有権者に選挙で選ばれた国会議員を差し置いて、日本全体を実質的に支配する財務省のキャリア官僚たち。省益追求と天下りばかりに熱心な彼らは、ジャニー喜多川氏性加害問題の“黒幕”でもある。公正取引委員会が定める独占禁止法に抵触していた可能性が高いジャニーズ事務所の各種犯罪行為は、なぜ長年に渡って見逃され続けたのか?元国税調査官で作家の大村大次郎氏が、財務省と公取委、メディアの腐敗をあばく。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ジャニーズ問題の背後に財務省
ジャニーズ問題の背後に財務省
2023~2024年の芸能界は、ジャニーズの性加害問題に揺れました。いや、芸能界だけではなく、社会問題といっていいほどこの問題は大きくクローズアップされました。
が、ここにきて(なぜか今さらになって)ジャニーズ問題がクローズアップされることに、違和感を持った人も多いはずです。
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏が、所属の少年たちに性加害をしているというのは、30年以上も前から暴露本が出され、関連の裁判なども行われ、「限りなく黒」という判断が出されていたものです。
にもかかわらず、この情報は一部の週刊誌や書籍が報じるのみであり、新聞、テレビなどで取り上げられることはほとんどありませんでした。
30年以上の長きにわたって、これほどの犯罪が「公然の秘密」とされてきたのです。なぜこのような悪質な犯罪が、長期間にわたって許されてきたのでしょうか?
この事件の背景には、大手メディアの巨大利権や財務省の異常な権力集中問題があり、現代日本の汚点が集約されているともいえるのです。
日本の大手メディアは利権の塊
まず、大手メディアの巨大利権問題からご説明しましょう。
ジャニーズ事務所のタレントは人気があり、テレビに引っ張りだこなので、各テレビ局はジャニーズ事務所を悪く言うような報道はできない、という状態になっていました。
また各テレビ局は、親会社が大手新聞社となっており、大手新聞社もその兼ね合いから、ジャニーズ事務所の問題については触れてこなかったのです。
つまりは、大手新聞社、テレビ局の利害関係によって、これほど大きな社会問題が、30年以上にわたり、黙殺されてきたわけです。
実は日本の大手マスコミは利権の塊でもあります。現在、地上波のテレビ局には、事実上、新規参入ができません。テレビ放送を行うには、総務省の免許が必要ですが、地上波のキー局にこれ以上免許を出すことはないからです。テレビ業界というのは完全な既得権業界なのです。
そして、ご存知のように、大手新聞社は地上波のテレビ局を持っています。実はこれは世界では珍しいことです。新聞社がテレビ局を保有してしまうと、あまりに世論における影響力が強くなってしまうので、新聞社がテレビ局を持つのを禁止している国もあるほどです。
しかし、日本には、そういう規制はなく、まるで当たり前のように大手新聞社は全国に系列のテレビ局網を敷いています。
その結果、
- 「新聞、テレビは同じことしか報じない」
- 「新聞、テレビは双方の利益に縛られて、自由に報道ができない」
- 「政府に都合の悪い情報は、新聞テレビでは流れない」
という状況が生まれているのです。
また新聞業界には、記者クラブというものがあります。
これは官庁などに、報道機関専用室のようなものが設けられ、メンバーだけが独占的に取材を行えるというものになります。この記者クラブは、各官庁、都道府県など800カ所に及ぶのです。
記者クラブに入れるのは、既存の新聞社等に限られます。だから、新聞業界には新規参入がなかなかできないのです。先進国で、メディアにこのような閉鎖的な団体があるのは日本だけです。
新聞業界は、この利権があるために、政府の都合の悪いことはなかなか報じられなくなっています。そして、当然のようにテレビもそれに追随しているのです。
日本は「報道の自由度」の世界ランキングが70位と先進国ではありえないほど低くなっています。
ほかの先進国や韓国などだけではなく、チェコやスロバキアなどの旧共産圏国家、激しい人種差別があった南アフリカなどよりも、報道の自由度が低いとされているのです。
それは日本の大手メディアが、利権でがんじがらめになっているからでもあるのです。
大手メディアたちは巨大利権を守るために、自分たちに都合の悪いことは報道してきませんでした。ジャニー喜多川氏の長期間にわたる性加害が放置されてきたのも、そのためなのです。