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EU崩壊?キリスト教が危機に?日本は?ド~なる、2017年の世界

イギリスの国民投票でEU離脱派が「まさか」の勝利、そして当初はイロモノ候補として扱われていたドナルド・トランプ氏が、アメリカ大統領選挙でヒラリー氏を破り、「まさか」の勝利と、2016年は「まさか」な出来事が多い一年でした。さて、新たに迎えた2017年はどんな年になるのでしょうか? 無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で世界情勢に詳しい北野幸伯さんが、これまでの流れを振り返りながら占います。

2017年はどうなる?~グローバル化からナショナリズムへ

2017年はどうなるの?」という話をしましょう。

そんなことは、わかりません。わかりませんが、「二つの時流」を理解することで、流れを把握することはできます。今日は、「二つの時流」の一つ目についてお話します。それは、「グローバリズムからナショナリズムへ」です。

グローバリズムの興隆

第2次大戦が終わってから1970年代末まで、西側世界では「ケインズ」が主流でした。皆さんご存知のように、ケインズは、「財政支出を増やすことで、有効需要(消費と投資)を増やす」、それで、「ケインズ=公共事業」というイメージになっています。ルーズベルトのアメリカはケインズで成功した。アメリカで成功したので、(西側)世界に広がったのです。

しかし、アメリカ経済は1970年代、ボロボロになっていた。そこで、1981年大統領に就任したレーガンは、「新自由主義」に舵を切りました。また、イギリス経済も1970年代ボロボロで、IMFから支援を受けていた。1979年首相に就任したサッチャーさんも、同じく「新自由主義」的政策を断行しました。レーガンとサッチャーの政策に関しては、いろいろ議論があります。しかし世界的には、「この二人で、ケインズは廃れ新自由主義が主流になった」といわれています。

90年代になると、世界はさらに大きく変わります。91年12月、ソ連が崩壊した。これで

という世界的対立構造が壊れた。世界は一つになり、「グローバル化が進みました(当時、欧米エリートの「中国観」は、「資本主義と民主主義に移行している過程の国」だった)。

さらに90年代、「IT革命」が進展し、世界はますます一つになっていきます。

グローバリズムのダークサイド

グローバリズム」とは何でしょうか? いろいろな意味で使われますが、私は、「金が自由に動き回れるようになること」という意味で使っています。

これを聞いて「いいじゃないか!?」と思う人も多いでしょう。しかし、「ダークサイド」も明らかにあります。たとえば、「お金の移動」が自由になった。それで、世界の大企業、大富豪は、普通にオフショアを使っています。「パナマ文書」は記憶に新しいですね。そして、大企業大富豪は、「合法的に税金を払わなくていい」。

さらに「人の移動」が自由になったことで、貧しい国から豊かな国(たとえば欧米)に、人が大挙して移ってきている。いわゆる「労働移民」です。結果、労働市場に毎年大量の「労働力」が供給され、元から住んでいる人たちの給料が下がっていく

大富豪はオフショアを利用し、税金を払わず、ますます豊かになっていく。貧しい人、中産階級は、労働移民の大量流入で、ますます貧しくなっていく。結果、現出したのは、非常にいびつな世界でした。以下の記事、熟読してください。

CNN.co.jp2016年1月18日から。

オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイスの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015年版の年次報告書を発表した。それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7,600億ドル(約206兆円)だった。

何と、「超富豪62人の資産は下から36億人分の資産と同じ」だそうです。

また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を上回る水準にあるという。
(同前)

上位1%の資産は残り99%の資産額より多い!そして、同報告書によると、格差はますます拡大し続けています。

富裕層と貧困層の所得格差も拡大を続けている。1日あたりの生活費が1.90ドル未満という極貧ライン以下の生活を送る下位20%の所得は1988年から2011年ま
でほとんど動きがなかったのに対し、上位10%の所得は46%も増加した。
(同前)

世界には、1日当たり1.9ドル(1ドル100円換算で190円)、つまり月6,000円以下で暮らしている人が20%もいる。世界の人口が73億人とすると、14億6,000万人もいる。

