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なぜ松下幸之助は小さな電器店の経営者たちを前に号泣したのか?

松下電器を一代で築き上げ、経営の神様とも呼ばれる松下幸之助氏。数々の逸話が語り継がれていますが、今回の無料メルマガ『売れる営業マンの常識は売れない営業マンの非常識!』では、著者で営業実務のコンサルタントを手がける島田基延さんが、大不況に見舞われ販売店の8割が赤字となった際のエピソードを紹介しています。

松下幸之助に学ぶ

昭和39年、販売店8割が赤字。この時、幸之助は会長職でした。一線を退いていた状況下で、不況に見舞われたのです。昭和40年不況と呼ばれる不況です。

この時は、皆さんご存知のナショナルのお店が全国にありました。つまり、販売店さんたちのお店です。このお店は、幸之助が、共に栄えるお店をコンセプトに、全国に開発した販売網です。

必ず一軒一軒幸之助が面談して、夫婦仲がいいかどうかを確認したそうです。夫婦仲が悪いようでは、商売で成功は出来る訳が無いという考え方を持たれていたようです。松下電器が日本に冠たる会社になれたのも、ひとえにこの販売網のお陰とも言えます。

この時の不況で、実に販売店の80%が赤字に陥っていたようです。商品が売れない! もう倒産の危機的状況でした。そんな中、熱海に全国の販売店の社長を集め、熱のこもった会議が行われました。どうすれば、この危機的状況を打開できるのか?

この会議では、販売店の社長は本店(松下電器)を責め、本店は販売店を責める! そんな言い合いの構造だったようです。まあ、メーカーとしては、「売らないあんたがダメなんだ。販売店の経営者として本気でやっているのか?」となるわけです。

販売店の社長からすると、「売れる商品を作らないメーカーが悪い! もっと売れるものを作れ!」となっています。まあ、平行線が続くわけです。

この会議は当初2日間の予定だったようですが、3日に延長され、3日目に松下幸之助が壇上に立ちます。さて、あなたが松下幸之助の立場なら、この席上で、どんな話をするでしょう? 少し、考えてみてください。

などなど、あなたならどうしますか?

幸之助がどのように話したか解説します。

  1. 当社の信念の乏しいこと、考えの至らないことが原因
  2. 喜んで売れる商品の製造
  3. 販売の喜びを持てる販売網
  4. 販売店への苦労に対する

販売店との対立ではなく、自社の至らなさに対する自責の念を述べ涙したのです。この涙は、販売店だけではなく、社員に対しての思いのあらわれであったように感じます。難局にあって、相手を責めても打開策は生まれません。にもかかわらず、相手が悪い的な発言に終始した社員に対して情けない気持ちになったんではないかと思われます。そして、会長職にありながら、販売店担当部長として、先頭指揮を執って、この難局を打開するのです。

責任は我にあり」。この考え方ができないようでは、経営者として失格です。マネージャーとしても失格でしょう。結局は、自分しか変えることはできません。自分以外に焦点を当てても仕方が無いのです。自分で変えることができるのは自分だけなのです。つまり、相手の話を聞いて、謙虚に受けとめ、反省し、改善策を講じる。できることをやるしかないのです!

ところが、責任を転嫁したがります。自分は正しく、相手は悪い。このような思考では、何も生まないどころか、相手との溝を深くするのです。改善にはならず、改悪となります。素直さと謙虚さが、肝要なのです。さすが、経営の神様です。

2日間、ジックリみんなの発言を聞き、現状を把握し、対応策を考え、その上で、まずは非を詫びることを選択したのです。そして、一緒になって打開していこうと、自分が先頭に立って行動したのです。もう、この時点で問題解決できているのです!

会長職だったからなのか、幸之助が凄いのか、客観的に判断し、どのようにすれば解決できるのか考え、判断しています。

また、出来そうで出来ないのが、非を認め詫びることです。

経営者の多くは自尊心が高く傲慢です。他人を叱責することはあっても、自分の非を認めたがらないものです。しかも、2日間に渡って、幹部社員たちが、販売店の非を非難し続けた後に、幹部社員を責める訳でもなく、非を認め、謝罪して、今後つなげるとは凄いの一言です。

現状の延長線では、同じ結果しか訪れません。問題を打開するためには、行動を変化させる必要があります。その為に、自らが部長になって先頭に立つ! 凄い決断をし、素晴らしい実行力です。

なかなか、会長職から部長職になることはできません。それを、躊躇することなく実行し、結果を出したのです。

販売店も、幸之助が頭を下げたことで、感動し今まで以上に必死に行動できたでしょう。やはり人間を動かすのは、人間です。気持ちが成功を呼び寄せている。そんなふうに感じるわけです。

 

島田安浩(営業コンサルタント)この著者の記事一覧

最初売れない営業マンだった私が、売れるようになり、日本でトップセールスに登りつめ、経営者として株式公開した。その営業ノウハウを、売れる営業の常識と売れない営業の非常識と言う観点で分かり易くまとめた。

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【著者】 島田安浩(営業コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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