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日本企業の世界進出は、素晴らしき日本文化を拡散するための先兵だ

中東の紛争、中国の暴走、世界の警察を止めた米国…、世界情勢はまさに混沌とした状況を迎えています。世界中が争うことを止めない現在の世界情勢について、メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、このままでは「地球上の人類が死に至る」と警鐘を鳴らしています。

日本文明の世界への拡散

日本の文明的な価値は、仏教と神道、それに儒教が持つそれぞれの思想が融合していることである。特に仏教で仕事を無想の境地への手段としたことで、それにより問題解決能力が高まることである。これを世界に拡散させる必要がある。それを検討しよう。

日本の精神文明が世界に出る時代に

世界は、現在、混乱の時代になってきたようである。今まで世界を引っ張ってきた米国が、その立場を変えて米国第一主義となり、普遍的な価値観で世界を指導することを放棄するようである。

普遍的な価値観が放棄されると、世界的な弱肉強食の時代になるし、各国が自己主張をして戦争を起こすことになり、世界的な混乱が予想できる。北朝鮮のように生き残りのために核開発やミサイル開発が必要ということになる。

まさに仏教の言う末法の時代になり、キリスト教の黙示録の時代になってきたことを意味している。

もし、科学技術を活用して戦争すると地球全体が壊れてしまうために、地球上の全人類が死に至ることになり、次善の策として、個々の主張を調和することが大切であり、そのような世界を作るしかないように感じる。

よって、平和を維持するためには、皆が問題解決能力を上げて、自己の利益だけではなく、他者の意見も聞き、調和点を見つけることが必要になってきている。

自己主張という低次元での戦争による問題解決から、全体の調和が必要という思想は、神道の神々の調和から日本人は大昔から知っていることである。負けた神も陪神として祭る。敗者の主張も取り入れて、敗者を取り込むことを積極的にして、調和を取る努力をしている。負けた出雲の神をまつる巨大な出雲大社もその例である。

また、仏教では、自己を無想の境地にする状態を作り問題解決案を見つける手段とした。そして、ヒンズー教や仏教の無想の境地への手段はアジアだけの特性である。

世界の規範として、ルールが必要であるが、そのルールが儒教である。ルールは欧米的なルールであろうと同じであるが、儒教はルールの優先順位を決められる。

そして、忠と孝の優先順位が中国と日本では逆転している。日本は家族より会社の方が重要で、親の死に目にあえずに仕事をしていたことが美徳として物語になるが、中国では閨閥社会であり、ありえないことである。

というように、現在、世界の問題を解決する方法論としては、各国が、三教を融合した日本の精神文明を取り入れて行く必要になっている。しかし、三教が完全融合したために、日本人でも何が仏教由来で、何が神道由来や儒教由来かが分からない。

それをアニメや和食などの文化にして世界に発信したことで、世界の若者たちが、日本の精神文明や文化に期待をしているように感じる。

しかし、日本の精神文明を世界に拡散するには、今までの方法だけでは足りない。根本的な日本文明の拡散が必要になっている。

精神文明のレベル

しかし、精神文明には、そのレベルがある。心のありようが精神文明のレベルを決めている。今までは、精神文明社会ではなく、科学技術文明の時代であったことで、精神文明のレベルを意識しないで来れたが、今後は美意識や無想の境地など精神文明のレベルが問題になる。

すると、まず、美意識より人間という生物の食べることなどの基本機能が優先する社会があり、発展途上国がそれに当たる。レベル0とする。衣食住を整備する社会の段階である。

次に、基本機能が満足すると、豪華さやきらびやかさなどの刺激的な美意識が優先する社会になる。新興国がそれに当たる。レベル1とする。

次に、個々の豪華さではなく、町全体の統一感や自分の趣味全体の統一感などの美意識が出てくる社会になる。欧米諸国がそれに当たるが、デザインの時代ともいえる。この社会をレベル2とする。

