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お金で見る安保法案ー日本の生活は軍拡不況で破綻する

これまで「違憲か合憲か」で語られることが多かった安保法案ですが、「お金」というまったく新しい視点でこの法案を論じるのは『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さん。「軍事費の増大に伴う軍拡不況が日本を直撃し、私たちの生活の疲弊に拍車がかかる」と大胆に予想しています。

お金で見る安保法案ー国民の生活は軍拡不況で破綻する

今週は、多くのご質問を頂戴し、世界中でトップニュースとなった日本の安保法案につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

BBCは、日本の安全保障関連法成立を速報し、「第2次大戦以降初めて海外での戦闘行為を認める、歴史的な動き」と報じ、同じく英国のガーディアンは「中国の南シナ海の軍備増強を抑止しようとするため、米国は歓迎するだろう」と報道しました。

違憲合憲か、そして手続きなどの不備までもが取り上げられていますが、本メールマガジンでは、一度イデオロギーをさておき、お金の面からお話ししたいと思います。

安保法案がまとめて国会を通りましたので、日本の防衛費は特別会計の名のもとに著しく跳ね上がることが予測されます。この法案のほとんどは、主には中国包囲網の一翼を担うことと米軍遠征の補助的役割ですので、中国の軍事費の拡張と米軍事費縮小と共に、日本の防衛費=軍備費上げていかねば意味がありません

2000年以降、中国の実質軍事費は10倍以上になっており、日本もすでに史上最高の5兆円を超えた軍事費を投入しておりますが、米軍事費縮小とあわせて考えますと、この金額ではまったく足りないことになります。

中国はもう成長しない、崩壊が近いと考えるのは簡単ですが、どのような状況になろうとも、軍事費が縮小するような気配はまったく見えず(実は中国は毎回低く軍事費を公表しています)、日本も「平和」を念頭に均衡を保つためには、今後10年で10兆円を超える軍事費を投入せざるを得なくなるでしょう(2~3割程度は、計上先を変えると思われます)。すでに安倍政権は昨年から5年の間に、米国から24.7兆円の兵器購入および多額のローン購入を確約しました。

現在の日本の税収や財務状況を考えると、この拡大する軍事費は想像以上の重荷になるのは言うまでもありません。少し極端に聞こえるかもしれませんが、いまある国民生活レベルを大きく落とし(例えばiPhoneをやめて、プリペイドガラケーにする等)、さらなる増税と社会保障費を徹底的に削減して、「平和」のために軍事費にまわすことになりますし、一方、軍事ベンチャーも増えることでしょう。今年から日本では、軍学共同研究もはじまりました。その目的は「平和のため」です。

その結果、ファストフードからファストファッションであっても国内ではコンシューマー産業が立ち行かなくなり、リテールの大型倒産も目立つようになるでしょうし、やめられない軍拡不況に陥る可能性がとても高くあります。

いまはまだお金持ちの日本人が、自らの生活を犠牲にし、平和の一翼を担うことは米国ならずとも、台湾やフィリピンをはじめとするアジアの国々や、軍事産業の輸出に期待できるドイツなどからも喜びの声が聞こえるはずです。

ちなみに、すでに軍事費が日本の5倍ある中国ですが、国際プロパガンダ等の情報戦にかけているコストは、少なく見ても日本の50倍以上ありますが、日本では不思議なことに、こちらはまったく増える見込みがありません。

ですので、安倍政権および安保法案の目論見は「軍事ハードウエアを米国から購入すること」であるのは明らかです。そして、もう来月設立される「武器調達庁」により、日本の旧財閥や商社から軍事ハードウエアを大量購入することもよく理解でき、土建に変わる日本の公共事業としての軍拡になるでしょう。

このようなことから、米国共和党旧主流派や軍産複合体、日本の経団連からの賛美は受けるでしょうが、現政権の米国民主党が言う「アジア・ピボット」とは明らかに考え方が異なります。

ですので、米国の軍縮を補う点では評価は受けますが、軍備以外の点で日本は中国の軍門にくだらざるを得ない出来事が起きると思われます。そうしなければ、米国民主党と対立が避けられませんし、日本のあらゆるリテールの破綻が近づき、生活の疲弊に拍車がかかるでしょう。

日本の未来は、米国共和党の地域をみればわかります。ニューヨークやカリフォルニアではありません。米国中西部で、極端な例をあげればデトロイトとなります。

この「生活と平和」の天秤に、日本人がいつまでも耐えられるのでしょうか? それが、今後の日本人の大きな焦点となるでしょう。

この一見、解決策がないような現状は、どこかで「平和を放棄するか?」「いったい平和とはなんだ?」という議論を経てから、あたらしい考え方が生まれるまで待たねばなりません。

それには、もう少し時を必要とします。それまで日本の南の島々では巨大な基地が建造され、北に住む人々の生活は破綻に向かうでしょう。

21世紀は、まだはじまったばかりです。

image by: Shutterstock

 

高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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