現在は米ロサンゼルスで起業し、経営者兼アニメプロデューサーとなった、元TBSディレクターにして、海部俊樹元首相の長男である海部正樹さん。過去には、父・海部俊樹氏が首相だった時に2年間、総理大臣秘書も務められていたとか。夏の都議選も近い今日この頃ですが、海部さんは自身のメルマガ『ロサンゼルスで起業してしまったボクの本気メルマガ!』で、父を支えるべく奔走した「選挙戦の楽屋裏エピソード」を紹介しています。どうやら裏で吹いた風は「トランプ旋風」だけではないようですよ。
選挙の風
もう20年以上も昔の話です。
私の親父の選挙でも票読みは大事でした。 初当選以来の熱心な後援者は選挙のプロと言えます。 地区ごとに、いろいろデータを集めるのですが、最も重視していたのが「下駄箱の数」でした。 少し説明が必要ですね。
選挙では集会と呼ぶ集まりをこまめに開催します。 だいたい10人から20人くらいをあつめ、候補者が出向いて「親しく皆様と語り合う」場です。 握手の数だけ票が出ると言われており、そこで、何人集まったかという情報をとても大切にしていました。
当然、対立候補もやっています。 会場は個人の家、お寺や公民館、集会所といった施設を使います。 自分の靴を脱いで上がりますから、下駄箱の靴の数が、集まっている人の人数です。相手側が何人集めているか? これが大切な情報です。
そこで、対立候補の集会に、こっそり顔の知られていない運動員がまぎれ込み、下駄箱の靴の数を数えてくるのです。 この下駄箱情報は、なかなか役に立っていました。
ところが、ある市場選挙で「下駄箱神話」が崩れる事件がありました。 我が陣営が押していたのは現職の市長。 後援会、地方議員などをフル活動した、得意の組織型選挙。 これに対して対立候補は知名度の低い新人。 組織も弱く、楽勝ムードでした。 下駄箱データも裏付けていましたが、蓋を開けてみれば落選。 驚きました。
実は、対立候補は小学校のPTA活動を熱心にしていた人でした。 そこでお母さんたちが中心になって運動していました。 でもお母さんたちはいろいろ忙しいので集会には参加できません。 そこで携帯電話メールを使って、運動を広げていたのです。
風が吹いていたのですが、気がつかなかったわけです。 選挙というのは洋の東西、時代を超えて同じようなことが起きるものなんですね。 「風が吹いていなければ、吹かせれば良い」とも言います。 でも、逆風はごめんですね。
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