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スマホの発表会で、日本のメディアが海外YouTuberにキレたワケ

8月17日に台湾で開かれた「ASUS新製品発表会」に足を運んだ、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でスマホジャーナリストの石川温さん。そこで見かけたという某国のYoutuberが、記者会見中に大声で実況を始めるという驚きの行動に出たため、日本の一部メディアと一触即発状態になったそうです。これを見た石川さんは「海外メディアと日本のメディアの大きな違い」を感じたそうですが、それは一体どのようなものだったのでしょうか?

ASUS発表会場で、日本メディアと海外Youtuberが一触即発の危機━━スマホの普及で変わりつつあるメディアのカタチ

今回、台湾で開かれたASUS新製品発表会では、プレゼン中、日本メディアと某国のYoutuber同士で一触即発の緊張状態にあった。

日本からは10名ほどのフリーランスなどが出席したのだが、会場の座席で、その前を陣取っていたのが、某国のYoutuberであった。彼らは、座席にいるにもかかわらず、高い三脚を立て、その上にスマホを設置。発表会が始まると、動画配信をしながらイヤホンマイクに向けて実況をするのであった。それが、大きな声で、しかも一人ではなく複数人が一斉に実況をするものだから、結構な騒音となった。

プレゼンを聞きたくても、その実況が耳障りで聞き取れず、スマホが高い位置にあるから、ステージ上を撮影するにも邪魔で仕方ない。

そこで日本メディアの一部が憤慨。後ろから肩を叩いて、口に人差し指を当て「シー」と何度も注意せざるを得なかったのだ。

ここ最近、新製品発表会をスマホで撮影するメディアが増えたのだが、それにしても、動画中継をしながら、実況するというのは初めてみたような気がする。

本来であれば、記者会見は記者とスチルカメラマン、さらにはビデオカメラマンが別々の場所に配置されるというのが一般的だ。しかし、今回はYoutuberとメディアが同じ座席に混在したために衝突が起きてしまった

しかも、この発表会では、ZenfoneシリーズのCMに出演する韓国の有名俳優がゲストとして登壇することもあり、芸能メディアだけでなく、ファンも参加するという、ごちゃ混ぜな発表会で、「参加する人によって目的がバラバラ」という収集のつかない雰囲気となっていた。

主催するメーカーとして、ひとつのイベントをいろんな人に見てもらいたいというのは理解できる。メディアに対しては製品をきっちりと紹介したいだろうし、Youtuberに向けては、普段、スマホに興味のない人にアプローチできるだろう。アジア諸国となれば、ITに関する専門メディアが乏しく、情報を拡散するにはYoutuberが手っ取り早いという理由もあるだろう。

また、俳優のファンに対して製品をアピールすれば「買ってくれるかもしれない」という目論見もある。

日本でも、昔はメディアとブロガーさらにファンを混ぜて記者会見をするPR代理店があったが、最近はそのようなカオスな現場は少なくなったように思う。結局、それらを混ぜてイベントを実施すると、誰も満足しない不満だらけになるというのが周知されてきたように思う。

そうしたことがわかっている企業は、メディア向け、ブロガー向け、ファン向けのイベントを別々に時間を変えて開催するように配慮しているものだ。

ただ、最近、思うのは、海外の場合、動画を使ってレポートをするメディアが本当に増えたということだ。

発表会が終わり、タッチアンドトライ会場に行くと、端末を触りつつ、動画レポートを収録している人を多く見かける。なかにはスマホを使って動画を収録している人もいる。

正直言って、端末を長時間、独占して使われるので、こちらとしては迷惑な存在なのだが、一方で「海外では動画レポートの方が支持されている」のがよくわかる。

海外の場合、特に英語圏であれば、読者というか視聴者の数も多いので、広告もつきやすく、メディアやYoutuberとして生計が立てやすいのだろう。

日本のメディアでも動画レポートを積極的にやっているところもあるが、やはり「日本語」という制約上、どうしても英語の動画と比べて再生回数が稼げず、広告収入を得難い状況にある。

また、日本では通勤時間帯や昼休みにスマホが使われるため、「音を聞く必要のある動画よりもテキストと写真のレポートの方が好まれるということもあるだろう。動画でレポートするには、無音でも理解できるよう、すべてテロップを入れるのが望ましい。だが、そうすると編集に時間とコストがかかってしまい、さらに収益が出しにくい。

スマホの普及により、メディアの取材の仕方も、読者の情報の触れ方も、ここ最近は大きな変化のタイミングに来ているように思う。

目の前のYoutuberはうるさくて邪魔でしかなかったが、一方で、「これからスマホを活用してどのようにメディアとして情報を伝えていけばいいのか」を、ちょっと考えさせられたのだった。

image by: Michal Ludwiczak / Shutterstock

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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