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【書評】本当の悪者は誰? スマホ廃人にされる日本の子供たち

国民の7割以上が所有しているというスマートフォン。もはやスマホ無しでの生活など考えられないという方も多いのではないでしょうか。しかしながら、便利なものには弊害があるというのも世の常。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、スマホが人間に与える影響が綴られた1冊です。とてつもなく恐ろしい内容ですが、我々「大人」が目を逸らすことは許されないようです。

スマホ廃人
石川結貴・著 文藝春秋

最近読んだ本の中で、読後感が最悪だったのが石川結貴の優れたレポート『スマホ廃人』であった。筆者が書いているスマホがヒトに及ぼす影響のあれこれがもう最悪で、このまま行ったら何年後かには日本人が社会が確実に崩壊しているのではないかという危惧、いや悲観しかない。

スマホはまさしく本物の「悪魔の発明」ではないか。「電話:悪魔の発明である。不愉快な人物を遠ざけておく便利さを、いささか阻害するもの」とビアス「悪魔の辞典」にあるが、もはやそんな諧謔を楽しんでいる場合ではない。ヒトは便利さとひきかえに、邪悪なスマホの奴隷になることを選択してしまった。

スティーブ・ジョブスは自分の子供にはiPhoneやiPadを使わせなかった、というのは有名な話だ。親としてはアナログを貫き、子供達の利用を厳しく制限すべきだと語っていた。そんな彼にしても、今日のような惨状までを見通してはいなかったのではないか。いま、かけがえのない子供の時間は失われつつある

スマホの急速な普及によって世代や生活環境を問わず多様な現象が起きている。乳幼児にはスマホが『子守り』のように関わり、成長記録やしつけ、遊びまでさまざまなアプリが使われている。高齢者は詐欺的な被害に巻き込まれ、主婦はお小遣い稼ぎにハマって家庭生活を疎かにしてしまう。サラリーマンは位置情報や行動を管理され、勤務時間外でも容易にスマホを手放せない。

もっとも懸念するのがスマホと子供との関係だ。特に中学生や高校生のスマホ利用は大人の想像を超え、あらたな問題を生み出している。たとえば『いじめ』である。ネットいじめ、SNSいじめ、そんな言葉は伝えられてもその実態はなかなか表面化しない。それらの多くは学校での人間関係の延長線上で起きている。同じクラス、部活動、先輩後輩、そんな関係性の中で生じたトラブルがSNSなどを通じて増幅するのだ。時間、場所、方法を問わずいじめがつづく。

わたしはスマホを持たない准高齢者である。還暦を過ぎてケータイを捨ててから、固定電話だけ。ネットがあるのだからそれで十分。妻もわたしもスマホの必要性を感じない。だから、この本でレポートされたスマホの害毒については、初めて知ったことが多かった。娘経由で知っていたこともあったけれど。

スマホで監視されるサラリーマンはお気の毒である。わたしの頃は「直帰」なる使い勝手に優れた用語もあったし、じっさい無能な不良社員もいたが、もうそんなお気楽はできっこない。最も深刻なのが学校関係のいじめだ。その章を読むだけでズーンと気分が落ち込んだ。学校関係者はこの本を読むのを義務とせよ。

子供が見知らぬおとなとつながっていることが、「身近なおとな」にはわからない、というのも怖い。筆者はあとがきの最後をこう結ぶ。「悲観したくないと思いつつ、私は少なからず危惧を抱いている。今ならまだ間に合う、そんな意識の一方で、あらたな現象が次々に生じる今に、あがないきれないような不安もまた覚えてしまう」。杞憂ではない。本当の破滅が来る…。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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