平成31年4月から国民年金保険料が月額100円アップすることが決まりました。その理由は「自営業、農業、漁業などを営む人たちの「産前産後休業期間」の保険料を全額免除するため、その財源として使用するそうです。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、実は産前産後の人やケガ人に手厚い厚生年金と健康保険の仕組みをわかりやすく解説しています。
保険料上限が決められてたはずの国民年金保険料が100円アップ。なぜまた値上げ?
平成31年4月から国民年金保険料が月額100円アップします。平成16年改正時に平成10年4月から平成17年3月まで1万3,300円に据え置いていた国民年金保険料を毎年度280円ずつ上げていきながら、国民年金保険料は平成29年度で1万6,900円に固定するってなってたんですが、平成31年4月からはこの1万6,900円が1万7,000円になります。
ただし、1万6,900円(平成31年4月から1万7,000円)は物価変動率や賃金変動率により毎年度変わる場合がある。実際には「1万6,900円×保険料改定率」という事になるから毎年度金額が異なってくる。この保険料改定率の中に物価変動や賃金変動が影響する。
この保険料改定率っていうのは、内訳は前年度保険料改定率に前年度の名目賃金変動率というのを掛ける。名目賃金変動率の内訳は、「物価変動率×実質賃金変動率」。
平成29年度国民年金保険料は月額1万6,490円であり、1万6,900円ではありません。なぜなら、
- 1万6,900円×平成28年度保険料改定率0.976×平成28年度の物価変動率1.008×平成28年度の実質賃金変動率0.992=1万6,900円×保険料改定率0.976=16,494円≒1万6,490円(10円未満四捨五入)
ちなみに、平成30年度は
- 1万6,900円×平成29年度改定率0.976×物価変動率0.999×実質賃金変動率0.992=1万6,900円×保険料改定率0.967=16,342円≒16,340円(10円未満四捨五入)
物価変動率とか実質賃金変動率とかは毎年1月末に厚生労働省HPに出るからそれを見ればいいです(^^;;
● 平成29年度年金額改定率(厚生労働省)
なんで100円アップするかと言うと、自営業の人のような国民年金第1号被保険者の産前産後休業期間(産前42日と産後56日。出産日と出産予定日がズレればその日数分増やす)の保険料の全額免除を導入するから。
全額免除といっても保険料をちゃんと納付したものとみなして将来の老齢基礎年金を免除による減額無しで支給するから、その財源として100円プラスになったんです。
免除期間は出産予定月の前月(双子とかの多胎妊娠は出産予定月の前3ヶ月目)から、出産予定月の翌々月まで。例えば、出産予定日が5月17日なら、前月4月から7月分まで免除。多胎妊娠なら出産予定日が5月10日なら、2月から7月まで保険料免除。
この産前産後休業の保険料免除制度は国民年金第2号被保険者の厚生年金加入者とかは平成26年4月からあったんですけどね。第2号被保険者は産前42日(多胎妊娠は産前98日)で産後56日のうち、産前産後休業を開始した月から産前産後休業が終了した日の翌日の属する月の前月まで免除。
なお、第2号被保険者は育児休業してる間も事業主への申し出により厚生年金保険料を免除できる(これは結構前からあった制度)。厚生年金保険料は労働者本人と事業主が折半して支払うけど、本人と事業主とも産前産後休業や育児休業期間は保険料が免除される。こちらも免除期間は保険料を完璧に支払ったものとみなされます。
※追記
第2号被保険者の産前産後休業は、健康保険から出産手当金が支給される場合があります(本人が健康保険の被保険者でないといけない。被扶養者は対象外)。支給日額は支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均額÷30×2÷3。平均額が30万円で、産前産後休業した日数が90日間なら、出産手当金は30万円÷30×2÷3×90日間=600,030円支給。
※注意
3分の2にした所で小数点1位未満を四捨五入する。
また、妊娠4ヶ月以上の人が出産したら一児につき42万円の出産育児一時金が健康保険から支給される。普通は健康保険から直接病院に支払われる方法が取られる。国民年金第1号被保険者が加入する国民健康保険にも出産育児一時金はありますが、出産手当金はありません。
なお健康保険には傷病で働けなくなった場合も傷病手当金という強力な給付がある。傷病手当金は原則最大1年6ヶ月支給で、上記の出産手当金と同じ計算式で求めた金額が、休んだ日数分申請により支給される。やはり厚生年金や健康保険は給付が手厚いですね(^^;;
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