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北朝鮮への攻撃で韓国も焦土に?トランプが動けない深刻な理由

アメリカが中東問題に手を焼いているのをいいことに、着々とミサイル・核開発を続けていた北朝鮮。気付いた時には、すでに「米国自身の脅威」へと変貌を遂げていました。日本にとって、そして世界にとっても大きなリスクを伴う「朝鮮戦争」を回避する方法は残されているのでしょうか? 無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で世界情勢に詳しい北野幸伯さんが、緊張状態にあるアメリカと北朝鮮の今後を占います。

韓国が焦土になっても…アメリカの北朝鮮攻撃、究極の選択とは?

アメリカ海軍は4月8日、空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海に向かわせると発表しました。

<米海軍>朝鮮半島近海へ航行中「存在感を強化」

毎日新聞 4/10(月)10:35配信

 

【ワシントン高本耕太】米海軍は8日、空母「カール・ビンソン」の空母打撃群が、朝鮮半島近海に向け西太平洋上を航行中と発表した。核・ミサイル開発を繰り返す北朝鮮へのけん制が狙いとみられる。米政府当局者はロイター通信に対し、「米軍の存在感を強化する必要がある」と語った。

 

空母打撃群は空母に加えて複数の艦載戦闘機やミサイル駆逐艦、ミサイル巡洋艦で構成される戦闘艦隊。カール・ビンソン打撃群は、8日に寄港地シンガポールをオーストラリアに向けて出航したが、ハリス太平洋軍司令官の指示を受けて反転し、北上を始めた。

皆さんご存知のように、これに先立ちアメリカは、シリアの空軍基地をミサイル攻撃しています。トランプは、「口だけではないことを証明した。さらに、このミサイル攻撃は、習近平との会談中に行われた。トランプは、夕食の最中にシリア攻撃を説明した。そして、北朝鮮について、トランプは習に、「中国が有効な手を打てなければ、アメリカは単独で行動する!」と言いました。「シリア攻撃」とあわせて習は、「トランプならやりかねないよな」と思ったことでしょう。

そしてアメリカは、日本政府にも、「戦争するからね!と伝えています

米が日本に「北朝鮮攻撃」を言及

ホウドウキョク 4/12(水)14:44配信

 

北朝鮮の核や弾道ミサイル開発をめぐり、アメリカ政府が日本政府に対し、中国の対応によっては、アメリカが北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る可能性を伝えていたことがわかった。

 

軍事攻撃の可能性への言及があったのは、先週、行われたアメリカと中国の首脳会談より前の4月上旬で、日米の外交筋によると、北朝鮮への対応に関し、アメリカ政府高官は、日本政府高官に対し「選択肢は2つしかない。中国が対応するか、われわれが攻撃するかだ」と述べ、「攻撃」という表現を使って、アメリカの方針を説明した。

「選択肢は2つしかない。中国が対応するかわれわれが攻撃するかだ」だそうです。

そして、シリア攻撃で支持率が一気に上がったトランプは、「やる気満々」発言をしています。

トランプ米大統領が北へ警告「米軍は世界最強…金正恩は失敗するだろう」=韓国メディア

WoW!Korea 4/12(水)17:01配信

 

ドナルド・トランプ米大統領は米国の軍事力が強大だとし、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に「失敗するだろう」と改めて警告した。また、オバマ前政権のイスラム国(IS)撃退戦事例を挙げ、自身はこれとは違い北朝鮮に電撃的な措置を取る可能性があることを示唆した。

 

トランプ大統領は12日(現地時間)放映予定のフォックス・ビジネスとのインタビューで「米国はとても強い艦隊を送っている。航空母艦よりはるかに強い、非常に強力な潜水艦もある。米軍は世界最強だ」とし、「断言するに金正恩は仕損ずるのだ。大きな失敗をするだろう」と述べた。

「弱いオバマ」と違い、「俺は決断力のある強いリーダーだ!」ということですね。

在韓米軍家族の避難訓練も実施されていると聞きます。あらゆる情報が、「戦争に向かっていること」を示しています。しかし、アメリカにとっても、「シリアを攻撃する」のと「北朝鮮を攻撃する」のとでは、「全然別次元の話」なのです。今回は、この辺を考えてみましょう。

なぜアメリカは、北朝鮮を放置したのか?

