IR」(統合型リゾート)と呼ばれることになり、日本のソフトバンクから得た資金で大きく開花することになる。2007年にマカオで「ベネツィアン・マカオ」を、2010年にシンガポールで「マリーナベイ・サンズ」をオープンしたアデルソンは、IR事業の生みの親であると同時に、最も成功したIR事業家となった

シンガポール国民には1日100シンガポールドルの入場料を賦課し、もしも国民がギャンブル依存症になった場合には、本人だけでなくその家族全員がカジノ施設内に入場できないなどの厳しい規制もつくっている

マリーナ・ベイ・サンズの集客において、最も大きな役割を果たしているのは、大型MICE施設だろう。ここにはアジア最大級の国際会議場、国際展示場がある。延べ床面積12万平方メートル、東京ドーム2.6個分の広さで、その収容人数は4万5,000人以上。ここの特徴は、長年コンベンションセンターを運営してきたサンズならではの、「使い勝手のよさ」にある

IR施設が他にはない魅力を持つのは、他では考えられない「斬新な店」が登場することにある。一店で見れば赤字でも、IRすべてで見れば問題ないことが、まさに「統合型」の魅力に他ならない

3,000万人のうち、2,700万人は中国・香港からやってくる(中略)「チャイナ・マネー」が流れ込んだ場所は一体どこか。そう、マカオのカジノだ。そしてこれこそが、外国資本への市場開放からわずか4年でマカオが世界トップのカジノ大国となった背景であり、やがて陰りを見せる原因ともなるのである

冷静さを保ち、薄く、薄く勝っていく人間が最終的には勝つのだろうし、これは人生におけるあらゆる教訓と同じだろう

スイス金融大手クレディ・スイスが、「フィリピンのカジノ産業の市場規模は2018年までに56億ドル(2016年10月現在、約5,600億円)を超え、シンガポールを上回る」と予想(2013年3月22日時点)

現在でもフランスが海外旅行者数受け入れナンバーワンであり続ける背景には、2009年の法改正で設立された「フランス観光開発機構(アトゥー・フランス)」の多様な戦略展開がある(中略)参加には国、地上自治体、観光業者やフランスの経済セクターによる1,300の会員が連携し、効率的に国内外の観光客へフランスの魅力をアピールしている。ミシュランガイドのようなレストランの「格付け」は有名だが、ホテル、小さな村々の景勝まで格付けし、ツアーを企画し、国内の隅々にまで観光客を送り込めるようにした

世界が成長し、グローバル化するということは、世界中で生まれた富裕層がエンターテインメントを求めて動き回る、ということでもあります。

われわれ日本人が雑誌やネットの記事を見て、飲食店に移動する感覚で、富裕層がジェット機に乗ってカジノやIR施設を訪れる。そんな日がもう間近に来ているということです。

富裕層のマネーをどこが獲得するのか、どうすれば獲得できるのか。本書は、そのヒントとなり得る一冊です。

個人的には、高城氏のギャンブル論が一番刺さりました(笑)。ぜひチェックしてみてください。

image by: Shutterstock

 

毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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