財務省の高級官僚が外資系企業へ堂々と天下りしても、誰も止めることができない──そんな衝撃の現実が日本では日常的に起きています。現行の天下り規制は「届け出るだけ」「公表するだけ」に過ぎず、実質的にまったく機能していないのです。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では、著者の元国税調査官の大村大次郎さんが、その驚くべき実態と構造的な問題点を徹底解説します。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:財務省最高幹部が外資系金融機関に天下り
現在の日本は天下り天国
前回まで、財務省の最高幹部たちが外資系の情報企業や金融機関に天下りしているという事実をご紹介してきました。 今回は、なぜそのような暴挙が平然と行われているのか、その背景をご説明したいと思います。
多くの国民は財務官僚の天下りに何らかの規制があるのではないか、と思っているはずです。 強大な国家権力を握っている官僚たちが、自由に天下りしていれば、日本の政治経済に大きな悪影響を及ぼすことは、容易に想像がつくからです。 当然、「官僚での業務に関係する企業には天下りできない」などの規制はあるはずと、一般の人は思っているでしょう。
が、信じられないことに現在、日本では国家公務員の天下りに関して、事実上、規制はないのです。 管理職以上の国家公務員は、再就職する場合には総理大臣に届け出る義務はあります。 しかし、これは届け出るだけです。 届け出た後、総理大臣から「これはマズいんじゃないか」「これはダメ」などの指示があるわけではないのです。
また国家公務員は在職中に、関係企業に再就職を決めてもいいのです。 その場合も、届け出を出せば何も問われないのです。 だから財務省の官僚が、在職中に指導監督を行なっていた金融機関に対して、指導監督を行なっている間に、その相手先の金融機関に再就職を決めても構わないことになっています。 つまり届け出の義務があっても、それは何の規制にもなっていないのです。 そのため、財務省のキャリア官僚が、業務の直接関係する銀行や保険会社等に再就職するケースが非常に多いのです。 これで癒着が起こらないはずはないのです。 そして、財務省のトップが外資系企業に天下りするというようなことも、まったく咎められることがない仕組みになっているのです。
何の役にも立たない「再就職等監視委員会」
現在、官僚の天下りに関しては、「官民人材交流センター」が一元管理するということになっています。 2007年に公務員の再就職制度が大きく変わり、事実上、天下りが自由化されました。 そして「これまでの天下り規制が解除される」代わりに、「官民人材交流センター」が一元的に官僚幹部の再就職を管理することになったのです。
建前の上では「官民人材交流センター」が認めたところだけにしか再就職できない、ということになっていました。 しかし、「官民人材交流センター」はほとんど機能せず、現在は事実上、停止状態なのです。 つまり、結果的に2007年の公務員再就職改革は「これまでの天下り規制が解除される」だけになってしまったのです。
また「官民人材交流センター」と連動する形で、内閣府に「再就職等監視委員会」というものも設置されていました。 「再就職等監視委員会」というのは、「官民人材交流センター」があっせんした再就職先が妥当なものかどうかをチェックする機関でした。 が、この「再就職等監視委員会」もまったくの役立たずだったのです。 「再就職等監視委員会」というと、官僚の天下り先について利益相反があるような天下りについてはストップをかけるというような役割をイメージされるはずです。
しかし、実際にはそういう仕事はまったく行なっていないのです。 「再就職等監視委員会」は、省庁が「組織的に再就職のあっせんを行なっているようなとき」だけ動くのであり、それ以外のケースでは事実上、まったく動いていないのです。 だからこれまでご紹介した外資系企業に天下りしたケースも完全にスルーしているのです。 さらに野党も含め国会議員からも何の抗議も指摘もされておらず、メディアがこれを報じることもまったくなかったのです。
最高幹部が外資系に天下りするなどということは独立国として一大事であるはずなのに、政治家もマスコミもこれを問題にする気配さえなかったのです。 もしかしたら、彼らは気づくことさえなかったのかもしれません。 この国はシステム的にも完全に終わっているといえます。
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何の牽制にもならない「天下り公表制度」
外資系企業に天下りした岡本薫明氏や山崎達雄氏は、秘密裏に天下りしているわけではありません。 彼らの天下り状況は、誰でも調べようと思えばすぐに調べられるのです。 筆者がなぜ彼らが外資系企業に天下りしたことを知っているのかというと、現在の日本では「公務員の再就職先の公表制度」があるからです。 「公務員の再就職先の公表制度」というのは、各省庁の幹部が退職後に再就職する場合は、退職後2年間の再就職先については公表するという制度です。
だから、各省庁幹部の再就職先はインターネットなどで簡単に知ることができるし、ウィキペディアにも掲載されています。 筆者が恐ろしく感じたのは、岡本薫明氏や山崎達雄氏は外資系企業に再就職することが公表されると知っていながら、平気で天下りしたということです。 岡本薫明氏や山崎達雄氏は、モラルがないだけではなく、国民を完全になめているということです。
自分が外資系企業に天下りしても、国民は気づかないだろうし、文句は出てこないだろうと踏んでいたのです。 いかに財務省キャリア官僚が、やりたい放題のことをしているか、ということです。 「自分たちは何をやっても許される」と思っているのです。
そしてもっと怖いのが「公務員の再就職先の公表制度」が何の役にも立っていないことです。 この公表制度は、官僚幹部たちの天下りを牽制する目的でつくられたものです。 この公表制度があるために、国は「日本の天下りは厳しく規制されている」などとのたまっているのです。 しかし、彼らの外資系への天下りが公表されても、政治家は何も文句は言わず、マスコミはまったく報道しなかったのです。
財務省の最高幹部の外資系への天下りなどというのは、天下りの中でも最悪のものであり、社会を挙げて糾弾せねばならないことです。 にもかかわらず、誰も何も言わないのです。 「公務員の再就職先の公表制度」は何の役にも立っていないと同時に、日本には、もはや官僚を制御するシステムがまったくないということなのです。
現在の官僚幹部の天下り制度とは?
今、日本で行われている官僚幹部の天下り制度を整理しておきましょう。 国が行なっている「天下り規制」は、下の次の4点です。
- 総理大臣への届け出 退官後、2年間は再就職先を総理大臣に届け出る義務。 しかし総理大臣の許可が必要なわけでなく、ただ事後に届け出るだけなので何の効果もない
- 公務員の再就職先の公表制度 退官後、2年間は再就職先が公表される。 しかし公表されるだけであり政治家もマスコミも何も言わないので何の効果もない
- 官民人材交流センターの一元管理 官僚の再就職を官民人材センターが一元管理する制度。 これはほとんど実績がないまま事実上の廃止
- 再就職等監視委員会の監視 官僚幹部の再就職が妥当なものか指摘をする制度。 しかし指摘するのは「省庁の組織的なあっせん行為」などだけであり、官僚一人一人の再就職先の是非については追及していないので、事実上効果なし
このように、この4つの規制は、何の規制にもなっていないのです。 つまり、今の日本の制度では、天下りについて何の規制もないということです。
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