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北で拘束された米大学生「死」の裏側。事情通が明かす真の理由

北朝鮮で拘束されていた米国人大学生のオットー・ワームビア氏は危篤状態で母国に送り返され、去る6月19日に米オハイオ州の病院で死亡しました。ミサイル発射などの問題で、米国と北朝鮮の間で緊張感が高まる中、なぜこのタイミングで北はワームビア氏を瀕死の状態で開放したのでしょうか? メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で北朝鮮事情に詳しい宮塚先生は、死亡事件の真相は「金正恩を侮辱したある行為」が関係していると指摘しています。

北朝鮮で拘束された米国人大学生が死亡。本当の拘束理由は何か?

アメリカのバージニア大学の学生、オットー・ワームビア氏(22)北朝鮮から昏睡状態で解放され、6月13日から故郷のオハイオ州の病院に入院していたが、6月19日に死去した。

日本のテレビのワイドショーでお馴染みの評論家氏は「なぜ、この時期に釈放されたのか? 」という質問に、たしか「アメリカとの友好親善を保つために」とかいう理由をあげていた。画面にはワームビア氏が両脇を抱えられ、昏睡状態で到着する姿が映し出されていた。この場面を見れば尋常な状況ではないと言うことを知るはずだが、「友好親善のため」というような理由は当てはまらない。

評論家氏はワームビア氏がなぜ、昏睡状況にあったのか、その理由を知らずにこのような話をしたのだろうか。しかも、北朝鮮側はワームビア氏が昏睡状況にあるのは「ボツリヌス菌の感染による」と述べたが、アメリカ側の医療機関の検査では同菌は発見されなかったし、同氏の脳には心肺停止が原因とみられる深刻な損傷があったという。

北朝鮮当局による虐待が原因であるが、なぜ、ワームビア氏は北朝鮮当局に拘束されたのだろうか。一説には、帰国直前に滞在先ホテルに貼られた政治ポスターを盗んだとして逮捕され、懲役15年の刑に処せられた、とのこと。政治ポスターがいかなるものなのか、断定はできないが、北朝鮮はスローガンの国である。国中が政治ポスターだらけである。

私も1991年に平壌を訪ねた時に、地下鉄の運行時間を知らせるポスター(張り紙)をはぎ取ろうとしたこともあったが、ワームビア氏はその政治ポスターにどれだけの価値を見出して、盗もうとしたのか。私はホテルのバスタオルを失敬したが、バスが出発する間際に客室担当のおばさんが飛んできて「バスタオルを早く返せ」と言われたことがあった。その時は北朝鮮への友好親善団体の訪朝団ということで、大事には至らなかったが、政治ポスターを盗んだというのは理解できない

ワームビア氏は昨年2月、記者会見でホテルのプロパガンダ用ポスターを盗んだと告白していたが、関係者は「北朝鮮によるでっち上げだ」と聞かされたという。私もその通りだと考える。それならば、拘束された理由は何か。6月24日の『産経新聞』に「米学生 拘束理由は… 正恩氏掲載の新聞で靴を包んだから」という記事が出ていた。これなら拘束されことも理解できる

新聞紙で靴を包むことは何でもないようだが、問題は金正恩の顔写真が出ている所で靴を包んだことが、「金委員長の写真に泥を付けた」と言うことで、これは北朝鮮で最高尊厳とされる金委員長の写真が載った新聞を粗末に扱ったということで重罪に当たるのである。ワームビア氏にしてみれば「新聞紙で靴を包む事がなぜ犯罪になるのか」と思ったことであろう。だが、北朝鮮では新聞は新聞でも、最高尊厳の載っている新聞の取り扱いは別である。

『労働新聞』の一面に最高尊厳を真ん中に記念写真がよく掲載されるが、この新聞を海外に送付するときは「真ん中から折らないで(すなわち最高尊厳を傷つける行為なので)、三つに折って送るのである。たかが、最高尊厳が載っている新聞だからどうしたというかもしれないが、その昔、北朝鮮の怪獣映画「プルガサリ」を撮影するときに、日本から行った「薩摩源八郎」氏が、昼食の時に、金日成の写真が載っている新聞紙を敷いて食事しようとしたら、北朝鮮の関係者が慌てて飛んできて「首領様の写真を尻に敷くとは」ということで、大変な騒動になったということがあった。

私が平壌に行った時、日本人観光客がある建物の中で、疲れたからといって金日成の胸像だったか、そこに腰かけようとしたら、北朝鮮の人間が飛んできて「何をしているんだ」と大声で叫び、その観光客をどかせたことがあった。北朝鮮の人間にしてみれば「首領様への最大の屈辱、侮辱」と捉えたのだろうが、大声で怒鳴られた日本人観光客は「何でここに腰かけたらだめなんだ」という程度の認識しかなく、怪訝な顔つきであった。

いずれにせよ、今回のワームビア氏の死亡事件には心から哀悼の意を表するしかない。残虐・非道な北朝鮮の仕打ちにも、日本国内にはそれでも北朝鮮を擁護する輩が多くいることを知るべきである。

image by: Maxim Tupikov / Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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