先日行われた米韓首脳会談の席上で合意を見た、アメリカから韓国への戦時作戦統制権の早期返還。これまで米軍が握っていた朝鮮半島有事の際の作戦指揮権限を韓国に移譲するというものですが、北朝鮮による「恫喝」がますますエスカレートする中でのこの判断は果たして賢明なものなのでしょうか。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家・黄さんは、「韓国軍主導で本当に北朝鮮に対抗できるのか」と懐疑的な見解を記しています。
【韓国】作戦権を返還された韓国軍は、朝鮮有事に我先と逃げ出す
6月30日、訪米した文在寅大統領とトランプ大統領による米韓首脳会談が行われました。成果としては特段、目新しいものはなく、共同声明にも米韓同盟の前進や、北朝鮮との南北対話への支持といったことばかりで、THAAD問題などには触れられていませんでした。
ただし、戦時作戦統制権(作戦権)のアメリカから韓国への早期返還についても合意がなされました。これはもともと盧武鉉大統領がアメリカに要求したことですが、いざアメリカがこれに同意すると、次の李明博、朴槿恵の保守政権では、「やはり断ります」というわけにはいかないので、返還時期がくるたびに、えんえんと引き伸ばし策を続けてきました。
なぜなら、韓国軍に戦時作戦を統制する能力がないことを知っているからです。アメリカ軍も、韓国軍に統率力や作戦能力がないことは、朝鮮戦争のときから知っていますので、口だけだということはわかっているのです。
戦時作戦統制権は、言うまでもなく、朝鮮戦争時に国連軍に移譲されていたものを、米韓連合司令部が受け継いだものです。そして戦時下において、米韓連合司令部では、米軍が司令官となり、韓国軍は副司令官としてその指揮下に入るというものです。
この作戦権を韓国軍に返還するということは、いざ朝鮮有事の際に、韓国軍が自ら作戦を立て、軍事行動を行うということです。
その実力がないことがわかっている朴槿恵政権では、韓国軍が米韓連合防衛を主導し、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応できる軍事能力を持つことを前提に、移譲は2020年代の中頃以降としていました。つまり、事実上の延期です。韓国軍がアメリカ軍を主導することなど、夢のまた夢だからです。
しかし文在寅は、再び作戦権の早期移譲を主張し、それに向けて偵察能力の強化をぶち上げました。
左派の文在寅は、そもそも作戦権を取り戻して北朝鮮と戦いたいわけではありません。むしろ融和派ですから、朝鮮有事になってもアメリカが手を出さないように、統制権を取り戻しておきたいというのが本音でしょう。
とはいえ、文在寅が平昌オリンピックでの南北合同チームを提案したり、対話を呼びかけても、北朝鮮はミサイル恫喝をやめません。先日も北朝鮮はミサイルを発射しました。
アメリカにしても、本当に早期に作戦権を返還するかは微妙です。もともと作戦権の返還時には、米軍、韓国軍がそれぞれ独自の司令部を構成する計画でしたが、2014年の定例安保協議会において、作戦権の返還時には、韓国軍が米軍を指揮する「未来司令部」を創設することで合意しています。
● 韓米が戦時作戦権の早期返還で合意、「単一司令部」は維持されるか
つまり、作戦権が返還されれば、米軍は史上初めて他国軍の指揮下、それも韓国軍の指揮下に入るということになります。
しかし、北朝鮮情勢が緊迫するなかで、もし朝鮮有事が現実のものとなったときに、韓国軍主導で本当に北朝鮮に対抗できるのか、非常に疑問です。アメリカ軍もそう思っているでしょう。
戦時作戦統制権を返還されたところで、いざというときはアメリカ軍を指揮するどころか、真っ先に国民を捨てて逃げ、その傍らで一般市民を共産ゲリラと疑って虐殺し続けた李承晩・韓国軍の二の舞いになることは必定でしょう。
もっとも、親北派の文在寅にしてみれば、そんな韓国軍に呆れてアメリカ軍が撤退してくれることを望んでいるのかもしれませんが。
(メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみにください。初月無料です)