かつては地域で一番品揃えが良く人気のお店だったのに、ライバル店に1位の座を奪われてしまってから売上が戻らない…。なぜ、一度失った首位の座はなかなか取り返すことが出来ないのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で現役コンサルタントの梅本泰則さんが、ナイキとアディダスの2社を例に、「2位に落ちた時に取るべき戦略」を紹介してくださっています。
1位と2位との戦略の違いは?
かつて、売上一1番を誇っていた会社が、2位の会社に逆転されることがあります。さまざまな業界で起こっていることです。
スポーツ用品業界も例外ではありません。たとえば、圧倒的な1位だったアディダス社が、あるときナイキ社にその地位を譲りました。ずいぶん前のことです。ところが、その後、なかなかその順位が入れ替わりません。
この現象は、アディダスとナイキに限ったことではないようです。日本のメーカーさんや問屋さんなどを思い浮かべても、そんなことがあります。
では、どうして、そうした現象が起こるのでしょう。おそらく、2位になった会社の戦略に問題があるからではないでしょうか。どういうことかというと、2位になった会社は、1位にいたときと同じ戦略をとっている可能性があります。
1位の会社がとる戦略は、「全方位戦略」です。2位以下の会社の攻撃を、圧倒的な力でねじ伏せていきます。商品戦略にしても、顧客戦略にしても、地域戦略にしても2位以下の会社がとろうとする戦略を、早い時期につぶしていきます。
たとえば、ある商品が売れ始めたら、同じような商品を取り扱って市場をうばっていくというようなことです。これは、1位だからこそできる戦略です。しかし、いったん2位になってしまったら、この戦略を変える必要があります。2位の会社が「全方位」戦略で一位の会社を攻撃しても勝てません。どうしたらいいでしょう。とるべき戦略は「部分攻撃」です。
2位の戦略
つまり、今まで1位だった会社は、2位になった時から、すべての商品で1位になろうとしてはいけません。すべての地域で勝とうとしてはいけません。そして、すべての顧客を対象にしてはいけません。今までの考え方や戦略を変えることです。
ところが、これがなかなかできません。1位の時の戦略がしみついていますから、そう簡単には変えられないのです。ですから、なかなか1位に返り咲くこともありません。
再び1位になるには、力を入れるべき商品や販売方法を絞り込むことです。また、伸ばすべき地域を絞り込むことです。そして、販売する顧客層を明確にすることです。今まで、何もかも、どこにでも、誰にでも販売していた戦略を変えなくてはいけません。
アディダスはどうでしょうか。以前に比べれば、力を入れる市場を絞り込んでいるように見えます。また、ITを駆使した新しい生産、販売方法にも力を入れています。この戦略がうまくいけば、再び1位の座を手にできるかもしれません。
では、スポーツショップに関しては、どうでしょうか。同じことが起こっているのでしょうか。
スポーツショップの部分攻撃
1位と2位の逆転ということは、スポーツショップの世界でも起こりました。かつて、地域一番店として栄えていたお店が、専門量販店の進出によって、その地位は逆転しました。ところが、地域一番店の多くは、それまでと同じ戦略で対抗してしまいます。本当ならば、ここで戦略を変えなくてはなりませんでした。
しかし、商品も、地域も、お客様も絞ることはむつかしいのです。それまで蓄えてきた財産を手放すような気持になるからです。その結果、ずるずるとそれまでと同じ戦略で商売を続けてしまい業績を悪くしたお店も出てきました。
一方、そのことに気が付いたお店は、戦略を変えたのです。そして、特徴のあるお店作りに成功しています。あるお店は、野球用品にメッポウ強いです。また、あるお店は、サッカースパイクで、地域一番の売上を示しています。また、あるお店は、お客様が参加できるスポーツイベントを頻繁に行って、ファンづくりをしています。また、あるお店は、スポーツ教室に力をいれて、地域のスポーツ活性化に貢献しています。
つまり、大切なことは、全部で1位になる必要はないということです。これが「部分攻撃」です。「部分」とは、相手の弱いところや、自分の得意なところを指します。そして、それを考えるポイントは「商品」「販売方法」「顧客」「地域」です。このように、部分で1位になる戦略こそが、私たちのとるべき道ではないでしょうか。
■今日のツボ■
- 1位から2位に落ちた会社が返り咲くのはむつかしい。
- 2位に落ちたら、戦略を変える必要がある。
- とるべき戦略は、「部分攻撃」である。
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