このような世界の現状は、陰謀論者でなくても、「おかしい」と思うでしょう。

2015年、「難民危機」と「IS問題」が、世界を変えた

このように「グローバリズムへの不満」は、マグマのように溜まっていました。

アメリカで2011年に起こった「ウォール街を占拠せよ!」運動。スローガンは、「俺たちは99%だ!」。つまりアメリカでは、「トップ1%はますます豊かになっているが、残り99%は、ますます貧しくなっている」と理解している人たちがいた。

そんな「グローバリズムへの不満」を爆発させる二つの出来事が、2015年に起こりました。一つは、「欧州難民危機」です。この年、内戦がつづいていたシリア、イラク、アフガニスタン、リビアなどから欧州への難民が殺到した。ドイツだけでも、100万人を超える難民がやってきた。

このことは、元から欧州に住んでいた人に、二つの恐怖を与えました。一つ目は、政府は、大量難民に衣食住を与える。しかし、その政府にお金を払うのは、俺たちだ。つまり、大量難民を養うために税金が跳ね上がるのではないか??? 二つ目は、大量難民が就職すれば、俺たちの給料はますます下がるのではないか? ひょっとしたら職を失うのではないか?

さらに、欧州のみならずアメリカの民を恐怖させたこと。それは、「ISテロ」が頻発したこと。「難民の中に、ISメンバーがたくさん紛れ込んでいる」。つまり、EUは、難民を受け入れることで、ISメンバーも一緒に入れてしまった

元から溜まっていたグローバリズムへの不満。2015年の「大量難民問題ISテロ問題」で、爆発寸前になっていました。

2016年に起こった、二つの歴史的大事件

そして2016年、世界では「二つの大事件」が起こりました。

一つは、イギリスの国民投票でEU離脱派が勝利したこと(2016年6月23日)。「移民問題が主因の一つ」と伝えられました。そして、「反移民意識」を大いに強めたのが、「大量難民」と「IS問題」だったのです。

二つ目は、トランプがアメリカ大統領選で勝利したこと。今回の選挙では、「反グローバル化」を主張する二人の有力候補がいました。一人は、民主党でヒラリーと最後まで戦った社会主義者サンダーズさん。もう一人は、トランプです。

一方ヒラリーは、90年代から「ファーストレディー」「上院議員」「国務長官」と、政権の中枢にいつづけた。つまり、「グローバル化を推進した勢力」「エリートの味方」と思われていた。さらに、リベラルで、ISテロに対して強い措置をとれそうにない。そして、「メール問題」「クリントン財団」にまつわる様々な疑惑。

結局、勝利したのは、「アメリカ・ファーストのナショナリストトランプでした。

2017年は、EU崩壊の始まりか?

昔からの読者さんはご存知ですが、RPEは10年ぐらい前から、「EUは衰退期国家の集まり崩壊に向かう運命」と書いてきました。さらに、「難民危機」が起こる前に出版された「クリムリン・メソッド」には、「移民で欧州キリスト教文明は滅びる」と書いてあります。

去年、イギリスのEU離脱が決まったことで、EUに大きな穴があきました。何といっても「EU内2位の経済大国イギリスが、抜けるのですから。

問題は、今年も「EU崩壊のプロセスが進展するか?」です。具体的なプロセスは、「選挙」を通して進みます。欧州では2017年、どんな選挙があるのでしょうか?

世界の関心は、ここに集まっています。「EU離脱の賛否を問う国民投票を実施せよ!」と主張する「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首が勝つ可能性がある。もし彼女が勝てば、「フランスEU離脱」の可能性が高まります。フランスは、ドイツと共にEUを作ってきた中心国。この国が抜ければ、EUは事実上崩壊でしょう。

難民問題でメルケルさんと、「キリスト教民主同盟」(CDU)の支持率が下がっています。この選挙で大敗すれば、メルケルさん失脚の可能性もあります。

とりあえず、注目したいのは、フランス大統領選挙ですね。ルペンさんが勝つか、もちろん断言はできませんが。「グローバリズムからナショナリズムへ」という現在の強力な「時流」を見ると、チャンスはありそうです。彼女が勝てば、「EU解体」が現実味を帯び、ユーロは暴落することでしょう。

image by: 1000 Words / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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