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海の底に広がる「美術館」が不気味なほど神秘的

みなさんは美術館に行くのは好きですか? 展示会ももちろんのことですが、美術館という空間を訪れること自体が目的という方も多いのではないでしょうか。美術館の魅力は、展示作品だけではなく、その雰囲気も大きいですよね。しばし喧騒から離れ、静閑な空間でアートに触れる、ということに醍醐味があるのではないでしょうか。今回スペインに現れた美術館が位置するのは、なんと海底!製作年月は2年間、ヨーロッパ発の海底ミュージアムです。一体どんな世界が展開されているのでしょうか?

地上とは一味もふた味も違う海底のミュージアムに世界が注目

海底ミュージアムがあるのは、スペインのカナリア諸島にある”ランサローテ島”。ランサローテ島と言ってもピンとこないかもしれませんが、Jリーグ元鹿島アントラーズの柴崎岳が移籍して話題になったテネリフェ島の近くの島です。

3年以上の製作期間を経て完成した『Museo Atlantico』と呼ばれるその海底ミュージアムは、2016年3月より一般公開されていますが、実際に鑑賞することができるのは、シュノーケルをつけたダイバーや海に住む生物たちだけ

国際的なアーティストJason deCaires Taylor氏が手がけた実に300体以上もの彫刻が展示” されているのは、深さ12〜15メートルほどの海中なのです。

Taylor氏が手がけた彫刻

水中の彫刻には躍動感がある

「世界への扉」をコンセプトにしていると語るTaylor氏は、メキシコ・カンクンにある海底美術館「MUSA」をはじめ、これまでに同様のミュージアムを、バハマや西インド諸島内にあるアンティル諸島に展開しています。

環境彫刻家としても知られるTaylor氏ですが、もともとこのプロジェクトを始めたのは海の美しさを守るため。

ダイビングスポットで知られるリゾートでは、毎年たくさんのダイバーが潜るため、サンゴ礁が傷ついてしまったり、美しい海が失われつつありました。そこで海の環境とサンゴ礁を守るために、ダイビングスポットから離れたエリアに海底の美術館を設置することで、一箇所に分散させないようにするために始めたのがこのプロジェクトの大きな目的のひとつだそうです。

ブランコに乗った彫刻


新たなダイビングスポットが生まれたことによって、海の美しさが守れますね!

海底に沈める作業は大掛かり!

今回行った取材によると、アートを学ぶ傍ら、ダイビングのインストラクターでもあった製作者Taylor氏は、自身の大好きなもの、つまり「海」と「アート」を統合させたプロジェクトを実現したかったのだそうです。

水中に沈めた作品たちは幻想的

3年以上の年月をかけ、多くの人々が関わる一大プロジェクトであるゆえ、実現には効率的なマネジメントを行ったり、様々な協力体制が必要だと言います。

特に巨大な作品についてはインフラ面を含め、その取り扱いに大変な神経を要するそうです。

なにせ労力を注ぎ込んで製作した作品を、未知なる海底へ沈める訳ですから、そこには想像を絶する苦労が伴うのでしょうね。

 

船の上から、クレーンで降ろしていく様子

クレーンを使って、作品を海中に沈めていく

 

ダイバーも参戦

ダイバーが一体ごとに設置していく様子

 

環境に優しいコンクリートを使用して造られる彼の作品は、私たち人間の日常の一コマを表現しながらも、海底に潜む問題に目を向けそれと向き合うことの脅威について、人々にもっと知ってほしいという強い思いがあるそうです。

酸素ボンベなしでは観覧できない海底のミュージアム

きっと同じ作品でも、地上で観るものとは全く別物のように感じられそうです。

海の生物たちと一緒に作品の数々を眺め、一体何を感じるのか、一度体感してみたいものですね。

 

海底ミュージアムが出来上がっていく様子はこちらの動画でもチェックしてみてください!

 

Museo Atlantico 公式サイト

 

画像提供:Museo Atlantico

取材・文/貞賀 三奈美

 

 

 

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