国内のみならず海外にも進出、絶大な人気を誇っている100円ショップの「ダイソー」。今回の無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者・土井英司さんが紹介されているのは、その創業者の評伝です。4,000億円企業の成功の秘訣とは?
『百円の男 ダイソー矢野博丈』
大下英治・著 さくら舎
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、年商4,200億円(2017年3月現在)、店舗数約4,950、「100円ショップ」で最大級を誇る「ダイソー」創業者の評伝です。
没落した家に育ち、紆余曲折を経て100円ショップを成功させた創業者、矢野博丈とはどんな人物なのか? なぜ成功したのか? 本書はその秘密に迫る、興味深い一冊です。
意外だったのは、矢野博丈氏がとてもネガティブな言葉を好む人物だということ。
「プロローグ」によると、矢野氏が好きな言葉は、「恵まれない幸せ」、「しかたがない」、「分相応」、「自己否定」など。前向き思考の自己啓発家がいたら、間違いなく怒られそうな話ですが、これが矢野氏が謙虚さを保ってきた秘訣かもしれません。
本書には、氏の半生と、氏が薫陶を受けた実業界の大物たち(イトーヨーカ堂会長伊藤雅俊、元ユニー会長家田美智雄、セブンーイレブン名誉顧問鈴木敏文、イオン社長岡田卓也)の話が載っており、興味深く読むことができます。
商売の原理原則とは何か、考えさせられるきっかけとなりました。
さっそく、ポイントを見て行きましょう。
矢野は、没落した家に育った。そのため、絶えず将来の不安について考える癖がついてしまった。商売でも、先の怖さばかりを読む
「恵まれている立場よりも、実際には、恵まれない立場にいる方が、その状況から頑張れるからいいんです。自分が恵まれた瞬間に力がどんどん落ちていくと思っていますから。自分は、大した人間ではないのに、こんなに偉い人にしてくれて申し訳ない。ありがたいというのを超えて、申しわけないと思っています」
「やはり、いかに魅力的な商品を並べるか。100円で、100円のものしか買えなかったら、お客さんは興味を持ちません。100円で、これだけのものが買えるのか、と思ってもらわないとダメなんです」
父親に怒鳴られた幼少期の矢野は、父親のように医者になろうなんて、まったく思いもしなかった。<医者みたいな貧乏なものになるもんか>
<家は、貧乏だ。学生なら、お金をかけずに結婚式ができる>
矢野は、学生結婚を機に、「栗原」という苗字を捨てた。
<将来、ワシは商売で生きていく>
そこで、思案した。商売をするには、屋号が大事だ。クリハラ商店、クリハラ物産、クリハラ商事。四文字は、長すぎる。いっぽう、妻の苗字は、「矢野」だ。ヤノ商事、ヤノ物産、ヤノ商店。二文字の方が言いやすいし、親しまれやすい
ふすまで仕切られただけの安い粗末な部屋に、家族三人で入った。長男の寿一は、素直な気持ちを言葉にした。「ここに、泊まるん……?」
おどおどしている寿一の目を見て、妻の勝代がはしゃぐようにいった。
「わー、寿一、今日、ここに泊まるんよ。いい部屋じゃねえ。よかったねえ。嬉しいねえ。これから、東京へ行って、三人で生活するんよ。がんばろうね」
包み込むような笑顔に、寿一もほっとしたようだった。そのふたりの姿を見て、矢野自身が、誰よりも高ぶっていた心を落ち着かせることができた。矢野は、妻を見直した。<こいつ、すごいのォ>
<自分の儲けを考えていたら、商売なんてできん。ワシは、客が驚く姿が見たかったんじャ。客が喜んでくれればそれでええ。その分、ワシは売って売って儲けを出すんじャ>
「夜逃げしやすい会社がいい会社」(家田美智雄)
<今日の否定。それができることが鈴木会長のすごいところだ>
ビジネスパーソンが勉強のために読むには、ちょっと教訓部分の抜き出しがしづらい本で、どちらかというとノンフィクションとして読んだ方がいいかもしれません。
4,000億円企業がいかにして伸びてきたかを学ぶことは、起業家にとって良い参考になると思います。ぜひチェックしてみてください。
image by: ThamKC / Shutterstock.com