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日野皓正氏のビンタは体罰。では誰がどうするのが正解だったのか

世界的ジャズトランペッターの日野皓正氏による「往復ビンタ騒動」が連日マスコミで報じられています。賛否両論、様々な意見が飛び交っていますが、無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、文部科学省の体罰に関する指針を紹介しながら、今回の件に関してどのように対応すべきだったのかについて考察しています。

懲戒と体罰の違いについて

8月20日に行われた東京都世田谷区教委主催の中学生の体験学習コンサートでルールを守らなかった男子生徒がビンタされたとの報道がなされ、賛否両論、様々な意見がネットを駆け巡りました。

たしかに50年前であれば「たいしたことではない。ルールを守れない生徒が悪い」で済まされ、新聞沙汰にもならない話です。昭和の時代、殴られたり、押し入れにとじこめたられたりするのは家庭の当然の「しつけ」でした。家だけでなく学校でも「しつけ」としてつねられたり、しっぺされたり、定規でたたかれたりしていました。「赤毛のアン」の続編「アンの青春」にも、教師になったアンが鞭をふるう場面がでてきますので、かつては、珍しいことではなかったのでしょう。

しかし、ビンタされるのはいやなものです。叩かれるのは一瞬ですが、痛みを想像しながらビンタが飛んで来るのを待つもいやですし、叩かれた後も「俺は悪くないのに」とか「あいつもなのに」などの思いが浮かんできて気分がめいります。

指導者が「なぜできないんだ。なぜ言うことを聞かないんだ」という気持ちになることもあるだろうとは思います。長らく、日本では「教育」という名のもとに体罰が容認され、教育の現場には警察も介入しないという、治外法権的対応がなされてきました。しかし、「人を殴ったら暴行罪」です。成人でしたら当然、逮捕です。これが日本の法律です。

今回は、教師が行ったわけではありませんが、教育の現場で起きたことです。「体罰」ということについて文科省の指針が出ていますので、保護者としては知っておく必要があると思います。

学校教育法第11条では、

第十一条 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

体罰を禁止しています。

どのような行為が体罰に該当し、どのような行為が懲戒なのかということについて、文科省のホームページに「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」として考え方が例示されています。一部を紹介いたしますと、体罰としては以下のような事例がのっています。

体罰にあてはまらない懲戒としての事例」も掲載されています。

また、このページには正当な行為(通常、正当防衛正当行為と判断されると考えられる行為)として、

などの事例も掲載されています。従って、今回のコンサートにおいては、「生徒を抱きとめて静止させる」という対応が望ましいと言えます。

ちなみに、このような場合、外部の指導者だけが子供たちを指導していたわけではないはずです。当然、教育委員会の先生や、外部の指導者をサポートする教師も舞台の隅にはいたと考えられます。本来はサポートする教師が対応すべきことで、そこまでの配慮が足りなかったことを残念に思います。

全体をコントロールする運営責任者を置いて、プログラムや時間配分を管理するのは当然ですし、もしもルールを逸脱した生徒が出た場合には、制止する役割の教師を配置するなどして、催しを成功に導くための準備や配慮が必要です。その意味では、運営側の自覚が不足していたと感じます。

以上述べてまいりましたが、いじめと体罰は別のものにも見えますが、いじめ相談の中には教師によるいじめの相談もあります。私たち保護者も、今の教育の中で、どこまでが「懲戒」として認められているかということも確認しておきたいと思います。

新学期を迎え、様々な不安を感じることがあろうかと思います。気になることがありましたら、早めにご相談いただけますよう、よろしくお願いいたします。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

image by: Shutterstock.com

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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