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天皇陛下の生前譲位を前に、今一度振り返りたい昭和と平成の大事件

天皇陛下の譲位と皇太子さまの即位に伴う新元号の施行時期について、「2019年4月1日」と報じられました。これを受け、無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』の著者・嶌さんは、昭和・平成時代を重要事件とともに振り返り、世界における日本の立ち位置についても分析しています。

平成から次の時代は?

再来年、「平成時代が終わる。西暦で見ると1989年1月に平成元年がスタートしているから約30年間続いたこととなる。明治元(1868)年から150年目でもある。

平成の前の昭和時代は、戦前戦中戦後と明確に区別でき、それぞれに大きな特色があった。どの時期に生まれ育ったかによって人々の昭和への思いも違っているだろう。ちなみに私は昭和17(1942)年生まれの戦中っ子だが、物心ついてからの昭和を思い出すのは敗戦後の廃墟の風景だ。当時の日本人はみんな貧乏だったが、開放された気分にあふれ、もう一度国づくりをスタートさせるんだ、という目標、夢があり、戦争には負けたものの多くの人々は将来に希望をもっていたのではないかと思う。

激動の昭和が終わって「平らかに成る」平成時代を展望したのだろうが、平成元年・1989年は激動の年だった。6月に中国で第二次天安門事件が起きたのが事の始まりで、天安門事件は鎮圧されたものの、その民衆のエネルギーは世界に波及。

秋には東欧の民主化が始まり、東西を隔てていたベルリンの壁が壊される。東ドイツ、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーとソ連の統治下にあった東欧の社会主義国は次々と自由化、民主化へとなびいていった。

本家のソ連も89年末に社会主義体制が崩壊、12月にはブッシュ米大統領とゴルバチョフ・ソ連書記長が会談し第二次大戦後の冷戦時代が終結した。

日本は冷戦終結に直接的な影響は、すぐには受けなかったが、60年代から繁栄を誇ってきた高度成長が終焉し、90(平成2)年を最後にバブル経済が崩壊し「失われた10年」「20年」という長い不況のトンネルに入ってゆく。

91(平成3)年以降の世界と日本は決して「平らかな世の中にはならなかった。91年になると国際社会では湾岸戦争が始まり、アメリカの率いる多国籍軍と中東支配を目論んだイラクが戦争をはじめ、イラクのフセイン政権が崩壊する。

また、この年に旧ソ連邦も崩壊し、ウズベキスタン、カザフスタンなどの構成国が続々と独立し独立国家共同体(CIS)を形成する。旧ソ連の社会主義国連邦は、次々と領土を失い、かつて米ソ2大強国の時代も終わりを告げるのだ。現在のプーチン大統領は旧ソ連帝国の復活を夢見ているのか、ウクライナに侵攻したり、バルト3国を脅かしたりしている。

一方、日本は湾岸戦争に影響され、国連平和維持活動に協力する法律を成立させ、92年には自衛隊をカンボジアに派遣した。第二次大戦の敗戦で日本は軍備を持たないことを内外に表明していたが、再び自衛隊を海外へ派遣する国へと変貌していったのである。

93年になると自民党の一党支配の時代が終わり、8月に野党が糾合して細川護煕氏が連立内閣を組閣、自民党支配に一旦幕を下ろした。

また衆院議長には社会党の土井たか子氏が就任。1955年以来の自民党支配、55年体制に幕を閉じた。これもある意味で米ソ冷戦体制崩壊の影響とみることができよう。その後94年には新生党の羽田孜内閣社会党の村山富市内閣まで誕生する。自民党はその後、橋本龍太郎内閣で政権に復帰、公明党と組んで以後、一時民主党に奪い返されたが民主党政権の失敗などもあり、政権を維持し続けている。

社会的には、新興宗教のオウム真理教による地下鉄サリン事件(95年)、阪神大震災(95年)、北海道拓殖銀行山一證券の破綻(97年)などが相次ぎ、80年代までの「輝ける日本のイメージはどんどん落ち込んでいった

2000年代に入るとテロの時代になってきた。2001年9月11日ニューヨークの世界貿易センタービルアメリカ国防総省にテロリストが操縦する航空機が突入。日本人を含め死傷者が数千人に及ぶ大惨事を引き起こした。

以後、アメリカのみならずヨーロッパやロシア、中東、アジアでも次々とテロが頻発、21世紀は戦争からテロの時代へと移っていく。テロは国家対国家の戦争と違い小集団の狂信的人物が単独や数人で事を起こし、その背後にイスラムテロ組織がバックアップしているのでいまだに止むことがない。

日本では一度病で倒れた安倍晋三氏が2012年に首相に復帰し、内閣が中枢官僚の人事権を握るなどの統治システムを作り上げ、すでに5年の「一強体制」が続いている。安倍政権はアベノミクスの経済政策を掲げ、超金融緩和、マイナス金利、公共事業政策などで57ヵ月の成長を続ける策を打っているが、成長率は0%台~2%台と低く、国民に成長の実感はなく、むしろ実質賃金は下降気味で好況の実感はない

かつての日本は60年代~80年代まで高度成長が続き、日本製品が世界を席巻し、日本の存在感は経済大国としていやがうえにも高まった。しかし、今や日本発の新しい発明や製品開発はほとんどなく世界における日本の存在感は人口減少も重なって、どんどん小さくなっている。今後、日本はどこへ向かうのか。

平成は「内平らかに外成る」(史記 五帝本紀)に由来し、国の内外も天地にも平和が達成されるという意味とされる。

はたして平成は「平らかなる」平和の時代だったのだろうか。2016年8月天皇陛下は高齢や手術で体力が低下し「これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じている」として生前退位を示唆し、以来天皇退位後の準備が行なわれている。

天皇陛下は敗戦や災害の傷跡を癒すため、全国津々浦々、太平洋諸島の戦地などをまわられて体力の続く限り、祈念してきた姿を国民に見せてきた。ただ国内の平和生活の豊かさ国際社会の地位の低下は隠し難い。平成の後にどんな元号がつけられ、日本が再び夢や元気になるきっかけをつけられることになるのだろうか。再来年は大きな変化の年になるかもしれない。

(Japan In-depth 2017年11月27日)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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