新世紀に入りアメリカは戦争ばかりしています。01年、アフガン戦争を始めた。03年、イラク戦争を始めた。11年、リビアを攻撃した(リビアは、中東ではなく北アフリカですが)。13年、オバマは、「シリアを攻める」と宣言したが、ドタキャンした。14年、シリアの「イスラム国」(IS)空爆を開始した。17年4月、シリアの空軍基地をミサイル攻撃した。

アメリカは、ず~~~~っと、中東(と北アフリカ)を攻撃し続けています。なぜ? アフガンは、一応「9.11の報復」とされているので、置いておきましょう。

イラクについて、RPEの読者さんなら、フセインは「大量破壊兵器を保有していなかった」「アルカイダと関係なかった」ことご存知でしょう。つまり、アメリカは、「ウソをついて戦争を始めた

では、「本当の動機」は何だったのでしょうか? FRBのグリーンスパン元議長は、こんなことを言っています。

「イラク開戦の動機は石油」=前FRB議長、回顧録で暴露

 

[ワシントン17日時事]18年間にわたって世界経済のかじ取りを担ったグリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長(81)が17日刊行の回顧録で、2003年春の米軍によるイラク開戦の動機は石油利権だったと暴露し、ブッシュ政権を慌てさせている。
(2007年9月17日時事通信)

「石油が理由で戦争するなんて、信じられない!」と思う人もいるでしょう。しかし、日本だって、「ABCD包囲網」で石油が入らなくなって、東南アジアを攻めました。

実をいうと03年当時、「アメリカの石油は2016年までに枯渇すると言われていた。それで、アメリカには、「何がなんでも、中東の石油を確保する!」という強い動機があったのです。

そして、もう一つ、フセインが2000年11月に、原油の決済通貨をドルからユーロにかえたこと。これも、非常に大きな理由でした。アメリカは、イラクを攻め、原油の決済通貨を、ユーロからドルに戻しています。

とにかく、アメリカはブッシュ時代、「ウソをついてもイラクを攻撃する理由があった

ところが、「アメリカ石油枯渇問題」は、オバマ時代「あっさり」解決してしまいます。そう、「シェール革命」が起こった。おかげでアメリカは、ロシア、サウジと並ぶ石油、ガス大国になった。これで、中東の重要性は薄れました

アメリカは、その後も中東への攻撃を続けています。しかし、13年9月には、「シリア攻撃」をドタキャン。14年8月から始まった「IS攻撃」もダラダラ。17年4月のシリアミサイル攻撃は、1日だけです(今後はわかりませんが)。

石油ガスがたっぷりあるアメリカは、明らかに中東への関心を失っています。しかし、トランプは、イスラエルといい関係にあるので、シリアのアサドや、イランなど、「反イスラエル的国々を放置できないのでしょう。

変わる北朝鮮情勢

アメリカが、イラク戦争で忙しいのをいいことに、北朝鮮は全力で核開発ミサイル開発を続けてきました。イラク戦争が始まった03年、核拡散防止条約(NPT)から脱退した。06年、初めて核実験を実施。以後、09年、13年、16年と実験を繰り返していった。

06年当時、「あれは核兵器ではない!」という専門家もいました。しかし、現在、北朝鮮が核兵器を保有していることを疑う人は誰もいません。さらに北朝鮮は、核の小型化に成功し、「ミサイルに搭載できる」としている。ミサイルの飛距離はドンドン伸び、まもなくアメリカ本土に届く大陸間弾道ミサイル」(ICBM)も完成すると宣言している。

