MAG2 NEWS MENU

まず名前がダメ。「日本ファーストの会」が今すぐやるべきこと

小池都知事の国政進出への布石とも噂される政党団体「日本ファーストの会」ですが、その名称や若狭代表の姿勢などについて批判の声も聞かれます。はたして有権者は国政選挙において、彼らにどのような判断を下すのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係研究者の北野幸伯さんは、「名称を変えて安倍総理のネガティブな部分を改善させる政策を打ち出せば、善戦することも可能」とし、その方法について専門家の目線で考察しています。

日本ファーストが善戦する方法

最近北朝鮮のことばかり書いていますが…。たくさんの読者さんから、「日本ファーストの会」に関する質問が届いています。

私は、小池さんが2016年7月、都知事選で勝利したとき、本当に「すごいな~」と思いました。自民党に反旗を翻して出馬し、勝利するとは…。小池さんは、勇気も決断力もある時流と大衆の心を読む力がある

さて、小池さんは2016年9月、「都民ファーストの会」をつくりました。2017年7月に実施された都議会選挙で、都民ファーストは、55議席を獲得。自民党を蹴落として第1党になります。

同月、小池さんは、「国政進出」を見据えて、「日本ファーストの会」を設立。代表には、自民党を離党した若狭勝衆院議員が就任しました。

日本の政治状況

日本政治の現状を見てみましょう。まず、安倍内閣の支持率が、森友・加計問題などで下がった。一時は「20%台に突入した」と言われましたが、最近は、少し上がっているようです。民進党は、前原さんが代表になりましたが、離党者が続々出て、ボロボロになっている。

こう考えると、与党も野党も弱い状況。一人小池さんがだけが元気ということで、やり方次第では、日本ファーストが、「野党第1党」になることもあり得るのではないでしょうか?

日本ファースト最大の欠点

しかし、日本ファーストには、問題もあります。最大の欠点は、「名称」です(「日本ファースト」は、現状「政治団体名」ですが、「政党名」ではありません)。

日本ファースト」という名から真っ先に連想されるのは、トランプ大統領のアメリカ・ファースト」でしょう。世界から見ると、「日本ファースト」という名は、「小池さんは、トランプの弟子なのかな?」と思われます。最低でも、「小池さんは、トランプの大ファンで、こういう名前をつけたのだな」と。

北朝鮮問題でがんばってくれているトランプさん。日本にとっては、現状悪くない大統領だと思います。しかし、世界的にはあまり評判が良くない。特に「パリ協定離脱宣言」で、国際的に孤立しました。ですから、「トランプの弟子」「トランプの大ファン」と思われることは、小池さんにとってよくないことでしょう。

それに「日本ファースト」というのは、それ自体あまりいい印象ではありません。皆さん、ある会社が、「わが社のスローガンは、『わが社ファースト』です。わが社の利益を最優先に考えます!」と宣言したらどうでしょうか? そんな会社から買いたい人はいないでしょう。

「都民ファーストなのだから、国政にいったら『国民ファースト』でしょう」という意見もあるそうです。私は、「日本ファースト」よりも「国民ファースト」の方が、マシだろうと思います。マシですが、「メチャクチャいい名前」とは思いません。

これ、会社でいえば、従業員の幸せを最優先で考える「従業員第1主義と同じでしょう。確かに、従業員にとって、経営者がこういう哲学をもっていることは幸せです。しかし、お客さんにとっては、正直どうでもいいことですね。もちろん、ブラック企業よりも、従業員第1主義の方がマシです。ですが、お客さんとしては、「顧客第1主義であってほしい」ということでしょう。

「では、どういう政党名がいいのだ?」と聞かれると困ってしまいますが…。たとえば、「和の党」というのは、どうでしょうか?「和」という言葉は、保守の心をとらえます。リベラルの人たちには、「和というのは、英語でピース(平和)とかハーモニー(調和)です。和の党は、平和を守ります。行きすぎた新自由主義で生じた貧富の差、地方格差を解消し、調和を取り戻します!」などと言います。ま、今書きながら思いついただけですので…。小池さんは、最適な政党名を考え出すことでしょう。

安倍総理の、これは認めた方がいい

私は、安倍内閣の支持率が20%台に突入したとき、総理を擁護する記事を書きました。「大バッシング」を覚悟し、「嫌われる勇気」を読み返して書いた。しかし、蓋を開けてみれば、「いいね!がなんと1万。ダイヤモンドオンラインの編集者さんによると、55万人が読んだそうです。

