今や日本でも大人気の家電メーカー「ダイソン」。吸引力の変わらない掃除機を筆頭に、ドライヤーや扇風機などさまざまな製品を目にしますよね。しかし、同社の成功の裏には意外すぎる裏話がありました。「現在のビジネスモデルのジレンマ」にも関わるこのエピソード、無料メルマガ『MBA流 大人の学ぶ技術』の著者の若林計志さんが紹介しています。
なぜ弱小会社が生き残ったのか? ダイソンの事例
「吸引力が変わらないパワフルな掃除機」として有名なダイソンですが、その創業者であるジェームス・ダイソンの自伝を改めて読んでいます。
●『逆風野郎 ダイソン成功物語』
ジェームズ・ダイソン 著/日経BP社
この本の冒頭で出てくるのが、
でも、ジェームス。もっといい掃除機があるというなら、フーバーやエレクトロラックスがとっくに作っていたんじゃないか?
という友人のセリフ。まさにその通りだと思いませんか? ダイソンがサイクロン方式でゴミを分離する方式を考えた80年代、掃除機メーカー大手のフーバーやエレクロラックスはゴミパック方式を採用していました。
では、なぜ彼らはサイクロン方式をスルーしたのか?
実はダイソンさんは、自社でアイデアを製品化する前にこれらの大手メーカーやアメリカ大手のブラック&デッカーなどに売り込みに行っているのです。ところが門前払いなど、どこもけんもほろろでかなりひどい扱いを受けているエピソードが書かれています。
理由が「ごみパック方式が儲かっていて、消費者も満足しているのにあえてそれを無くす必要がどこにあるんだ」というもの。
まあ分からなくもない理由ですよね。で、ダイソンさんは大借金しながら、最後には成功するのですが、きっかけは日本でのセールスだったんです(ちなみにインテルの成功のきっかけも日本でした)。
もちろん今では大手もサイクロン式を出していますが、このカテゴリーではダイソンがダントツという感じです(カテゴリーキラーという意味でBOSEみたいな感じですね)。
それにしても、なぜ大手はみすみすチャンスを逃し後手に回ってしまったのか? この辺りは、デジタル化の時代が見えていながらも、フィルムでも大儲けしていたコダックが動けず、ついには破綻してしまったエピソードを彷彿とさせます。下記のコラムでご紹介しています。
まさにイノベーションのジレンマ的な話です。
よくビジネスプランコンテスト的な場で評者のコメントに「大手が真似してきたらどうする?」という質問があります。
たしかに、新しいタイプのサービスが普及してきたのを見計らって、大手がコピー版や廉価版を出して一気に襲いかかってくることはよくあります。UberでもAirBnBでも、ちょっと普及してくると、すぐに大手が真似してくる。
でも、それが必ずしもうまく行くわけではないのが面白いところ(もちろんやられる場合も多いのですが!)。
だって普通に考えたら「メルカリ」なんて、ヤフオクが本気を出したら、すぐに捻り潰せそうなのにそうはならない。そこには「スピード」と「信念」という武器があるから(最近は資金調達もしやすくなっているという事情も)。
もっと大きいのは「捨てなければならないものが大きいと動けない」という理由。今儲かっているビジネスモデルを捨てられないジレンマはよくわかりますよね。
こう考えてみると、もし、なにかアイデアがあるなら、そのうち大手に真似されるからダメだろうとハナっから諦めなくてもチャンスがありそうです。
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