北朝鮮は、アメリカが中東で大忙しだった隙に、せっせと核開発をしていた。そして、06年以降は、核を持っているので、アメリカも容易に手出しできない国に変貌したのです。

今年、北は新たな段階に入ろうとしています。今までは、北に核があっても、日本と韓国の脅威に過ぎなかった。アメリカの脅威ではなかった。しかし、金正恩の言葉どおり、ICBMが完成すれば、北朝鮮は、「アメリカ本土を核攻撃できる国」になる。つまり、北朝鮮は、「アメリカ自身」の大きな脅威になる。「容認できない!」というのが、アメリカの立場なのです。これが、「朝鮮戦争が近づいていると考えられる最大の理由です。

一方、金正恩にとっては、「ゴール一歩手前」と言えます。ICBMを完成させ、アメリカが攻撃を思いとどまれば二度とアメリカから攻撃される心配はなくなるでしょう。

アメリカの北朝鮮攻撃で、韓国は焦土と化す可能性

実を言うと、アメリカは過去にも北朝鮮攻撃の可能性を検討したことがありました。日本一朝鮮半島情勢に詳しい辺真一先生(コリア・レポート編集長)は4月10日、こんなことを書いておられます。

米国はクリントン政権時代(1992-2000年)の1994年に一度だけ、北朝鮮への攻撃を真剣に検討したことがあった。クリントン大統領は全面戦争という最悪のシナリオに備え1994年5月19日、シュリガシュビリ統合参謀本部議長らから戦争シミュレーションのブリーフィングを受けた。

シュリガシュビリさんの挙げた数字に、クリントンは仰天しました。

シミュレーションの結果は「戦争が勃発すれば、開戦90日間で

 

  • 5万2,000人の米軍が被害を受ける
  • 韓国軍は49万人の死者を出す
  • 戦争費用は610億ドルを超える。
  • 最終的に戦費は1,000億ドルを越す

という衝撃的なものだった。当時、極東に配備されていた在日米軍3万3,400人と在韓米軍2万8,500人を合わせると、約6万2,000人。なんとその約8割が緒戦3か月で被害を受けることになる。

 

駐韓米軍のラック司令官にいたっては「南北間の隣接性と大都市戦争の特殊性からして米国人8万~10万人を含め(民間人から)100万人の死者が出る」と報告していた。

(出所はこちら「米国は北朝鮮を攻撃できるか?『トランプ―金正恩』の『究極のチキンレース』」)

これは23年前、つまり「まだ北に核兵器がなかった時代」の話です。すでに核兵器を所有する北朝鮮。今戦争になれば犠牲者はどのくらいになるのでしょうか?

実際、北朝鮮は、「米軍が攻めてきたら【核】を使う!」と宣言しています。

北朝鮮、米国の挑発あれば核攻撃すると警告=労働新聞

ロイター 4/11(火)19:34配信

 

[ソウル 11日 ロイター]-北朝鮮は、米国による先制攻撃の兆候があれば米国に核攻撃すると警告した。米原子力空母などが太平洋西部に向かっているが、北朝鮮の機関紙、労働新聞は、米国によるいかなる攻撃にも反撃する用意があると表明した。

もう一度整理してみましょう。

ここまでが現状。では、なぜシリアを攻撃したように、「サクッと」攻撃できないのか?

もう少し、簡潔にまとめると、今の北朝鮮問題は、

という、まさに究極の選択なのです(もちろん、「確実に150万人死ぬ」という話ではありません。実際は、あっさり金正恩政権が崩壊するかもしれない。あるいは、300万人死ぬかもしれない。戦争では何が起こるかわかりません)。

オバマであれば、決して北朝鮮を攻撃しなかったでしょう。しかし、「トランプならやるかもしれない」と思える。シリアのミサイル攻撃も、「誰も想像していなかった」ですから。

大戦争を回避して北から核とミサイルを撤去する方法はないのでしょうか? 長くなりましたので、次回考えてみましょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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