昔から「カレーは2日目が美味い」とよく言われています。じゃがいもやルーのデンプンが、温めなおすことで美味しくなる為なんだそうですが、最近では「2日目のカレー」にウェルシュ菌という菌による食中毒のリスクがあるかもしれないとの報道も。その噂に医学的な根拠はあるのでしょうか? メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者でNY在住の医学博士・しんコロさんがずばり回答しています。
Question
最近、作り置きしたカレーなどにウェルシュ菌という食中毒菌が増殖するなどという事が度々テレビでも取り上げられるようになりました。加熱しても死なない菌との事ですが、昔から2 日目のカレーは美味しいと言って大抵の人は食べてきたと思うのですが、ほとんどの人は食中毒など起こしていないと思うんです。今頃になって何故こんな話が出るのか不思議ですが、症状が出なくても菌が体に入る事自体よくないのでしょうか?
しんコロさんの回答
ウェルシュ菌はクロストリジウム属という細菌なのですが、自然界に広く存在するだけでなく、我々の腸内細菌叢の構成菌の一部でもあります。ウェルシュ菌は産生する毒素の種類によってA、B、C、D、E の型に分類されますが、特にA 型が食中毒を起こすことが知られています。
ウェルシュ菌は芽胞という耐久性の高い形態になることがあり、おっしゃる通り100度程度の熱ではなかなか不活化できないのです。食品などにA 型ウェルシュ菌の芽胞が含まれる場合、食品が冷めてゆくに従って増殖し、それを食べてしまうことで食中毒を起こしてしまうことがあります。ただし、そもそもこのウェルシュ菌が食品に紛れ込んでいなければ問題ないので、「カレーには必ずウェルシュ菌が含まれている」ということではありません。
ウェルシュ菌は121度で15分ほどオートクレーブで処理することで滅菌できるので、圧力鍋を使って料理をすればほぼ死滅させることができ、食中毒を防ぐことができると思います。万が一ウェルシュ菌の食中毒になっても、通常は予後は良好で回復します。健康的な腸内細菌叢がすでに存在していれば、食中毒を起こすウェルシュ菌も時間と共に減少し、症状も回復します。
従って、ご質問の答えとしては、健康的な腸内細菌叢があり、また抗生物質などを使っていない限り、症状が出ない程度の菌が体に入っても問題ありません。なので、カレーを食べることを避ける必要はないです。
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