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【書評】リベラルを自称するメンド臭い人たちが妙に鼻につく理由

かつては多くの日本人からシンパシーを得ていた「リベラル派」ですが、近年、彼らへの批判が増えてきているそうです。なぜ、リベラルは嫌われはじめてしまったのでしょうか。その理由を解き明かした1冊を、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介しています。

日本をダメにするリベラルの正体
山村明義・著 ビジネス社

山村明義『日本をダメにするリベラルの正体』を読んだ。いま、日本を含めて世界中で思想上での大混乱が起きている。混乱の震源地は「リベラル」で、リベラルという人たちの思想や勢力全体への批判が増えてきた。その内容の代表的なものが「リベラル嫌い」「リベラル疲れ」である。

かつて日本国内で隆盛を極めていたリベラル勢力や言論が衰退し、一般の耳に届くような説得力を失ってしまったのはなぜか。この本では「リベラルの歴史や思想背景、最近の世界の政治・社会情勢に焦点を当て、なぜリベラルが没落していくのか、今後日本人は何を目標にすべきか」という話を展開している。

リベラル(Liberal)という言葉を辞書で引けば「自由」が語源であることがわかる。しかし、現代日本の「リベラル」は、決まった形式やしきたりに制約されない「自由主義(者)」あるいは「平和主義(者)」「平等主義(者)」「寛容主義(者)」「進歩主義(者)」などさまざまに使われている。

「平和主義」はリベラル専用の概念ではない。日本人でことさら「戦争を起こそうなどという人は保守を含めまったくいない。ならば、どう防衛し、何が戦争の抑止力になるかを現実に照らし合わせて話しあえばいいわけだが、日本の「左派」や「リベラル派」のほとんどは、絶対にそうはしない。

「特定機密保護法」の成立の際には「法案が通ったら日本は暗黒社会になる」とリベラル派の人は大騒ぎした。安保法案を「戦争法案」と言い(まだ言い続けている)猛反対を展開。法案は国会を通過したが日本は暗黒社会にはならず、戦争にも至っていない。彼らは煽り立てた責任はとっくに放棄している。自国の防衛や軍事を完全否定してかかるリベラルなど、日本以外では絶対にない。

彼らは、あくまで憲法九条を「一言一句変えてはいけない」という歪な絶対的平和主義者たちである。ところが、リベラル大御所の井上達夫東大教授は「憲法九条削除論」で、「九条解釈としては、文理の制約上、絶対平和主義を唱えているとしかいいようがない」。だから「修正主義的護憲派も絶対主義的護憲派も論理性がなく、嘘や欺瞞を抱え込まざるを得ない」と主張する。

さらに、リベラル派が安倍政権を批判しながら、自分たちはいまいる状態に安住しているため、安倍政権を批判する資格はないという。本の帯には「偽善と欺瞞のエリート主義のリベラルは、どうぞ嫌いになってください! 井上達夫」とある。日本のリベラル派は「知の荒廃」で、いまやもう終わっている。

国民は「戦争を起こさないようにするために具体的な議論をしろ」と言っているのだ。戦争を避けるために安全保障を考えるのは世界の常識である。有事における議論を封じ込めれば平和になる、という論理はまったく根拠がない。何も反省せずに責任もとらない人たちを支える思想がリベラルなのだ。

weblio英和辞典によればliberalとは、「気前のよい、大まかな、(…を)惜しまないで、けちけちしないで、たくさんの、豊富な、寛大な、度量の大きい、開放的な、偏見のない」と並んでいるが、現在の日本のリベラルにはこれらの解釈のたったひとつも持ち合わせていないところがお笑いである。ところでこの本も、いささか文脈が整わず文法もヘンで、残念な出来である。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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