「食料品の消費税率をゼロにすると、富裕層が得をしてしまう」――立憲民主党・野田代表のそんなトンデモ理論が世間に波紋を広げている。元国税調査官で作家の大村大次郎氏も、「どなたか立憲民主党の野田氏に『エンゲル係数』や『世界の間接税の常識』を教えてあげてください」と呆れ顔だ。政権交代の期待をになう今こそ、野田代表は「消費税と財務省の大ウソ」から脱却すべきではないか。それができないようでは、しょせん自民と同じ穴の“ドジョウ”と言われてもしかたない。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:まず生活必需品の消費税率をゼロに!
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野田代表はご存じない?「生活必需品の消費税率をゼロにする」ことのメリット
衆議院選挙が始まりましたね。裏金問題でボロボロの自民党にとって代わる最右翼は今のところ立憲民主党ということになっています。が、筆者は、立憲民主党の消費税に関する考え方には反対せざるを得ません。
立憲民主党の野田党首は消費税について次のようなことを述べています。
「食料品の税率をゼロにしても富裕層の方が恩恵が大きい」
「だから食料品の税率を下げるよりも、低所得者層に給付金を出すべき」
これを聞いて、筆者は非常に落胆しました。「野田さん、あんたはやっぱり経済オンチ、政治オンチなんだなあ」と。
そもそも野田氏は民主党政権時代は首相をつとめ、消費税率を10%に引き上げた張本人なのです。民主党は、政権を取る前まではどちらかというと消費税に反対する立場だったのですが、政権と取った途端に財務省に篭絡され、消費税の増税に舵を切ってしまったのです。
その結果、日本の景気はさらに悪くなり、坂を転がり落ちるように衰退してしまったのです。以前、旧社会党も同様のことを行い、国民の信頼を失って、現在は党がほぼ消滅してしまいました。
野田党首としては、今さら消費税の税率を下げれば、首相だった時に消費税を増税したことを否定する形になります。だから、自分のメンツのためにも消費税を減税するわけにはいかないのでしょう。
筆者としては「あんたのメンツと日本の将来とどっちが大事なんだ?」と言いたいところです。
野田代表はご存じない?日本の消費税は「バカな官僚の勘違い」から始まった
なぜ立憲民主党の消費税政策が、政治オンチなのか、ご説明しますね。もともと日本の消費税というのは、重大な欠陥を抱えているのです。
というのも、日本の消費税は、旧大蔵省(現財務省)の内海孚というキャリア官僚の思いつきでつくられたものなのです。
内海氏はフランスの留学中に買い物をしたときに、フランスではVATという税が課せられていることに気づいたそうです。買い物をするたびに一定の税金が引かれており、レシートにも税金の金額は記されていないので、一般のフランス人は、税の負担をほとんど感じていないようでした。
これを見て「こんないい税金はない!日本にも導入しよう」と思いついたそうです。
フランスのVATは当時、最先端の税制だとも言われており、ヨーロッパ中の国々がこの税金を導入しようとしていました。このVATにも、非常に配慮の行き届いた仕組みがありました。
VATは、あらゆる商品、サービスに包括的に課せられる税金でありながら、生活必需品などの税率は非常に低く、贅沢品には非常に高く設定されていたのです。そういうきめ細かい設定が、VATの新しい部分であり、もっとも重要な部分だったのです。
が、大蔵キャリア官僚の内海氏は、VATの重要な部分は見ずに「あらゆる品目に包括的に課税している」という点だけを抜き取って日本に持ってきたのです。
そのため、日本の消費税は、ダイヤモンドにもトイレットペーパーにも同じ税率という、世界に例を見ない雑な税金になってしまったのです。
世界の多くの国で、消費税のような間接税が導入されており、日本よりも税率が高い国はたくさんあります。が、日本の消費税のように、低所得者や零細事業者にまったく配慮のない間接税というのは、世界的に稀なのです。
消費税には、「貧富の差を拡大する」という性質があります。最大の欠陥はこれです。消費税は、そのシステム上、低所得者ほど「税負担率」が高くなる「逆進税」となっています。
たとえば、年収1億円の人は、1億円を全部消費に回すわけではないので、年収に対する消費税負担割合は低くなります。年収1億円の人が3千万円程度を消費に回した場合、年収に対する消費税の負担割合は3%程度で済むことになります。
が、年収200万円の人は、必然的に年収のほとんどが消費に回ってしまいます。ということは、年収200万円の人は、年収に対する消費税の負担割合は、10%に近くなってしまうのです。
「年収1億円の人の税負担は3%で済むけれど、年収200万円の人には10%に近くなる」それが消費税の実態なのです。