なぜ私が安倍総理を擁護したかというと、「外交」「安全保障分野がすばらしいから。安倍総理は、オバマ大統領(当時)に逆らって、ロシアとの和解を決意した。それで、日ロ関係は劇的に良くなった。普通こういう「自立外交」をすると、田中角栄さんとか、小沢一郎さんのように、アメリカに潰されます(彼らは、中国と仲良くし過ぎた)。

しかし、安倍総理は、オバマに逆らってプーチンと和解し、なおかつオバマと最後まで仲が良かった。そして、トランプさんとも仲がいい。そればかりでなく、インド、東南アジア諸国、欧州諸国などとの関係もどんどん良くなっている。結果、国際世論を味方につけ中国が動けない状況をつくり出している。そして、中国との関係も、最悪だった野田さんの時代と比べると、ずいぶん穏やかになっている。こういうことができる総理は、日本にはいませんでした。だから、私は、安倍総理の続投を願っています。

この明らかな実績を無視する野党は、「小さい」「細かい」「なんでも批判」「口だけ」といった悪い印象を与え、影響力がどんどん下がっていきます。ですから、小池さんも、「総理の外交はすばらしい!と認めるべきです。戦いは、そこから始まります。

自民党に迫れる政策とは?

その上で、安倍総理に不満をもっている層を吸収できる政策を打ち出す必要があります。

一つ目は、「消費税引き上げ中止」。皆さんご存知のように、日本は景気が良くなっています。有効求人倍率は、バブル期を超えている。しかし、このまま続くのでしょうか?

第1の危機が2019年に訪れます。この年の10月、消費税が10%まで引き上げられる。これで、消費は確実に落ち込み、景気は悪くなります。第2の危機が、2020年に訪れる。この年、7月から8月にかけて「東京オリンピック・パラリンピック」が開催される。これで、現在起こっている「オリンピック・ミニバブル」が終わります。

「オリンピックミニバブル崩壊」は、どうしようもありません。しかし、消費税引き上げを止めることはできる。ところが、安倍総理は、「19年10月に消費税を引き上げる!と断言している。ですから小池さんが、「私は消費税引き上げに断固反対です!」と宣言すれば、多くの人を引きつけることができるでしょう。

二つ目は、「外国人3K労働者大量受け入れ反対」です。オリンピックに向け、人手が不足しているのはわかります。しかし、長期的に、「外国人3K労働者の受け入れ」は減らすべきです。

皆さんご存知のように、欧米ではテロが毎週のように起きている。ISテロといいますが、自分の境遇に不満を持つ移民2世3世がISに入ってテロを起こすケースが多いのです。

日本は、幸いISの本拠地であるシリアやイラクから離れている。しかし、毎年毎年「反日教育を受けて育った」中国人をどんどん受け入れています。これは、将来、大問題になるでしょう。

欧米で失敗した移民政策を真似するのは、愚かです。「外国人3K労働者大量受け入れ反対」これ、保守層は大賛成でしょう。リベラルの人たちには、こう説明します。「いま、外国からこられて日本で仕事をされている方。大部分は、いわゆる3K労働に従事しておられます。皆さんご存知と思いますが『3K労働』というのは、日本人がやりたがらない仕事です。『日本人がやりたがらない仕事は外国人にやらせればいい』というのは、明らかに『差別』ですね。皆さん、『差別』に反対でしょう????」。これ、本当にそうでしょう?

三つ目は、「残業【代】ゼロではなく、残業ゼロを目指します」。「自民党は、残業【代】ゼロを目指していますが、私は、残業ゼロを目指します」。これは、本当に多くの人に支持されるはずです。日本の労働環境は、おそらく先進国中最悪。マルクスが嘆いていた19世紀とあまり変わっていません。過酷な労働環境のせいで、

というわけで、「長時間労働」は、日本の諸悪の根源です。「残業代ゼロ」とか、ありえません。日本が世界で尊敬される国になるためには、「日本国=ブラック企業国」というイメージを払拭する努力が必要です。

日本の政党が取り組むべき課題とは?

ケインズとマルクスが影響力を失い、「新自由主義」が生き残りました。その結果、世界は、「8人の大富豪の資産と、貧しい36億人の資産が同じ」(オックスファムの最新レポートによる)という極めていびつな構造になってしまった。

これからの人類の課題は、「格差をスマートに縮めていくこと」です。どうやって? 長くなるのでここでは詳述しません。しかし、「消費税引き上げを阻止する」というのもその一環(消費税は、金持ちも貧しい人も同じ税率。結果的に、貧しい人の負担が大きくなる)。

他にも、「残業をなくす」というのもその一環。小池さんには、安倍内閣のネガティブ面を解消することで、日本国に貢献していただきたいと思います。

 

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け