北朝鮮によるICBM発射実験の成功により、東アジアの緊張がさらに高まりを見せています。トランプ大統領から北朝鮮への働きかけの役割を期待された中国は、ロシアとともにアジアから米国を追い出す決意表明とも取れる声明を発表するなど、状況はますます混迷を極めています。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さんは、今年4月の米中首脳会談時にトランプが習近平国家主席に「北へ100日以内に経済制裁もしくはなんらかの解決手段を強く求めた」とし、そのリミットが訪れる今週7月第3週に米国が起こすアクションについて様々な視点から分析・考察しています。
デッドエンドは今週
今週は、北朝鮮のICBM発射成功につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
7月4日米国独立記念日にあわせるように、北朝鮮は国営の朝鮮中央テレビを通じて、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと発表しました。
朝鮮中央テレビによれば、金正恩朝鮮労働党委員長の立ち会いのもと、ICBM「火星14」を発射し、ミサイルの飛行距離は933キロ、高度は過去最高の2,802キロに達して、飛翔時間は39分。海上(日本の排他的経済水域=EEZ内)の標的に命中させることに成功したと報道しています。
同日、ティラーソン米国務長官は、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル発射は、同国による核の脅威の新たな高まりを示すとの見方を示し、世界的な行動が必要だと訴えました。
その上、北朝鮮からの「労働者を受け入れる国」や、北朝鮮政府に「経済的」または軍事的な支援を行う国、あるいは国連制裁の実施を怠る国は、いずれも「危険な政権を支援し、ほう助している国家だ」と警告しています。
さて、事の起こりは、本メールマガジンで何度もお伝えした今年4月に行われた中国の習近平国家主席と米国トランプ大統領の会談からはじまります。その際、まるで食事のあとのデザートのように「シリアの空爆開始」を習近平に伝えたトランプは、もうひとつの通達をしました。
それは、両国の貿易不均衡是正について100日以内に是正するのと同時に、北朝鮮へ100日以内に経済制裁もしくは、なんらかの解決手段を強く求めたのです。
これも、本メールマガジンで何度もお伝えしておりますように、北朝鮮の命綱ともいうべき石油や水は、実質的に中国が支配し供給しています。北朝鮮は脅威と言いますが、北朝鮮にとって脅威は米国ではなく、生殺与奪権を握っている中国で、中国からしてみれば、北朝鮮は「わがままな子飼い」にすぎません。
しかし先週、中国は米国の意に反するように、ロシアのプーチン大統領とともに共同声明を発表し、北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結するのと引き換えにアメリカと韓国が大規模な合同軍事演習を停止するべきだとカウンターアナウンスを発しました。
さらに、中露首脳声明では「北朝鮮が抱える合理的な懸念は尊重されるべきであり、ほかの国々は相応の努力をして相互に信頼する雰囲気をつくり出すべきだ」として、各国に冷静な対応を求めている、というより、米国の意向でアジアは動くべきではないと呼びかけているも同然になっています。
これは、アジアから米国を追い出す決意に聞こえますし、中期的に考えれば、米国はアジアから撤退せざるを得ません。その理由は、基地の維持費問題だけでなく、ICBMのような飛行距離が伸びた軍事テクノロジーや衛星が、いまや全地球を網羅できるからで、前線に滞在するのはリスクでしかなくなってきたからです。
一方、4月に行われた米中首脳会談時には、北朝鮮による新たな核実験や大陸間弾道ミサイルを発射するような「重大な挑発」があった場合、米中がそれぞれ独自の制裁を北朝鮮に科すことでも合意しています。
米国は、北朝鮮に対して具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間を中国に与えている」と考えており、このモラトリアムともいうべき期間のデッドエンドは、4月の米中首脳会談開催日から数えると、今週にあたります。
7日、ドイツのハンブルグでG20が開催されました。習近平国家主席と再び会談する予定のトランプは、再度中国や北朝鮮に猶予期間を与えたのか。それとも、前回のシリア同様、事後報告として「なにか」を通達したのか。
東アジアの緊張は、いま、欧州で最高潮に達しています。
毎号充実したコンテンツが目白押し
■目次
… 1. 近況
… 2. 世界の俯瞰図
… 3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
… 4. 未来放談
… 5. 身体と意識
… 6. Q&Aコーナー
… 7. 連載のお知らせ