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【書評】カギは江戸時代。中韓が未だ日本に追いつけぬ根本的理由

「日本はいち早く近代化に成功したのに、なぜ中韓両国はいまだに近代化できないのか」という疑問を持った中国出身の評論家・石平氏が気づいてしまった「衝撃の事実」とは──!? 今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介している1冊には、日本人の我々も目からウロコの説が記されていました。

明治維新から見えた 日本の奇跡、中韓の悲劇
加瀬英明、石平・著 ビジネス社

加瀬英明・石平『明治維新から見えた日本の奇跡、中韓の悲劇』を読んだ。石平が加瀬英明に対談を希望したのは、彼自身の問題意識によるものだった。中国の民主化運動に頓挫し、1988年に来日した彼が、近代史を含めた日本の歴史を勉強してきたなかで生まれた重大な疑問があった。

それは「中国は近代化に失敗して一人前の近代文明国家になり損なったのに、どうしてアジアの中で日本だけいち早く近代化に成功して、現在のような素晴らしい近代文明国家に変身できたか」ということであった。

そこで、西洋と東洋の双方に対して深い洞察を行ってきた博識の先学に問題意識をぶつけて、その謎を徹底的に解明していこうと思ったのだ。ところが、話が進んでいくうち、彼は非常に衝撃的なことに気づいてしまう。それは、自身の問題意識と提起が、そもそも前提から間違っていたのではないかということだった。

彼の問題意識の前提における「近代以前の日本、つまり明治以前の日本は近代文明国家ではなかった」という歴史認識自体が、むしろ歴史の真実を見誤った一種の俗論ではなかったのか、という気づきである。対談しながらの軌道修正はスリリングだったと思う。鈍感読者のわたしは、全然気がつかなかったが。

日本は何も近代になってから近代文明国家に「変身」したわけではない。それ以前において、日本はすでに近代という時代を先取りした立派な文明国家だったのである。だから、アジアの中で日本が率先して「近代化」したことの理由も実に簡単だ。日本は最初から、別の意味での近代国家だったということなのだ。

ということが、あとがきで明かされていた。うおー、スッキリしたぞ。

江戸時代は世界の先端にいた。それにもかかわらず、日本人の多くは江戸時代というと、封建制度のもとにあった暗い時代だという先入観にとらわれている。「明治維新」によって「文明開化」がもたらされた、と。わたしもそうだ。だって、そう教わってきたし、中学社会の教師になったらそう教えて来ただろう(ならなくてよかった)。

この偏見は薩長勢力の明治政府が作ったものだ。新しい御代を宣伝するために、徳川時代を暗かった時代として否定した。「それに加えて、その後、マルクス思想にかぶれた知識人や学者が、封建時代を暗黒の時代として、マルキシズムの型紙に合わせて歴史を乱暴に裁断してしまった」と加瀬が説明する。

72年前に、朝日新聞と狂気に取り憑かれた軍人たちが、日本精神さえあれば「神州不滅」だと叫んで「一億総特攻」をあおりました。護憲派は「平和憲法」さえあれば、日本は不滅だと説いているけれど、72年前に「一億玉砕」の道を突き進んでいた、恐ろしい亡霊が全国をさまよっているとしか思えません。祈りや精神力だけでは、日本を守れないのです。

まさしくその通りですね。

この対談では、知られざる江戸時代のすごさ、素晴らしさが次々と展開されて非常に興味深い。世界一の繁栄と清潔さを誇った江戸。今日の日本文化の形は江戸時代につくられた。西洋がルネッサンス以来目指した新たな社会の到達点が江戸時代にあったのかもしれない。江戸時代があって本当によかった。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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