MAG2 NEWS MENU

【森友学園】なぜメディアは「例外」の理由を的確に報じないのか?

いま各種メディアを騒がせている「森友学園」の国有地払い下げ問題ですが、メルマガ 『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者で、ジャーナリストの引地達也さんは、安倍総理の感情的な答弁は意味をなさず、行政の説明責任も不十分であるとしながらも、情報不足で「事実」をきちんと報道できていないメディアにも重い責任があると指摘しています。

森友学園にジャーナリズムと行政手続きの原則を照らし合わせる

大阪府豊中市の学校法人「森友学園問題に関する安倍晋三首相、財務省担当者、野党議員の質問と答弁、そして大手メディアや週刊誌による「新事実」の報道が展開されている。国の制度や手続きの瑕疵があるならば、是正にしなければならず、ルールに則り社会生活を営む私たちにとって、国有地の売却や学校の認可の手続きは最低限の約束事だから、関係者には淡々と事実を披歴してほしい。だから、安倍首相の答弁が感情的になるのは時間の無駄でしかない。知りたいのは感情ではなく、真実である。そして福祉行政の枠組みの中で、支援事業を営む者の視点で見れば、手続きの瑕疵や例外が認められない中で運営することの難しさに直面していることから、今回のような「例外がなぜ生まれているのか、不思議でならない。その不思議に対しての答えはまだ得ていないし、ジャーナリズムも真実に近づくことの気概がまだ足らないような気がする。

まず福祉行政の一環として事業を行う立場は、その事業が公的な認可を伴う限り、関連の法律の遵守はもちろん、税金の拠出がつきまとうから、行政の窓口からは常に「税金をねん出する」ことへの意識付けが行われる。行政が監督にある中での事業は、すべての金銭に法的な名目がある。行政に関する土地購入費がディスカウントされることは考えられず減額には名称があるはずだその名称すら出てこない交渉とは何なのだろう。厳しい監督の下で事業を行ったり、または法律の遵守を厳しく監査されたりする中にあって、役所は絶対的な権力を持つ。人を支援する活動を最前線で行うことの計り知れないエネルギーなどお構いなしである。役所対応にも多大なエネルギーを費やすのは、法律を遵守しようという当たり前の労を私たちは仕事の基本と考えるからである。それが、簡単に覆されるならば、日々遵守に汗を流す人を侮辱することになる。だから、「不透明な土地の売却額と交渉に関する疑惑」は、働く人の尊厳、特に自治体などと連携して行う福祉事業などの従事者にとっての侮辱的な出来事と映ってしまう。

さて今回の事件をメディアは的確に報じているのだろうか、という点。米国の著名なジャーナリストであるビル・コヴァッチとトム・ローゼンスティールによる「ジャーナリズムの原則」で示されたガイドラインから考えたい。これは「ジャーナリズムが大衆の利益に役立っておらず損なっている」「大衆はジャーナリストに対する不信感と嫌悪が渦巻いている」現状を改善しようと1997年6月に始まった「危惧するジャーナリスト委員会」の議論や調査の結果、ジャーナリズムの目的は人びとが自由であり自ら統治するうえで必要な情報を提供すること」との結論を導き出した。さらにソーシャルメディアの発展により、2010年に二人は「Blur」を発表した。その中でジャーナリズムの「自問自答の3点」として、「1. 私はこの話題を誰か他の人に説明できるのか。自分の子ども、親、友人でも、とにかくその問題に注意を払っていない人に」「2. もし説明できないとすれば、私には説明するために、どのような情報が必要か。あるいは私が理解していないこととは何なのか」「3. 私はどこで、その情報を手に入れることができるのか」を挙げた。さらに説明の具体的なイメージとして「もし自分がこれを母親に手紙で説明するとしたら何と言えばいいのか」 を合わせると考えやすい。

例えば、与党寄りの経団連の榊原定征会長は記者会見で「しっかりと国民が納得できるように説明してほしい」と述べ、売却価格について「なぜああいう価格の譲渡になったのか開示してほしい」と具体的な政府への対応を求めたが、これは問題が一般に「説明されていない」ことを意味する。それを政府の責任や政府が説明しようとしないことを嘆くのは簡単だ。しかし、納得のいく説明の基礎となる事実を報道は示せていないのが、結局納得いかないことにつながっているのだ。説明とは「なぜ」の理由が明確になっていることで納得につながるのだが、説明しても納得までに至らないのは、情報の不足である。ケアメディアの視点からすれば、手続の瑕疵により、ケアという関わり合いが分断化されたり、ヒエラルキーを作り出すことに加担することになる(この説明はじっくりと後日行いたい)。ケアするメディア、そしてケアするコミュニケーションは、水平型のコミュニケーションが基本である。これが透明性と公正性を担保するからである。ゆえに森友問題の情報の開示はケアする社会には重要なのである。

image by: GOOGLE MAPS(yamane niudou)

 

メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』より一部抜粋

著者/引地達也
記者として、事業家として、社会活動家として、国内外の現場を歩いてきた視点で、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを目指して。
<<続きはメルマガで!ご登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け