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撮影厳禁。観光ガイド本に載らない八重山の秘祭とみるく様

先月、「人生を変える南の島々。<ヨーロッパ編> 」を上梓された高城剛さんが今訪れているのが、沖縄県の石垣島。島旅というと綺麗な海とおいしい食事に目が向きがちですが、旅の達人・高城さんはメルマガ『高城未来研究所「Future Report」』で、南の島を楽しみ尽くすさらにワンランク上の旅行術を伝授してくださっています。

南国ならではの旅のスタイル

今週は石垣島にいます。

日々、あちこちの八重山の島々をまわっておりますと、夏休み真っ只中ということもあり、行く先々で読者の皆様から声をかけて頂きました。家族連れや1人旅、わざわざ他国から訪れる方、そして近年移住なさった方まで様々いらっしゃり、なかには旅先の見どころをお尋ねいただく方も少なくありませんが、みなさん、一様にこの時期の八重山諸島の豊年祭をご存じありません。

本土のお盆とは違って沖縄のお盆と呼ばれる十六日祭が2月にあることも知らないご様子で、せっかくこの時期に八重山にいらっしゃるのでしたら、各島の豊年祭(プイ)もご覧になったほうが楽しめますよ、と旅の助言を求められた方にはお話した次第です。

まさに今週、石垣島でも年間で一番盛り上がる祭り「四ヶ字」が街中で開催されているほか、先週、黒島などの豊年祭に登場した「みるく様」は大変興味深いキャラで、その存在は「ゆるキャラ」を大きく吹き飛ばすものだと思い、個人的に長年探求を続けています。

いまから15年ほど前に、秘祭を含む沖縄のほとんどの祭りを回った時にも思いましたが、地域に長年伝えられる行事を見れば、その地域の本当の歴史や成り立ちがよく理解できるものです。

そのひとつが「みるく様」で、これは「弥勒」が訛ったものだと言われており、まるで「おかめ」のような「みるく様」は、面が祭壇に祀られたのち、炎天下のビーチを行進するのですが、本土に見られる弥勒像とあまりにかけ離れた姿をしており、僕の興味もそこにあるのです。

八重山諸島の「みるく様」は、中国から日本の本土に渡ったルートとは異なり、南インドから東南アジアを経て、この地に伝わったことを示しており、僕も機会があるごとに東南アジアで時間を見つけ、八重山の「みるく様」の原点を探しにあちこちの国をまわっています。

その元をさらに探れば、中東のミトラ教からインドに伝わってマイトレーヤになり、そこから中国を北上して日本に伝わるルートと(細面の弥勒)、東南アジアから中国の福建、浙江を経て八重山に伝わったルート(おかめ顔のみるく)があることがわかります。

それゆえ、八重山の「みるく」は、南方ルートで弥勒の生まれ変わりだと福建で言われた七福神のひとり「布袋様」に似ており、南方救世主信仰が辿った道を理解できます。

>>次ページ 高城さん流、上手な旅行術とは?

また、八重山には秘祭も多く、いまも部外者は入ることができない祀りが多くあります。石垣のある地域の祭りでは、観光客が入ることができても写真撮影は絶対に厳禁で(いつも青年団が不届き者を見張っています)、その分とても面白いのです。

もちろん秘祭に限らず、これらの豊年祭全般が観光ガイド本に載ることはありません。いうまでもなく、石垣島の観光ガイド本のほとんどは「石垣牛」などで埋め尽くされており(基本タイアップです)、豊年祭は観光ガイド本にお金を払う所以はありませんので、非掲載となり知られることが、ほとんどないのです。

南の島の楽しみは、綺麗な海と食事だけではありません。また、旅行ガイド本に載っていない旅先を探すこともでもありません。自分なりに文化や歴史を理解し(もしご家族とご一緒なら同行のお子様にも教え)、その上で情報に踊らされずに目一杯楽しむことが、上手な旅路のように思います。なにより、沖縄は千年以上に渡る文化を持つ素晴らしい場所です。

さて現在、石垣島には史上最大規模の台風が近づいています。僕も早々に策を講じる必要がありそうで、これも南国ならではの旅のスタイルなのでしょう。日々、天気図チェックと行き先変更は欠かせませんね。

image by: Shutterstock

 

『高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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