接客マニュアルと聞くと「型にはまってそう」「実際は役に立たない」などと思ってしまいがち。しかし、今回の無料メルマガ『飲食店経営塾』の著者で若手飲食店コンサルタントとして活躍中の中西敏弘さんが紹介する「サービスストーリー」はひと味違います。スタッフに会社の理念やクレドを浸透させ、接客サービスの質も向上させるサービスストーリーとは一体どのようなものなのか、詳しく解説してくれました。
「接客マニュアル」ではなく、「サービスストーリー」を作ろう!
接客マニュアルと言えば、「いらっしゃいませ」から始まり、事細かに、「何を言うのか?」「どうするのか?」を記載したもののイメージがありませんか?
「マニュアル」と言えば、このようなマニュアルをイメージするため、「マニュアル? なんか、機械的だし、何から何まで縛られるようでいやだなあ」とマイナスなイメージをする人が多いように思っています。また、今の時代の飲食店の接客には「不釣りあい」と僕自身も考えています。
ただ、店の理念やクレドを実現するためには、個々人が自分の思うがままに接客を行っては統一感もなく、また、場合によっては、コンセプトとズレ、顧客離れを起こして売上低下を招きかねません。
そこで、今回は、僕のご支援先で作ってもらっている、接客マニュアルではなく「サービスストーリー」(出迎えからお見送りまで、お客様をおもてなししていくのかをまとめたもの)をご紹介します。
サービスストーリーは、これまでのマニュアルのように、事細かく「やるべきこと」「言うべきこと」を記載するのではなく、
- あるべき状態、
- 目的、
- 誰が、
- いつ、
という項目内容とあとは、接客する際の「コツ」だけを記載します。
特に、大切なのは、「あるべき状態」。各接点でお客様にどのように感じてもらいたいかを「あるべき状態」という言葉で表現します。この「あるべき状態」のようにお客様に感じていただくために、どう接客すればよいのかのポイントにまとめ、このポイントを各スタッフに考えてもらうのです。
「あるべき状態」を作る目的は2つ。
一つは、「あるべき状態」をお客様に感じて欲しい状態として表現することで、常に自分たち都合の接客ではなく、「お客様視点(目線)の接客」ができるようにすることです。店で仕事をしていると、ついつい「自分たち都合」になることが多くなるものです。
しかし、店の営業で最も大切なのは、「お客様にどう感じてもらうか」ということ。これが最も大切なことで、そのために「クレド」があるわけで、その実現をはかるためにも各接点の「あるべき姿」を設定することがとても重要となるのです。
そして、この「あるべき姿」の表現は、例えば、「感じがいいなあ」「長くこの店で楽しみたいなあ」というようにお客様の気持ちをそのまま「口語表現」すると、より分かりやすいでしょう。
二つ目は、店長やスタッフ自身が「考えて接客をできるようにする」ためです。マニュアルに事細かく記載事項があると、それを「こなす」傾向が強くなりますし、また、教える人もそれを「やらせよう」とさせてしまいます。これだと、「今の」お客様を喜ばせることはなかなか難しいですし、スタッフも「やらされ感」が強くなります。
そこで、「考える」を強制するために、あるべき状態や目的などだけは、予めお店側が設定し、あとはどうおもてなしすればよいかを最初から(つまり、新人の時から)考えさせるようにすることが、このマニュアルの目的であり、「あるべき状態」をつくる目的なのです。
ですから、この「あるべき状態」から各スタッフが自ら考えられるよう、「あるべき姿」を皆がイメージできる表現にすることも大切なことです(ですから、口語表現にすると皆がイメージしやすくなります)。
ちなみに、このマニュアルは、店のスタッフに作ってもらうようにしています。自分たちのお店のマニュアルを自分たちで作ったほうが、マニュアルは活用されますからね。
マニュアルを作ることで、理念やクレドを浸透させようとしているのですが、特に各接点の「あるべき状態」を時間を掛けて話し合いながら作っています。各接点の「あるべき状態」は、お店の理念やクレドを実現するものでなければなりません。
この「あるべき状態」、つまり、各接点でどのようにお客様に感じて欲しいかを店長やスタッフと議論することで、理念やクレドの浸透を図るようにしているのです。
このようにして出来上がったマニュアルは、普段のミーティングでも活用できます。例えば、「『お出迎え』は今我々が定めた『あるべき状態』になっているか?」と自分たちで自分たち自身の接客を振り返ることもできます。
特に、ロープレを行う時に、ただ皆で個人的な意見を言い合うのではなく、「あるべき状態に対して、今の接客はどうか?」を話し合うことができ、より効果的なロープレ、ミーティングにもなるでしょう。
このような話し合いが定期的にできれば、理念やクレドに触れる機会が増え、自然と理念やクレドが浸透するようになります。
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