次に、簡素な美を求めだす。わびさびの世界であり、この世界に達したのは、鎌倉時代以降の日本と中国の唐・宋時代しかない。この社会をレベル3とする。

室町時代に画僧の雪舟が遣明使として中国の明に渡るが、内検の心を持った水墨画がなく、がっかりして、唐や宋時代の水墨画を写生したという。明時代には簡素な美はなくなっていたことを示している。

逆に、雪舟は中国でわびさびの絵画を作成したが、それを現代中国が内検の心の作として見直している。内検の心とわびさびはほとんど同一であるが、雪舟の絵画は、日本でもわびさびの絵画の代表的な存在である。

簡素な美とは、人間が美的な刺激ではなく、静的な内面を見つめることで出てくるが、この意識がないと自己の無想の境地にはなれない。精神的な安らぎを求めると、この段階になる。

ということで、無想の境地を実現すると、その派生効果で簡素な美を求めることになる。そして、無想の境地を美術にしたのが、禅の美術であり、それを欧米も受け入れ始めたので、このレベル3社会への移行期にあるような気がする。

伊万里焼と鍋島焼が良い例である。同じ窯元が欧州への貿易品としては、赤や金を配した豪華な伊万里焼を造り、幕府や大名への献上品としては鍋島焼という青絵の簡素な陶器になる。この時代の好みがわかるが、日本はすでに簡素な美の時代になっていたことがわかる。

日本企業の進出

日本企業は宗教団体のようであると、過去記事「日本企業は日本教の宗派だ」で述べたが、仕事は無想の境地への手段であることを世界に伝達し、仕事のルールが規範であり、他者への思いやりが仕事の効率化につながることを、QC活動で自分が発見するということで、実現している。また「日本の時代が来る」で、ハーバードで教える日本の価値で述べたように、相互信頼や中庸の価値を見出すことである。

というように、日本企業は日本の精神文明を背負っているので、その企業が進出すると、その日本文明の価値も持っていくことになる。

しかし、日本企業は、海外進出で多くの失敗をしている。東芝もウェスチング・ハウスを買収したが、そこの失敗で倒産の憂き目にあっているし、キリンのブラジル企業でも失敗したように、多くの企業がアジア以外での海外進出で失敗している。

しかし、日本企業が日本文明を世界に拡散する先兵である。個人では小さな事しかできないので、影響も弱い。日本企業はアジアでは成功したが、それをアジア以外に広げることで日本文明をさらに広げる必要になっている。

東南アジアは、仏教国が多く、上座仏教も無想で自分を高めることが宗教として行渡っている。このため、日本文明の三教の内、仏教がすでに入っていることで、調和と規範を教えることでよかったために、成功例が多いのである。

しかし、中東や欧米、アフリカなどは、そのような自己を無想にするという概念すらないこの地域で日本企業が成功するには、大きな教育が必要になる。

このため、アジアでは成功した日本企業もアジア以外では成功できなかった。成功するためには、精神文明を捨てて、欧米文明に準拠することが今までは行ってきたが、それでは大きな成功ができない。

東南アジアでも時間を守るという基本的な規範を教育機関に取り入れてもらうのに、20年以上かかったと海外に進出した当初のある大手企業の社長が言っていた。アジアは規範ルールが重要であったが、欧米やアフリカでは、仕事で無想の境地を味わうことをどう教えるかが重要なことになっている。

欧米社会でも、マインドフルネスという無想の境地への初歩段階を心理学的な療法として推奨しているし、これが精神的に有効としているが、無想の境地をどう取り入れるかが、今問われていることである。

そして、全人類が無想の境地を手に入れて、各地の紛争の解決を自己の利益だけではなく、他者の利益も考え調和することが重要と思ってほしい。

しかし、間に合わないかもしれない。中東大戦争が起こりかけないと見ている。自己のことしか考えない偏狭な人類が多すぎることによる。

また、アジアでも中国の国内紛争で、外敵を作ることが必要になり、戦争が起きる可能性がある。中国国内で自己の利益だけではなく、他者の利益も考えてほしいものである。それがアジアから戦争をなくす方法である。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock

 

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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